はいしんにっき 1日目
ふう、準備はできた。あとは俺の気持ちだけだ。
俺こと滝村 浹は、モニターの前に座って、ものすごい緊張していた。
同接300人。すでにこんなにもの人が来てくれてる。負けるな、俺。数の暴力が怖いなら、自分が数の力を持てばいい。そう考えたんじゃないのか。でも怖い。あの日、向けられた気持ちが、自分が犯した大罪が、あの人々の視線が、暴言が、暴力が、害意が、頭に過る。鮮明すぎるほどに、思い出される。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
そんなときに、パソコンの画面を見た。見てしまった。すると、そこには、、、
[wkwk]
[wkwk]
[待機ー]
[待機ー]
[どんな感じの配信なのかな?]
[そろそろ時間だな。]
[初配信だろ? 大丈夫かな]
[みんな誰の告知から来た?]
[私、作曲家の蒼碧様から、]
[俺、WEB小説家のカワセミから]
[俺もカワセミ様だわ。]
[私モデラーの宵闇様]
[そういや写真家の千秋も告知しとったぞ]
[?]
[???]
[ナンデ?]
[知らね。でもまあ楽しみだな。]
[そうだね。がんばってーーー!]
[wkwk]
[がんばれーーーー]
[楽しみなの。]
[今北産業。待機ー]
みんな、楽しみにしてくれているんだ。こんな俺なんかにも、期待してくれているんだ。そうか、なら。
『決意を決めなよ。俺。今までの学校の感じと同じでいいよ。ていっても三年は行ってないけどね。』
『自分はいらないこと言わないの。でも、そうだよ。僕らならできるよ!』
内人格の二人も、そう言っているしな。
同接は800人。上出来だ。
「俺のターンだ。やってやるよ。」
さあ、配信ショーの始まりだ。
カチッ
「みんなはじめまして! 今日からVtuberとして活動していこうと思ってます『
[きちゃ!]
[きちゃ]
[始まったーーー]
[はじまた]
[イラストかっこよすぎな]
[それな。刺さるは。]
[お前はナニに刺さってんだよw]
[ナニに決まってんだろ!]
「早速変な会話をしている方々はbanということで宜しいですか~」
[ごめんなさい出来心だったんですそれだけは勘弁して下さい]
[ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい]
[こいつら必死すぎかよw]
「まあいいんだけどね。こんな会話がしたくてV始めたんだから。」
[寛大なお心、感謝します!]
[ありがとうございます!]
[だからさぁw]
「って自己紹介ですら途中じゃん。はい、というわけで、改めまして、これからVとして活動していく予定の渡來と申します!堅苦しい挨拶は終わり!じゃあいろいろやっていこー!」
[おー!]
[おー!]
[おー!]
[おー!]
「まずは俺の前世?別にやめてないから前世ではないから正体明かすだけなんだけど、おれは、WEB小説作家のカワセミです。そして、写真家の
[マジ?]
[納得がいった。]
[中身一緒なのね]
[てか多ない? 大丈夫?]
[それな]
[自分で多いって言うのかよw]
[認めてんのね]
[大丈夫? 体壊さない?]
「心配する声がちらほら上がってますが大丈夫です! 時間だけは無駄にあるんで! 虚しい、、、」
[お、おう、、、]
[同類に匂いを嗅ぎつけてやってきたぜ!]
[仲間だーーー]
[土日何してるの?]
[うぐっ!]
[うぐっ!]
[うぐっ!]
[それは俺らに効く、、、]
[なんかすまん、、、]
「うぐっ、、、そ、それは引きこもりの俺にも効く、、、。まあ土日も忙しいがな。作曲、小説、モデリング、この三つをメインに活動して、お金を稼いでる。て行っても生活費はカツカツだから親に貰ったりしながら生きてる。あとは趣味の料理とか工作とか筋トレとかもしてるかな。平日もやってることは変わらんかな。」
[やっぱり忙しそうなのね]
[料理できるのすごいな]
[お金の手段がそれだけなのか]
[機材とかはどうしたんだろう]
[さすがってところか?]
「機材とかは昔ためてた小遣いとかお年玉とかとか合計200万くらいかけてそろえたな。もういろいろあって投げやりだったから。だから成功してよかったかなって感じ」
[蒼碧様とか人気すごいもんね。]
[こないだ登録者数3000人いったんだっけな。デビューして3ヶ月なのに]
[私も蒼碧様の曲はよく聞く]
[あの悲しさの表現がすごい]
[失敗していたらどうするつもりだったの?]
「もし失敗していたらその時は親のスネカジリ虫にでもなってたかな。まあ俺話はさておきだ。このイラストについて解説していくよ!」
[おーーー!]
[おーー]
[スネカジリ虫w]
[おおおーー]
[おーーー]
[なんか口調変わった?]
俺のイラストは、獣人。狼人間って言ったほうがいいかも。目はオッドアイ。いわゆる異世界系っていう感じの濃い緑色のローブをかぶっているちょっと眼付の悪い男って感じ。異世界風からもわかる通り、魔法を使えるっていう設定。得意属性は炎と空間。指は細く爪もとがっている。
「目と耳と鼻がいいからなんでも見つけちゃうぞっ! って言う設定になっているよ! 年齢は十八歳。中の人も一応成年はしているけど二十歳にはなってないから、お酒はまた無理かな。」
[ぞっ!]
[見つけちゃうぞっ!]
[ぞっ!助かる]
[成人はしてるんやね]
[イラストかっこいい、、、好き、、、]
[ガチ恋勢生まれるの早すぎんか?]
[まあ男性目線で見てもかっこいいわな]
「そして、今日は固定化してないから口調とかばらばらなってるけど、俺って解離性障害なんよね。だから人格らしきものが三人いるんだわ。」
[解離性障害か、、、トラウマ?]
[まあ人生いろいろあるからね、、、]
[カイリセイショウガイ? ナニソレオイシイノ?]
[俺もわかんねーや]
「解離性障害を知らない人もいるみたいだから軽く説明すると、解離性同一性障害、いわゆる多重人格よりも症状が軽い人が診断される障害で、多重人格みたいにっきりとは別れたいないけど人格が複数個あったり、自分の行動を記憶できなかったりといった様々な症状があるよ。そして原因はストレスだったりトラウマだったり強い恐怖だったりするんだ。」
[あーーーー。なんかスマン]
[上に同じく]
「だから僕の中には、黒俺君と、灰俺君がいるんだよね。僕はあいつらには白僕って呼ばれてる。なんでそうなったかも話そうと思ったんだけどね。でもまだ怖くて、信用できなくて、全部は話せないかな。今日ここに立っているのも、それを克服するっていう目的もあったりするから。」
[いいよゆっくりでー]
[すぐに人間なんか信用できないよな分かるよ]
[ある意味三重人格じゃね?]
[その勇気がすごい、、、]
「まあ、上辺だけだけど、昔めっちゃ虐められて、ものすごく精神にダメージを負って。解離性同一性障害になるくらい追い詰められて、死のうとして、そんな中で、〝あの人達〟に出会った。いっぱい居るんだけど、その中でも特に大きな2人が、佐村、椛様と、花音様。あの二人に、救われた。」
[あの方々ね]
[花音様好きだわ]
[上に同じく]
[椛様か。有名所だな。]
[謙虚で優しいところがすこ]
「お仲間さん達がいるようだね。そう、そんな人達に、雪桜に、オンライブに、救われたんだよ。あの人たちのようになりたくて、あの背中に並びたくて、追いつけなくてもいいから、とにかく近づきたくて。でも、一歩踏み出すなんて出来なくて、好きな物も捨てたくなくて、中途半端なまま、この3年間を過ごした。最初は1番人の反応を見なくて済む小説家から、様々なことをレベルを上げながらやっていった。」
[だから色々やっているのね。]
[なんかカワセミさんって人気に執着してない気がしたのはそれか。]
[なるほど。]
[でもやめても良くない?ここまで来れたんだし。]
「好きなものが沢山あってね、そのどれもに均等に力を分けるタイプ、なんだと思う。だから全部全部続けていってる。その中で、やっぱりあの人達に追いつきたいと思って、少しでも、近づいて、『ありがとうございました!』って心の底から笑って言いたくて。でも、オーディションなんか行けなくて、その圧が、期待が、周りへの罪悪感が、希望が、失敗したときの不安が、絶望が、何もかもが怖くて、辛くて、でも、やりたい。どんなに嫌われようとも、あの人達に、会いにいくんだ!って。だから個人勢として、今日、この場に立った。始める前も、凄く怖かった。また、嫌われたら、虐められたら、燃えたら、好きを否定されたら、あの苦しみを味わったら、もう、本当に立ち直れない気がして。怖かった。この配信始める前も怖くて三回吐いたんだから。」
[思ったよりシリアス、、、、]
[大丈夫? 無理しないでね。]
[多重人格とかほんとにあるんだ、、、]
[それな。]
[それでもここまで来れたのが凄い]
[ここに立っているだけでいいんだよ]
「みんなありがと。でも、そんな俺でも、この場所までこれたんだ。こんなちっぽけな俺でも、バカみたいな俺でも、来れたんだ。来てしまったと思うときもあるだろうけどね。だから、その痛みも生かして、これからお悩み相談、みたいなこともやってみたいなと思うんだ。知ってるからこそ分かる痛みって言うのもあるんだし。あとは、お絵描き配信だとか、みんなからお題もらって短編小説創ろうだったり、雑談、歌枠、コラボなどなどさまざまな事に挑戦してみようと思っているからよろしくね!」
[楽しみー]
[wkwk]
[まってるの]
[wkwk]
[そういえばこの人多忙だった、、、]
[かけもちが多い!]
[体壊さないようにね]
[もう人気勢の一員なんだから]
[特に蒼碧様はね]
「みんなありがと。いずれ全部話せるようになりたいとは思っているから、それまで待っててくれる?」
[もちろん]
[あたりまえ]
[これから毎日来る]
[ここにいると安心する]
[声質かな? 安心する]
「みんな本当にありがとう。んで、この後は何をすればいいか分からなかったから、とりあえず有名事務所さんがやってるみたいに色々なタグを決めていこうと思うよーーーー!」
[おー!]
[おー!]
[おー!]
[おー!]
「まずは配信タグだね!みんな何がいいー?」
[トク配信]
[トクとーく]
[安直にトク配信、とか?]
[得トクとーく]
[渡來と喋ろうの会]
[渡來ラジオ]
[らじおトク]
[渡來らじお、ありじゃね?]
「じゃあ、普段の雑談は#トクとーく、ゲームとかとかは#トク配信、お悩み相談とかは#渡來らじお、でいい?」
[いいんじゃない?]
[おっけーーー!]
[いいよーーー]
[了解!早速つぶやいてくる]
[はえーよw]
[いいと思うのね]
「なら次はアートタグだね!」
こんな感じで配信タグは、
記念配信、#トク記念日
雑談、#トクとーく
お悩み相談など、#渡來らじお
その他もろもろ、#トク配信
アートタグ、#渡來美術展
リスナーの名称、同士
始まりの挨拶、こんトクは~!
終わりの挨拶、おつとくーーー
俺のあだ名、好きにさせた
って感じになりましたよ!っと
「メモも打ってっと。これからはテロップで画面下部にその日の配信タグを表示しておくね。みんなありがとね。でももうそろそろ時間かな。だから、ここで一曲歌って終わりにしようと思うよ。」
[待って!]
[いかないで!]
[まだその声を聞いておきたい!]
[それな なんだか安心するのよね]
[わかる 包み込まれる感じ]
[まさに睡眠導入剤、、、]
「みんな本当にありがとう!とっても嬉しいんだけど、お別れだね。次回は明日、同じく21時から振り返り配信をしようと思っているから、みんな見に来てね。それでは一曲。」
『ハロ/ハ○ユ』
「ハワユ、、、、、、。 ありがとうございました。それではまた次回お会いしましょう。おつとく。」
[えげつない。感情の込め具合が]
[なんで感情を込められるかもわかっているから素直に称賛もできないのよね]
[泣ける。やばい]
[泣いた。]
[上手って域じゃないくらい上手い]
[高音えぐいくらい伸びるな。マジで男子?]
[声が男子だろ]
[一人称が僕の時は女の子にしか聞こえない]
[それな]
[お疲れ様でした。]
[おつとくです。]
[気負わずに頑張ってください]
[おつとく、、、]
―――――この配信は終了しました―――――
「ふう、、、なんとかなったな、、、」
とりあえずは終わった。もう引き返すこともできない。でも、もし失敗したら、炎上したら、あの全員が敵に回ったらと思うと、怖いな。
『何言ってんだ。大丈夫、お前ならできるよ。やってやれ』
『そうだよ。自分たちなら、できるよ。』
あぁ、そうだね。生徒会の応援演説とか、同学年全員の前の発表のほうがよっぽどしんどかったからな。
「これから頑張るか! やれるだけやろう!」
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