第3話 アンケートの行方
学校で、痴漢対策の練習に対するアンケートに答えた俺。練習希望の男子1人に対し、女子は2人になるそうだ。前後で挟む練習ができるのと、男子が手を出したケースを想定してるとか。
俺は一応参加希望にしたが、俺のそばに立ってくれる女子が2人もいるとは思えない。グループは不成立に決まってる…。
翌日。いつも通りに登校して、教室の自席に着く。初夏の割に暑いせいで、朝っぱらから汗だくになったぞ。自覚してないが臭ってるかもな。
…今の状況なら、俺がどれだけ女子に近付いても向こうから逃げるだろう。逃げてくれれば、電車に乗っても痴漢に間違われる事はない。
汗臭い事がプラスになるとは。世の中何が起こるかわからない…。
そして、朝のホームルームの時間になった。担任の風野先生が教室に来て教壇に立つ。
「昨日のアンケートの確認ができたから発表するわね」
最早俺にはどうでも良い事だ。適当に聞き流そう。
「グループが成立したのは…、『阿部君・白雪さん・赤川さんの3人』・『山内君・花道さん・大森さん』の3人ね」
さすがイケメンと言われてる阿部君と山内君だ。女子が選ばないはずがない。この2グループで終わりだと思っていたら…。
「最後は『目黒君・保坂さん・田辺さん』の3人ね」
今、俺の名前を聴いた気がするぞ。耳がおかしくなったのか?
「目黒君? 君とだけ、私と目が合わないんだけど大丈夫?」
先生はそう言って、俺の席そばまで来る。
「先生、それ間違いじゃないですよね?」
どう考えてもおかしい。一体どうなっている?
「間違いじゃないわよ。…ほら」
昨日のアンケートを先生から受け取ったので見ると、保坂さんはちゃんとした字で・田辺さんは丸字かつひらがなで“目黒君(めぐろくん)”と書いてある。
「練習時間とかやり方は各グループの自由ね。タイミングは未定だけど、報告のプリントを書いてもらうからそのつもりで」
俺の返したアンケートを受け取った後、先生は教壇に戻って行く。
まさかグループができるなんて思わなかった。一部のクラスメートがジロジロ見ててすごく恥ずかしい。やっぱり撤回しようかな?
「これでホームルームは終わりよ。1限の準備をしてちょうだい」
憂鬱な気分なまま、朝のホームルームは終わったのだった…。
1限が終わり休憩時間を迎える。いつも通り自席でスマホを見ていると…。
「ねぇ目黒君、ちょっと良い?」
俺を呼ぶ声がしたので顔を上げると、保坂さんと田辺さんがそばにいた。
「めぐろくん、いつもスマホ見てるよね~。何見てるの~?」
真面目で学級委員長の保坂さんと違い、田辺さんはちょっと? おバカなギャルって印象だ。校則があるからさすがに髪は染めてないが、スカートは短めだし先生に指名されても答えられないケースが多い。
言い過ぎかもしれないが、保坂さんと田辺さんは正反対の人間だ。その2人が俺を選ぶ理由がわからない。
「…特に何も。暇つぶしにニュースサイトを見てるだけです」
「何で敬語なの? めぐろくんって、そういうキャラだったんだ~」
女子と話した回数なんて、両手で数えられる程度だと思う。だから話し方がサッパリなんだよ。敬語は無難な話し方だよな。
「早速だけど、練習について話したいの。…良いかしら?」
「もちろんです」
基本的に、保坂さんに任せたほうが良いな。彼女はしっかりしてるから口を挟む必要がない。
「今日の昼休み、人通りのないところで練習してみたいと思うの。予定はある? 目黒君・田辺さん?」
教室でできる訳ないよな。もしやったら、間違いなく注目の的だ。
「俺はありませんよ」
「あたしもな~い」
「そう。お昼を食べるのに20分ぐらいかかるかしら? そのあたりを目安にして」
「わかりました」
「はいは~い。…後でね、めぐろくん」
2人は俺の元から離れていく。普段ならあり得ないことが起こってるから、教室にいるクラスメートの大半がやり取りを見ていた。やっぱり恥ずかしいぞ。
少しでも気を紛らわせるため、俺はスマホに目を通す…。
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