06.化け物の弱点

 「まずはあれだな。化け物の倒し方について話そう。和人、化け物は何処が弱点なのか分かるか?」

 黒龍は和人に問う。

 「化け物が生物か分からないけど、やっぱり体の中枢を担っている脳とか心臓・・・?」

 「そうだ。しかし、今まで大量の化け物を斬ってきたが、深く斬ってしまえば何処であっても消滅させる事が出来る。」

 地面に化け物のスケッチをしながら、話を進める黒龍に対し「えっ」と声を出す和人。化け物に再生能力や自然治癒力がない事を初めて知ったからだ。

 「ちなみに私は基本頭だけを狙って矢を射っているわ。心臓が何処にあるか分からないからね。ただ何故かは分からないんだけど、人間の弱い部分が化け物に反映されているの。例えば頸動脈を射抜いた時は、血を吹き出しながら消滅したわ。」

 「そうなんだよな・・・。昔ある一体の手足を斬り落としそのままにしておくという実験をした事があるんだが、再生もせずに出血多量で消滅してな。どうやら致命傷じゃない怪我を負わせても場合によっては倒す事が出来るみたいなんだ。」

 「貴方そんな事をしていたの・・・。気持ち悪い。」

 黒龍の惨い実験の仕方に若干引く瞳。

 「いや弱点を知っておく事も大事だろう!まぁ和人。お前の拳は本当に強い。組み手をした時のあの一瞬で分かった。一番得意な技はあるか?」

 黒龍は必殺技に成り得るであろう技を和人に聞いた。それは今後化け物と戦う上で有利になる可能性が高いからだ。

 「本当は反則技なんだけど・・・脳天を拳の横、いや小指の付け根と言えばいいのかな?・・・で叩き落とす脳天割りが得意だったよ。」

 「瓦割り・・・みたいなものか?」

 「そうそう。瓦割りは手刀で振り落とす事が多いけど、脳天割りは拳を握ったまま振り落とすんだ。生前サポーター無しで小さい石を割る練習を遊びでやっていて、いつの間にかそれが身についたんだよね。拳が普通の人より硬いからだろうけど。」

 和人は自身の拳を見ながら言う。

 「ひええ・・・それは凄いね。それなら化け物の脳天を狙うっていうのはどうかな?試しに見せてよ。脳天割り。」

 瞳は和人に関心を向けていた。

 「わ、わかった。そこにある大きめな石でやってみるね。」

 厚さ五十センチメートルはある石の前に立つ和人。『これは硬そうだな・・・。』と思いつつも、腰の捻りと足の脱力を利用しながら勢いよく拳を振り落とした。

 パキッ!!

 すると石は縦に真二つに割れた。

 「え、まさか割れると思わなかった・・・。」

 ちょっとしたヒビが入るだけだろうと予想していた和人は驚き二人も驚愕する。

 「和人・・・凄いよ!見るからに硬そうな石を真二つにするなんて・・・!」

 「な!?拳で割ってしまうとは・・・!和人、その技を最終手段として使うといい。それだけ威力があるのならきっと化け物に通用するぞ!」

 二人は和人の力を身に染みて感じた。和人自身も人間離れしていたのだ。

 「ありがとう。でもちょっとこの技を使うのを考えさせてくれないかな?生前この技を使って人を大怪我させてしまったんだ。ちょっとトラウマがあって・・・。」

 和人は過去に脳天割りを人に向けて放った事で、大怪我を負わせてしまった事がある。空手は組み手をする際怪我する事がよくある話だが、相当酷いものだったらしい。相手を血塗れにする程に。

 「あ、でも戦闘には参加したい。二人が戦っているのをただ見ているのは嫌だ!いいかな?」

 すると二人は微笑みながら同時に「もちろん!」と言った。

 「まぁ化け物に関しての情報はここまでだな。他に質問したい事はあるか?」

 その言葉を聞いて少し考える和人。そして一つの質問を二人に投げかけた。

 「その、もしこの世界が何者かに操られているとしたら二人はどうしたい?」と。

 和人がそう質問した瞬間、二人は真剣な表情を浮かべる。

 「俺達は幾億もの人達を救う事が出来なかった。全ての迷える民達を、化け物によって消滅させてしまったからな。人の悲鳴を何度も耳にし、助けられなかった事を毎回悔やんだ。しかし今日初めて和人。お前を救う事が出来たんだ。瞳があの時あの場所にいなかったら、俺達はまた後悔していただろう。話が逸れてしまったが、この世界が何者かによって操られているのであれば、俺が真っ先にその元凶をぶった斬る!」

 「私も黒龍と同じ気持ち。援護がメインだけれども、この弓を使って二人を支えたい。最大限の技術力を用いて、どんな困難が待ち受けていても貴方達を後ろから支える!!」

 二人の目は曇りなく澄んでおり、決意に満ちていた。しかしそれは、二人の背負っている物がとてつもない錘となっており、それが彼らを蝕んでいるという事。それを感じ取った和人は、急に頭を下げる。

 「もし、二人がこれから先挫折して動けなくなりそうになったら、僕が支える!だから、その・・・これからよろしくお願いします!」

 和人が急に頭を下げた事に驚いていた二人だったが、笑い出した。

 「びっくりした。突然頭を下げるんだもん。なんか恥ずかしいな。この旅が終わっても頼りにしているよ和人!」

 「あぁ!俺達は仲間だ。三人全員が無事にあの扉へと辿り着けるように精一杯刀を奮う!よろしくな!!」

 三人は拳を合わせ、決意を固めた。

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