11.迫りくる罠

 「・・・!!二人共、一旦後ろに下がれ!!」

 黒龍が注意を促し三人が後ろに下がった瞬間に、幅五メートル程の通路の左右から大量の矢が飛び出してきた。凄まじい量の矢だ。このままだとこの道を通る事が出来ない。

 「うお、これは凄いな・・・。黒龍、教えてくれてありがとう。」

 「礼には及ばん。だが前から飛んでくる訳ではないから、居合も使えないな・・・。」

 そう言いながら幾千もの矢を超スピードで斬り刻みながら進んでいく黒龍。すると突然和人が黒龍の背後に立った。

 「おい和人!危ないぞ!」

 「黒龍。それじゃあ先が見えない。僕が左側の矢の噴出口を殴り壊すから、援護してほしい。」

 その言葉を理解した黒龍は、矢を斬りながら二人に呼びかける。

 「分かった!俺は右側から迫りくる矢を斬り刻んでいくから、和人は左の飛んでくる矢に気をつけながらそれを頼む!そして瞳は持っている小刀で俺の背中の援護をしてくれ。右側は俺だけで十分だ!」

 「分かったわ!任せて!」

 次々と左側を制圧していく和人。黒龍は和人に迫りくる矢を全て斬り落とし、瞳は黒龍に飛んでくる背中を守りながら進んでいった。

・・・

 「ふぅ、何とか矢の嵐を越えたね。二人共援護してくれてありがとう!」

 「こちらこそ!和人がいなかったら越えられなかった。」

 「そうそう!あ、この矢拾っていこうかな。」

 初めて三人で協力したが、息ぴったりにうまく潜り抜ける事が出来、皆で喜びあった。しかしまだ先は長い。慎重に進んでいこう。

・・・

次に出てきたのは天井に太い棘が無数にぶら下がっている細長い部屋だった。

 「これって如何にもなトラップよね・・・。」

 「そうだな、絶対落ちてくる。かといって三人同時に行ったら、誰かが棘に刺さるかもしれない・・・。何か策はないか・・・?」

 黒龍と瞳は考え込む。すると和人が提案してきた。

 「僕、短距離走が得意なんだ。だから、一か八かに懸けてみない?」と。

その言葉に心配の念を向ける二人。しかし答えは決まっていた。

 「分かった。和人は一直線に走り抜けてくれ。瞳、和人に迫る棘を撃ち落とす事は可能か?」

 「任せなさい!弓の精度においては誰にも負けないわ!さぁ和人、走り抜けて!!」

 その言葉を聞いた和人は、ただ頷き棘の部屋の中に潜り込んでいった。それを狙って落ちてくる棘。しかしそれを瞳は全て撃ち、落下ポジションをずらしていった。その光景を見ていた黒龍はただただ感動している。

 「凄いな。流石弓の達人だ。」

 そして和人はなんとかその部屋の出口に辿り着き、手を振る。

 「さて、次は俺達の番だな。瞳、手助けは必要か?」

 「いいや、小刀で棘を受け流しながら進むわ。黒龍、貴方の剣捌きは一流よね!」

 「あぁ!全て斬り刻んでいく!よし、行くぞ!!」

 二人は声を掛け合いながら全力で走り抜け、先読みして落ちてくる棘を跳ね返してく。長年この世界にいるだけあって、恐怖心が麻痺している様だった。

・・・

 「ふぅ、棘の部屋を抜けたな。次はなんだ?」

 腕を伸ばしながら喋る黒龍。

 「んー、変な虫とかいないといいけど・・・。」

 「確かに・・・。虫は苦手だからなぁ・・・。」

 ピラミッドの中はジメジメしており、何か変な生き物が出てきても不思議ではない。不快な場所だった。すると突然三人の間を火の弾丸が走り抜ける。

 「うわっ!あっつ!」

 「前からだ!避けていくしかないぞ!」

 気が緩み始めていた三人だったがなんとか避け続けた。しかし飛んでくる火の弾丸はかなり多く、一向に前に進めない。するとあろうことか黒龍が居合の構えをしたのだ。

 「ちょっと黒龍!流石そこでやったら大変な事になるって!!」

 「確かにそうだ。だが、威力を抑えれば道が開かれるはず!!」

 そう言いながら止めようとする二人の話を聞かずに抜刀する黒龍。威力を最大限抑えた為か、天井が崩れずにすんだ。

 「今だ!走り抜けるぞ!」

 「おいーーーー!!!」

 三人は居合によって開かれた大穴を駆け抜けていった。

・・・

 へとへとになりながらも、なんとか通り抜ける事が出来、三人はかなり広い空間に出る。

 「黒龍、無茶ぶりが過ぎるよ・・・。」

 しかし黒龍はその言葉を聞かずに、その空間を眺め一言発した。

 「おい、この空間はなんだ・・・。」と。

 二人は息を絶え絶えにしながらその空間を見る。そこには文明の跡が残されていた。


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