第24話 お茶会
「浪曼ちゃぁ〜んっ♡♡」
はっ!その声はっ…!!
上を見上げると、向こうの空から大声で名前を呼びながら飛んでくるスワベックがいた。
今日も一際すごい格好をしている。
目の前に降り立った瞬間、ブォンと突風が舞った。
ドラゴンの羽の威力は本当に凄い。
「よーーやくできたわよ、花粉症の薬〜♡」
「おぉ!早いですね!すごいっ」
「こんにちは浪曼さん!キャンディーも作ったんです!ぜひ試食を!」
「あっ!ミレナちゃん!」
スワベックの頭からひょこっと顔を出したミレナは、キャンディを入れた瓶を持っている。
「うん!美味しい!ちゃんと生姜や蜂蜜が効いてて喉と鼻によさそうだ!
じゃあさっそくエヴァ女王に持って行ってあげないとね!」
「はい、でもその前に浪曼さんへ確認に来たんですよ!そういえばヤクブも今日ここへ来ると言ってましたが、まだ来てませんか?」
「え?ヤクブくん?見てないけど…ってアレ…っ、この声は…」
「もーぉ、あいつ〜〜っ!」
今更気がついたが、向こうの方でタワシセールスを行っているクルトの声に混じって微かにヤクブの声も聞こえた。
「まぁっ!このお茶美味しい!」
「なんだか落ち着く香りね〜」
「はい!こちらの茶葉、実は芳香剤にもなるのでお家に置いておくだけでもリラックス効果絶大でオススメです!!」
なんとヤクブは、自分の作ったであろうハーブティーをクルトの隣で配っていた。
完全に試飲会になっている。
「なーにをやってんのよヤクブ!」
「あっ、ミレナ!待ってたんだぞ〜
新作のハーブティーすっごく評判良いんだ!」
「だったら早く浪曼さんに見せなさい!ていうかそれが先でしょう!」
「ィテテテテテ」
ミレナに羽を引っ張られながら引き摺られるようにしてヤクブが連れてこられた。
「こ、こんにちは浪曼さん!どうぞこちら!ハーブティーです!丹精込めてつくった新作ですよ!」
「へぇ〜確かにいい香り…!カモミールにローズマリーに…」
「あっ!アタシちょうどティーに合う差し入れ持ってきたわよん♡浪曼ちゃんの分子ガストロノミーのアドバイスであの洋菓子屋さんが考案した、サックサクホロホロクッキーとメレンゲパイ!
浪曼ちゃんとこ行くって言ったら是非これをって♡」
「わぁ〜凄いね!皆!ありがとう。じゃあせっかくだし、皆でティータイムにしようか」
外のベンチとテーブルセットに皆で腰かけ、ティータイムをすることになった。
「んっ。このハーブティー、薬草も入ってるの?」
「さすが浪曼さん!一口でよくおわかりで!
うちのお庭でよくとれるものをいろいろ使いました!」
「いろいろブレンドしてよくこんなに美味しくなるね」
この風味はなんだろうな……?
ローズマリーとカモミールはわかるけど……この味どこかで……
「あっ、もしかしてシソ?それからウコンとか?」
「ウコンってもしかして、こういう実がなるやつかしら?」
スワベックのジェスチャーに、それそれ!と頷く。
「へぇ〜、それってウコンって言うんですねぇ。葉も身も、薬に使えるということでよくスワベックさんに差し上げてますが」
「そうそういろんな効能があってすごいんだよ!ウコンのものは地球ではお酒を飲みすぎた時に肝臓を修復する目的で凄く人気な商品だったよ」
「やはりそうなのね。アタシもお酒で内臓やられちゃってる系の子たちによくあげてるのよ」
ウコンの力は本当に凄い。
抗酸化作用があるため、血液中のコレステロール酸化を防ぎ、血液を浄化して血行をよくする働きや、心臓病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の予防、また、殺菌・防腐作用があるため、内臓にはかなり万能だ。
二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解しやすくする働きもあるから地球では酒好きに長年重宝されてきた。
「ウコンに似たものがもうひとつありませんか?そっちの効能もかなり優秀で、使えると思うんですけど」
「あぁ〜似たのあるわよ。料理にもよく使うあれよね。カタ芋А。」
「か、かたいもA……?!」
「えぇ。アタシたちの間では、分かりやすくカタ芋AとBって呼んでるわよ。だってとってもよく似てるんだもの。」
まさか……固い芋のような見た目だからそうなってしまったんだろうか?
「それ…一応、ウコンと生姜っていう名称があるんですけどね。
生姜も消化器や胃腸によく効くし、料理や飲み物荷物変えてとても優秀なんです」
「へぇーっ……ウコンと…生姜……と。」
ヤクブはメモを取りだした。
「んん!このクッキーすっごくおいしいですね!サックサクなのに口の中でホロっと蕩けるのがなんとも…」
「でっしょ〜♡浪曼ちゃんの言ってた分子ガストロノミーってのでテクスチャーを何度も実験してみたらしいわ!あ!ちなみにこれにもその生姜ってのが入ってるのよ!」
「ジンジャーブレッドかぁ〜っ!そしたらこれに合わせてジンジャーコーヒーとかどうですかね!あ、ジンジャーって生姜のことなんだけど」
「生姜…ジンジャー……っと。」
浪曼が説明する内容を、ヤクブがメモを取ったり絵を描いたりして盛り上がっていた。
すると……
「ろまーーーーん!!」
どたどたと大きめの足音が聞こえてきて、驚いて顔を上げると、なんと巨人族の王ピエトルが満面の笑みでニコニコと近寄ってきた。
「言われた通りにやったら、ついに微量元素肥料のナノ粒子化に成功したよぉ〜!」
「へぇ!やったね!」
「うん!それから夢の話で言いたいことがっ……ってみんな勢揃いでパーティーかなんか?私も混ぜてよ!ちょうど御礼の差し入れ持ってきたし!」
ドドン!と置いて、ぱっと開いた箱の中に入っていたのはそれはそれは大きなピザだった。
「もしかしてミコワイさんが?!」
「うん!もちろん私じゃなくて叔父がね!浪曼のお陰でこれからどんどん小麦が採れるって喜んでてさ!」
「「わぁあ〜」」
ジューシーで美味しそうな匂いに、ヤクブとミレナは飛びついた。
とはいえ彼らは小さすぎるので、まるで蟻が頑張って齧り付いているようにしか見えない。
「ピエトルちゃん♡また一段と男前になったじゃないのぉ〜♡ねぇ最近はアタシの夢見たぁ?」
「お久しぶりですねスワベックさん!いいえ見てません!!アレっ?あそこにいらっしゃるのはクルト王では?!おーーーーいクルト王ーーー!」
タワシを売りきったのか、満足したように金の勘定をしているクルトがその大声にビクリと手を止めた。
「なんじゃピエトルか。そんなに大声出さんでも儂の耳はまだ悪くないわ小僧!!」
まぁ巨人だから声がデカいのは仕方ないかもしれないが、本当によく通る声量だなァと驚いた。
「「あっははははは!」」
クルトの言葉に皆が笑った瞬間、浪曼のポケットである物が振動した。
浪曼はゆっくりとそれを取り出す。
それは浪曼が持っている小さなライトだった。
これは音に反応するもので、音をエネルギーとしてその大きさに応じて光るのだ。
電気や電池、特殊な技術を使わず、いわゆる何もない状態でも音さえ入れれば光を生み出せる。
「っ!……そうだ……!これだ!!」
「おや?はて、その石は、うちの鉱山で採れる白翡翠に似ておるなぁ」
「わぁ〜なんですかそれ?ホビット村の天然石ですか?」
そうこれは……
現代科学の結晶。
「フォトニッククリスタル……」
光の結晶だ。
「おぬし、一体それをどこで?うちの鉱山にでも行ったのか?」
「いえ、これは……」
これは父が亡くなったときに出てきた石だった。
それをフォトニッククリスタルに加工できたのだ。
ずっとこの原石がなんなのかわからなかったが、鉱石の専門家であるホビットのクルトに見てもらうと、白翡翠と水晶のようなものだが、厳密には何なのだか定かではないと言った。
もしかしたら……これさえもっと集められれば……
このとき浪曼はそう確信した。
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