25.ジャングルを抜けて

 黒龍は扉に向かう一本の道を歩いていた。人間の心を失いかけていた黒龍は、これから一人で残りの化け物を倒していく事となる。

 「俺は化け物。人間ではない。」

 ブツブツと呟きながら歩みを進めていた黒龍は、ジャングルを抜け、とある集落の広場にでる。すると黒龍の姿に気づいたのかそこにいた人達が声を掛ける。

 「そこの刀を持った人!何処へ向かうのですか!」

 その声に気づいた黒龍は、その人達のいる方向へ顔を向ける。

 『なんで人間がいるんだ?此処は化け物しかいない筈。もしかしてあの人間も化け物なのか?』

 黒龍は精神がおかしくなっていた。刀からは黒い煙が発生しており、只事ではないのに、自身は気づいていない。

 「ちょっと!待って下さい!」

 そこにいた人達は全身真っ白に変化した黒龍を止めようとしたが、黒龍の歩みは止まらずその集落を絶つ。

 「あの人、刀に支配されてしまっている・・・。」

 「これじゃあ、五十年前に起きた事の繰り返しだ・・・。」

 集落にいた人々は以前から幽界への扉へ向かっていく人を目の当たりにしていた。その数七人程。しかし一人を除いた全ての人間が真っ白の操り人形と化していた。黒龍もその運命を辿っていくのではないかと。黒龍を止める事が出来なかった人達は、もうどうする事も出来なかった。

・・・

 一方その頃達郎は黒龍のこれから起こる未来を見ていた。

 『これでは阿修羅を倒す事が出来ないばかりか、手先にされるかもしれない・・・。あの刀は相当邪悪なものだ。この状況を打破出来るのは、今此処にいる瞳さんだけだ。』

 達郎は頭を悩ませていた。気絶している瞳を起こさない限り、この世界を終わらせる事が出来ないと。

 「ごめんなさい、瞳さん。今から貴方の弟、和人さんの過去を直接脳内に送ります。辛いですが立ち上がって下さい。お願いします。」

 達郎は寝ている瞳の額に手を翳し、和人の過去を直接脳内に送り始める。すると瞳は苦しそうな顔を見せた。しかし達郎はそれでもその手を止めなかった。

 「必ず・・・!翼さんの、いやこの地にいる全ての魂を救って下さい!瞳さん!」

 その時達郎は涙を流していた。

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