第27話 予想外の採掘

「はぁ〜……また乗り物酔いしちゃったよ…」


「お前そんなんでよく宇宙浮遊できてたな」


「宇宙は別なんだよ……重力ってのがあって……おぇっ」


浪曼は急いで自家製酔い止め薬を飲み込んだ。

そしてようやく立ち上がると、その光景に目を輝かせた。


「わ……綺麗…………」


山の上からは、まさに言葉を失うほどの美しい景色が広がっていた。

エドラ星の7つの国がくっきりと見渡せる。


「さてさて、ではこっからこの穴の中に入っていく」


そう言ってクルトが指差す穴を見て、

「え」と声を出してしまった。


底が見えなくて、下がどうなっているのか、どこまで続いていてどのくらいの広さなのか、全く検討がつかないため、普通に怖すぎる。


「まぁそう怯えるでない。」


「おっ、怯えますよ!中に水とか溜まってたらどうするんですか?!」


「それはない。この洞窟内の水は川を伝って綺麗に洗浄され、地上で綺麗な生活水として活用されておる。」


「でも何かヤバめの生き物とかいたら?!」


「そーなったらこの目立ちたがりなドラゴンがやっつけてくれんだろ」


パヴェルがそう言って、いつも持っているペンライトで下を照らした。

当然それだけでは底まであまり見えないのだが、一応巨人のドミニカちゃんも入れるくらいの空洞ではある。


「全然余裕っすね!俺が先に行って、ランプをつけておくっすよ!」


やはりシモンが先導してなんの躊躇いもなく穴に入っていってしまった。

シモンも初めてなはずなのに、怖いもの知らず恐るべしである。

1分もしないうちに穴からは僅かに光が漏れ、声が聞こえてきた。


「完了したっすよ〜っ!降りてきてくださーい」


クルトがリュックからハシゴを出し、それを伝って降りていくことになったのだが、浪曼はそれすらも正直結構ドキドキしていた。


下へ降りると、そこにはいく通りかの小川が流れていて、周りは岩場で想像より広い洞窟が広がっていた。

まるで探検家にでもなった気分だ。

想像通りだと、岩をこのまま道具でカンカンして鉱石を掘り起こすんだよな……と浪曼は少しワクワクする。


「んじゃ、ドミニカちゃん。宜しく頼むよ」


するとドミニカは、少々面倒くさそうに近くの岩に手を当てた。

ギャル風のネイルや指輪が目立っている。


一体何をするんだろうと見つめていると……


「!!!」


なんと、ミシミシッ!と岩が砕けてきたではないか。


そう、ドミニカはその怪力で、岩を握り潰すように砕き始めたのだ。

そして砕かれた岩の中から、僅かな鉱石が顔を出した。

そこにクルトが近づいていき、虫眼鏡でじっくり観察しだした。


「……なんじゃ、エメラルドとオパールか。よし、次。」


「もーお。ネイルボロボロになんじゃん!約束通り、要らない鉱石全部貰ってくからね?ウチのネイルデコるから」


「もちろんじゃともドミニカちゃん!」


すごい……これほどまでの宝石たちを不要のものとしてるなんて……。

地球だったらどれほどの価値があるか……。


しかし同時に、価値というものは実に曖昧なものであるとも思っていた。

貴重で高価なものに価値を置く人もいれば、物体に価値を全く見出さない人もいる。

ブランド品や高級品も、それを知らない人やそこに価値を見ない人の前では、全くの無価値なのだ。


地球では、何かに価値を持たせたい場合にはまず有名人に身につけさせ、広告やテレビや雑誌等で大金をかけて宣伝をする。

そうすることで、それを持っている自分も同価値になれるような錯覚的購買意欲を持たせるのだ。


価値基準が地球とはまるで違う所に来ると、果たして人間がこぞって見栄を張るために夢中で大金を注ぎ込むあぁいった価値は、はたして何だったのだろうと疑問を抱かざるを得ない。


「じゃあ俺は、砂漠でたまーに使ってるピッケルで化石探しでもするっす〜」


「化石も良いが、鉱石を頼むぞシモン坊や。

ほれ、浪曼。お前さんはこれを使いなさい」


クルトが貸してくれたハンマーは、意外と重く、よくホビットが平気でこれを使えるなぁと改めて感心した。


「ドミニカちゃんが砕いてくれた場所を、こうして更に砕いて鉱石を探すんじゃ」


「分かりました!」


アルトゥルは、掘り起こされていく岩の破片から、鉱石を種類別に分ける作業をしている。

どうやらとんでもなく目が良いらしい。


パヴェルは洞窟内の泉の水を汲んで、それらを濯ぎ始めた。


相変わらず口喧嘩は止まらないようだ。


約1時間後……


「浪曼さーん!どうっすかー?お目当てのもんはありそっすか〜?」


「あ、シモンくん!えっとぉ……」


「……え?……浪曼さん、やる気あります?」


実は浪曼はまだ1つしか採掘できていなかった。

これは浪曼の体力の無さも原因の一つだが、そもそもここの住人の並外れたパワー、忍耐力と持続力、そして人には無い勘の良さと審美眼が普通じゃなさすぎるのだ。


「はぁはぁ……疲れた〜……皆どうして涼しい顔してそんなに動き続けてられるんだ……ペース全く落ちてないし……」


「浪曼っ!!」


ついに膝をついてしまった浪曼に、パヴェルが急いで駆け寄る。


「顔色悪いぞ、貧血か?!シモン!水!」


「はははいっ!どうぞっ!」


「まぁちょいと休憩するか。気がつけば2時間近く経っちょる。人間にはキツイのかもしれん」


「へぇ〜、か弱いんだなぁ。俺様のパワーを分けてやりてぇぜ」


ひとまず休憩ということで、各々が荷物の中からスナックを取りだした。


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