第28話 ランチ休憩

浪曼はすぐに目を覚ました。

体が不思議なほどスッキリしている。


「おー起きたか浪曼。ここの泉は聖水って呼ばれてて、疲労回復に効果あるんだぜ」


「ごっ、ごめん迷惑かけて!確かに全く疲れてないっ……」


先程の疲労が嘘のように消えていた。

しかし自分以外のメンバーはきっと、聖水がなくとも余裕なのだろう。

来た時と変わらない涼しい顔をして食べたり飲んだりしている。

元気になった浪曼も、皆に勧められるがままスナックを口に運んだ。


「このクラッカー美味しいですね!このペーストがとてもよく合います」


「そうじゃろう!これはイライザ特製、ホビット村特産物の桃ペーストなんじゃ」


「浪曼さん!これもどうぞ!砂漠のサボテンの実です!それからサボテンジャーキー!」


「えっ、さっ、サボテン?!」


サボテンの果実は、ドラゴンフルーツという呼び名で地球でもたまに食べられていた。

しかしサボテン本体は未経験。

まぁメキシコとかでサボテンステーキが人気とも聞いたことがあるけど抵抗あるなぁ……

などと考えながら一口噛んだ。


「かっ……かかか辛ぁあ〜っ!!」


「あれ、言ってなかったか浪曼?

砂漠族の連中は、舌がぶっ壊れてるくらいスパイス好きなんだぜ」


聞いてないよ〜っ!それ先に行って!!

こんなに辛いもの生まれて初めてだ!!


「いやいやパヴェルさん、我々の舌と鼻はむしろ繊細なんすよ!だからたくさんのスパイスを仕分けて売ることができるんす!」


確かに以前砂漠エリアに行った際、どこもかしこもいろいろなスパイスが大量に売られていた。


「じゃー浪曼!これで口直ししろよ!俺の一番好きなチョコレート店のホワイトチョコだぜ☆」


浪曼がごくごくと水を飲んでいると、目の前に美しいホワイトチョコを出された。


「んんっ……あ、甘い……」


さすが甘党のアルトゥル。

チョコレートの中でも相当甘い部類のホワイトチョコのチョイスとは……

しかしこれで味覚は正常に戻った。



「良かったらウチの手作り弁当もあるけど?」


「お弁当っ?!」


そう言ってドミニカが大きな弁当箱を出したため、浪曼は目を輝かせる。


「浪曼なんで突然弁当にはそんな食いつくんだよ」


「だってお弁当なんて凄いじゃないか!ていうかお弁当という概念があることが凄いよ!」


一体その大きな箱の中にどんなおかずが詰まっているのか……!

高鳴る鼓動を押えながら期待大の顔でジィっと見つめる。


そしてパカッと開かれたその中身に驚愕した。


「どお?美味そうっしょ。ウチの得意料理よ。」


「へぇ、すげぇじゃんドミニカ」

「これぞ女子力ってやつっすねぇ」

「ボリューミーさがまるでドミニカちゃんの…」

「なんだ甘いもんじゃねーじゃん」


なんとそれは……


「もしかしてコレって……ハンバーガーですか?」


上から見る大きな箱の中には、巨大なパンが沢山敷きつめられているように見える。


「どっからどうみてもサンドイッチでしょ。はい、どーぞ。」


ドミニカがひとつとって手渡してくれたのだが、受け取るとその重量にまた驚いてしまった。

自分の顔よりも大きいそれは、絶対に食べきれないと想像しなくても分かる。


「あのっ……すごく美味しそうなんだけど、僕少食だから切り分けてもいいかな。」


「まぁこれ4分の1が正解だよな」


パヴェルがナイフを取りだし、切り分けた。

ドミニカ以外の4人でちょうど良い大きさでシェアすることが出来た。

正直浪曼にとってはこれでも大きいのだが、断面はヨダレが出るほど美味しそうだ。

レタスにトマト、ハンバーグに蕩けたチーズという、ド定番のハンバーガーが懐かしすぎてつい感動してしまった。


「……お、美味しい!」


「ふんっ!でっしょ〜。まぁうちはサンドイッチ屋だから当たり前だけど」


「えっ!バーガー屋さんなの?!」


「だからそのバーガーってなんなのよ」


サンドイッチとハンバーガーは似て非なるものだがまぁどちらでもよい。


「ドミニカあの店継ぐのか?そんな爪でよくやれるな」


「手袋してるから余裕だし!」


「ドミニカちゃんの店、最近行っとらんが、イライザはあそこの卵サンドが大のお気に入りでな。あれは胃もたれせんし、年寄りにも優しい味じゃ」


「えぇ〜、ドミニカさんのお店といえばスパイシーチキンサンドに決まってるっすよ〜!うちから仕入れたスパイスを使ってるんすよね!」


「いやコロッケサンドだろ。ドミニカのおふくろさんが作るあのコロッケは何度食っても飽きねぇ」


「なぁドミニカ、前に期間限定でやってたフルーツ生クリームサンドはいつ再開するんだ?!」


どうやらドミニカの家が営むお店は大人気らしい。


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