04.黒龍の剣技
「和人、これが化け物を殲滅する刀”黒焔斬刀”だ。」
『これが真剣・・・。初めて見た。というか刀の名前も厨二臭いな・・・。』
和人は本物の刀を初めて目にし、興味の眼を向ける。すると黒龍は深呼吸をし、集中力を高めた。
「じゃあ俺の技を見せてやる。その一、脳天斬撃刀。」
とてつもなく速く振り下ろされた刀は、狙いを定めた一本の大樹を一撃で真二つに斬り裂いた。
「その二、横薙胴撃破。」
横薙ぎした刀は風圧を生み出し、近くにあった物全てを横に切断した。
「その三、終眼突き。」
突きをした刀は厚さ一メートルはある岩を貫通した。
三つの技を淡々と繰り出す黒龍のその姿は、刀の迷いが全くなく完璧なフォーミングをしている。
「実はこの三つの技には名前がない。今なんとなくつけた。だが、もう一つの技には名前をつけている。折角だから俺の必殺技を披露してやろう。」
そう言うと、黒龍は刀を鞘に納めながら右足を前に出し、腰の重点を低くしながらとある構えをする。それはまさにゲームやアニメで出てくる居合の構えだった。
「二人共。危ないから離れていろ。瞳は遠くから矢を俺に向かって撃ってくれ。タイミングはいつでもいい。」
「分かったわ。和人、一旦実戦場から離れましょう。」
瞳は和人の手を引っ張り、実戦場から遠ざかる。瞳に手を引っ張られながら黒龍の様子を見ていた和人だったが、その構えを見た瞬間本能的にそこから今すぐにでも逃げだしたい衝動に駆られる程の強力な黒いオーラが黒龍を包み込んでいた。
「な、これから何が起きるの・・・?」
「見ていれば分かるわ。」
瞳はそう和人に答えたと同時に実戦場の入り口から、矢を黒龍に向かって放った。しかし、矢が飛んできているというのに黒龍は目を瞑っている。そして黒龍の腹部に矢が当たったと思った。それと同時だろうか。真っ黒に染まった暴風がこちらへとやってきたのだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
居合によって放たれた強烈な風は、実戦場の壁を崩落させ、周囲に轟音を響き渡せた。そして、その風が消えたと同時に静寂が辺りを覆ったのだ。
「これが彼の必殺技、居合よ。私も最初に見た時驚いたけど、彼の間合いに入った物全てを一掃してしまうの。」
「こ、こんなの・・・人間技じゃない・・・!!!」
和人は只々愕然としていた。すると黒龍の二人を呼ぶ声が聞こえてくる。
・・・
「どうだった。俺の放ったカウンター技は。」
「凄い・・・凄いよ!!何故あんな事が出来るの?」
和人は居合の威力に恐れおののきながらも黒龍に尋ねる。
「あれは、身体能力二倍というこの世界の力を最大限に引きだした結果さ。どんな物体にも重さというものがあるが、それを上回る筋力(スピード)で刀をぶち当てる事によってどんな攻撃も完全無効化にする事が出来る。これは俺が幼い時から木の棒を振り回していて、腕の筋力が普通の人よりも優れていたからこそ出来る芸当だ。ただ仲間にも被害が起きてしまう可能性が高いから、開けた場所でやらないと大変な事になるがな。」
それを聞いた和人は理解出来なかった。筋力だけではそんな事出来ないと思い込んでいたからだ。
「この世界に来て二十年もいればこのくらい出来るさ。俺は和人や瞳といったこの世界へと迷い込んでくる人達を救う為に素振りを続けてきた。一振り一振り魂を込めてな。ここまで実力をつける事が出来たのもその気持ちを忘れずに努力した結果なんだ。」
黒龍の剣技はとても美しく、皆に自慢しても良いほどの技術力を有していた。しかしその話をしている時黒龍は暗い顔をしていた。
「ま、まぁ早く広場へと戻ろう。広場に化け物がいるかもしれないからな。」
黒龍は声を震わせながらも二人に催促し、三人は広場へと戻った。
・・・
「よし。一区切りついたし次はあれの話をしよう。」
黒龍と瞳は頷く。和人はそれがなんなのか分からなかったが、黒龍の話を聞いて一瞬で理解した。
『どんな死に方をしたかについて』だと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます