17.迫りくる化け物達

 和人の初めての実戦が終わり、先を急いでいると、もの凄い量の化け物達が砂の中から出てきた。砂漠というのもあって、暑さで気が動転しているのだろう。そいつらは涎を垂らしながら三人に襲い掛かってくる。

 「居合は強敵が現れた時にのみ使用する!和人は瞳の援護をしてくれ!逆に瞳は俺の背中を預けた!」

 「了解!」

 黒龍は二人に大声で伝えると、自ら敵の中心へと斬りながら入っていった。

 「黒龍やっぱり凄いな!」

 「そうね!ただこの数はやばいわ。草原で起きた事に似ている。和人も入れる時に黒龍の援護をして!!」

 黒龍はひたすら化け物を斬り刻んでいき、和人と瞳は黒龍の周りを取り囲んでいる化け物を連携して倒していった。しかし化け物はどんどん増え続ける。

 『何か策はないか・・・?』

 黒龍は戦いながら考えていた。『さばく、さばく・・・砂漠!』

 「砂漠だ!この地は砂で出来ている!!!」

 「急に何言っているの!」

 「雪山にはクレバスという落とし穴がある!!それと同じように砂漠にも落とし穴がある筈だ!その場所までこいつらを引き寄せる!!」

 なるほど。黒龍は此処にいる化け物達を落とし穴に誘い込み、殲滅しようと考えたのだ。「柔い砂岩地帯を探せ!」と二人に伝え、一人で戦い続ける。

 「柔い砂岩・・・。あの丘と丘の間にある谷とかどうかな!?」

 「確かにあそこならワンチャンあるかもしれない!」

 猛スピードでその場所まで駆け抜ける二人。砂のせいで上手く足が動かない。しかも化け物が行く手を阻む。

 「瞳!此処は僕に任せて!必ず成し遂げてみせる!」

 その言葉は死亡フラグ、いや消滅フラグというべきか。しかし考えている暇はなかった。

 「分かった!必ず!」

 瞳は和人の事を見ずに走り抜けていった。

 「ふぅ、行ってくれて良かった。これでもう僕は・・・。」

 化け物達が和人の間合いに入り込み、斬り刻もうとしていた。すると和人はニヤリと笑う。

 「本気を出せる!!」

 和人は目を瞑りながら脳天割りを地面に向けて本気で撃ち、岩石の粉塵を辺りに飛ばした。周りにいた化け物達はそれによって視界を奪われる。

 「せこい戦い方なのは分かっている。だけどこうでもしないと、化け物の注意を僕に向ける事が出来ない!」

 そして和人は視界を失った化け物達に脳天割りを喰らわせた。やはり黒龍が言っていた通り、和人の拳は化け物を一撃で葬る事が出来たのだ。それと同時に瞳が柔い砂岩がある地点へと辿り着き、大声を出す。

 「此処なら化け物を落とせるわ、黒龍!」

 それを聞いた黒龍は大量の化け物達を率いながら瞳の元へと走っていく。しかし化け物達は足が速い。黒龍の足をもったとしても、追いつかれそうだった。

 「黒龍!僕の元に来て!足の速さには自信があるって言ったでしょ!」

 「それでいいのか?和人、お前を危険に晒すかもしれないだろ!!」

 「沢山の危険を目の当たりにしてきたから怖くない!!だから!!」

 黒龍は心苦しい顔をしたが和人を信じ、任せる事にした。驚異的な跳躍で追いかけてくる化け物達の最後尾まで飛び、刀の風圧を使って化け物達を和人の方向へと飛ばしたのだ。そして飛ばされた大量の化け物達が和人の後を追っていき、黒龍は難を逃れる。

 『流石に速い!でも僕の方がその速さを上回っている!!』

 瞳のいる地点まで四百メートルといったところか。しかし和人は短距離走が得意。四百メートルを前世では一分弱程で駆け抜けていたが、この世界では約三十秒で走れる。砂場というデバフがかかっているが、大地を蹴る力は衰えず、無事に瞳の元へと辿り着いた。

 「瞳下がっていて!僕が化け物達を落とす!」

 「大丈夫だよね?任せたわ!」

 瞳の安全を確認した和人は、連れてきた化け物達を落とす為に拳を柔い砂岩に向けて放つ。すると地面が割れ大穴が出現した。

 「あぶな!」

 和人は崩れゆく足場にこけそうになりながらも穴の範囲外に逃げる事が出来、化け物達はその大穴へと落ちていった。

・・・

 「なんとか砂漠の化け物達を落とす事が出来たな。」

 「そうね。和人の足の速さのお陰でクリア出来たわ。ナイス、和人!」

 「いえいえ!二人の機転がなかったら計画を実行出来なかったし!」

 三人は拳を合わせ、互いの心配をしあった。数百体いた筈なのに、誰も欠けずにクリア出来たのだ。

 「さてと、気を引き締めて先に進むぞ!」

 「うん!」

 「ええ!この砂漠から早く抜け出したいしね!」

 三人は大穴を抜け、どんどん扉へと順調に進んでいる筈だった。しかし三人は気づかなかった。阿修羅の手先が真後ろで監視している事に。


───さてと、あの刀の男を処分してやるかぁ! ───

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る