第13話 砂漠で修羅場
「おいおい大丈夫かよ浪曼。人間ってのはヘタレだなぁ」
「あんなにゆっくり走行したのになんでそうなるんすか?」
ゆっくり?!?!あれが?!
200㌔くらい出してたんじゃ……?!
何か文句の一言でも言ってやろうかと顔を上げたとき、頭に疑問符を浮かべた。
「あれ?ここが目的地?」
先程と何も光景が変わっていない。
ただどこまでも続く広い砂漠があるだけだ。
「ここっすよ!俺が迷うわけないんすから」
そうシモンが言ってまたトントンと砂を叩くと、なんと今度は地下への入口が砂漠に現れたので、卒倒しそうになった。
「ここが1番女王に近い入口なんす」
「なるほど……砂漠族は基本地下に暮らしてるんだ」
シモンに続いて入っていくと、そこは本当に1つの街が広がっていた。
家があったり店があったり、フェネック族もたくさんいる。
想像さえしていなかった世界にまた来てしまった。
「っあ!モニカはっけぇえん!!」
突然のパヴェルの声に、モニカってどこかで聞いたような……と思いながらその方向を見ると、一人の女性がフェネックの男性と買い物をしていた。
この綺麗な顔どこかで……っあ!
" そんなんだから、1番上の娘の反抗期を止められなかったんじゃないのぉ~?"
"なっ?!何を言う!モニカのことは今関係ない!"
先程の人魚の王とパヴェルの会話を思い出した。
ということはこの子は……マルチン王の長女…人魚姫?
え?でもなんで尾がなくて脚があるんだ??
「なっ?!どうしてアンタがここにいんのよパヴェル?!」
「あん?そりゃこっちのセリフだわ。なんなんだこの男は」
「も、モニカ?まさか本当はこの人と付き合って……」
「ちち違うわよトメック!信じて!」
いやいやいやいや待って待って?
ただの男女の修羅場みたいになってるよ?
浪曼はこういう時の対処の仕方がわからずただあたふたとする。
「ほらアンタのせいで勘違いされてんじゃないの!だいたいカンケーないでしょ?!」
「オヤジが心配してんだぞ?!家に帰らずふらつきやがって不良娘か!仮にも海の姫だろ?!」
「モニカ……やっぱりお父様が心配なさって警護をよこすかも…」
「だ、大丈夫よトメック、心配しないで」
「あん?こらお前、男ならもうちっとコイツの立場考えろ!」
「あっ、あなたが何を知ってると言うんですか?エルフの王だからって僕は好きな女性の前で脅しには屈しませんよ」
エルフの王?!?!?!
そうか!!ずっと抱えていた違和感の正体が思わぬハプニングでようやく今更知れてしまった!
パヴェルはエルフの王だったんだ!!!
「チッ、てめぇマジでいい加減に」
「パ、パヴェル!とりあえず今日のところは見逃してもいいじゃないかな。僕らこれからホラ、女王にも会ってこの後も予定詰まってるだろ?」
なんとかそう切り出すと、今にも手が出そうなパヴェルはため息を吐いてフンっと踵を返し歩き始めた。
おそるおそる振り返ると、あっかんべーをしている姫がいる。
……家出をしていたのは本当だったんだ。反抗期?にしても脚は?もしかして御伽噺みたいに薬でもあるの?
浪曼の好奇心は1度持つと永遠に消えることはない。
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