21.上から見下ろす元凶

 時は深夜。三人は疲れて眠っていた。しかしそれを上空から見下ろす元凶がいた。そう、阿修羅だ。

 「遂に此処まで来たか。あの三人は我を楽しませてくれる存在に違いない。しかしなにかが足りないな。畜生よ。なにが足りないと思う?」

 阿修羅は自身の手先、畜生を連れてきていた。すると畜生が涎を垂らしながら口を開く。

 「阿修羅様。俺は現世であの女、瞳を殺した。また同じような事をしたい。あの子の泣きながら死んでいったあの姿をもう一度この目で!」

 「ほう。中々いい刺激になるな。そういえば畜生は様々な殺し方を知っているらしいな。首絞め、めった刺し、バラバラ・・・。それ以外にも知っておるのだろう?」

 「ごもっとも。しかしそれらは生ぬるい。もっと強烈なものを用意しなければなりません。是非俺に力を下さい。必ず他二人を絶望に追い込んでみせます!」

 畜生は不気味な笑顔を浮かべながら腰につけていた包丁を取り出す。それを見た阿修羅は薄ら笑いを浮かべながら、とある能力を畜生に分け与えた。

 「さて、畜生はその能力の練習をしろ。我は貴様を信じているぞ。」

 「はい。任せてください。」

 そして二人は空からフッと消えた。

 しかしそれを遥か遠くから見ていた者がいた。その人とは、もう一人の阿修羅の手先、人間だ。

・・・

 時は早朝。黒龍は寝ていた事に気づき、二人を起こす。

 「悪い。俺まで寝てしまった。見張りをするつもりが・・・。」

 「大丈夫よ。黒龍が一番疲れていただろうし。」

 「僕も同じ意見。二人はもう体調治った?」

 瞳と黒龍は頷く。

 今日の天気は快晴だ。遠くには元々いた草原が見える。

「さてと、この川を渡った先にはジャングルが広がっているみたいだな。川幅は一キロといったところか。二人共、頑張って泳ぎきるぞ!」

 「ええ!」

 「うん!」

・・・

 そして三人は川を気力で泳ぎ、無事に渡る事が出来た。

 「痛てて、まさか川底があんなに深かったなんて・・・。」

 「・・・しんどかった。黒龍はなんであんなにピンピンしているの・・・。体力凄いって・・・。」

 瞳と和人は息を切らし、バテていた。すると黒龍がジャングルの奥地へと続く道を発見する。

 「体力が戻ったらこの道を歩いていくぞ!」

 その言葉を聞いた二人はヒヤッとした。

 「どうした二人共?臆したか?」

 「そ、そんな事ない!!!(ある意味臆したけど)」

 「こ、黒龍の気のせいだよ!(しんどい)」

 それにしてもこの世界は不思議だ。身体が常に健康で食事をしなくても消滅しない。空腹という感覚を三人は忘れていた。しかしある事だけはダメージを負う。それは心だった。

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