07.哀傷
「そういえばあの扉に向かうって言ったけど、何か手掛かりはあるの?」
和人は扉の方向に目を向けながら二人に聞く。
「いいや、実は何も掴めていない。扉に行く事自体本当にするべき行動だったのか分からなかったし、実際に一人で行けると思わなかったからな。それに此処に来る人達を見過ごすわけにはいかなかった。」
「黒龍がこの世界に来て二十年。私が十二年になるけど、化け物が襲ってくるだけで超常現象が起きたりって事はなかったよね。」
「なるほど・・・。実戦場で鍛練してきたって言っていたけど、あの力を持ったとしても沢山の人を救えなかったんだね・・・。」
───鍛練してきたという話をしていた時に、黒龍の声が震えていた事を思い出す和人はつい口走ってしまった。───
その言葉にギクリとする黒龍。顔に出ていたのがバレていたのかと思った黒龍は仕方なく話す事にした。
「うぅ・・・その言葉は心に刺さるな・・・。そう、実際に救えたのが瞳ただ一人だった。」
その言葉にハッとした和人はすぐに謝ろうとしたが、黒龍がそれを止めて話を進める。
「俺には『此処に来た人達を救えなかった』という罪がある。その人達を救えなかった上に、なんて最悪な結末を与えてしまったのだろうと。」
それを聞いていた瞳は悲しそうな表情を浮かべる。
「でも、こんなところで立ち止まってはいられない。霊歴六百六十六年、物凄く不吉な数字だが、今年中、いや今月中にこの世界を終わらせたい。だから二人共。俺の弱いところをカバーしてほしい。お願いします。」
黒龍は二人に懇願した。その姿は本当に弱弱しく、黒龍の仲間を守りたいという想いが身に染みて分かった和人と瞳は黙って頷く。
「二人共ありがとう。ところで瞳。何か策はないか、戦闘の天才よ。」
「全然天才じゃないから!その呼び方やめて恥ずかしい!!・・・んー、道中危険に溢れている筈だから皆注意して進もう。私は弓使いで回りを見ながら戦えるから、黒龍と和人の掛け声に合わせて動きを決めるわ。逆に私がピンチになったら助けてくれるとうれしいかも。」
瞳は生前弓道で全国大会に進む程の実力を持っていた。それはもうどの選手よりも優れており、同じ部活の人達から羨ましがられていた程に。また、基礎的な運動能力も高いので、場合によっては腰に身につけている小刀を使って戦闘する事もあるという。
「わかった。逆に俺達は近接型だから、瞳を襲う化け物を援護しつつ前方を制圧していく。」
黒龍と和人は頷き、互いの助け合いに尽力する事を誓った。
「さぁ、作戦までとはいかないが大体戦闘スタイルも決まった事だしあの扉へと進むか。」
「そうね、出来るだけ早く。」
「うん。でもこの先化け物がいっぱいいるのか・・・。怖いよ・・・。」
「まぁ無理もない。序盤は俺と瞳で何とかするよ。」
そう言いながら歩き始めたと同時に、三人の真後ろで爆発音が鳴った。
!?
何が起きたんだ!?と警戒する三人。振り向くと煙の中に人型をしたなにかがいた。
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