第6話

 1ヶ月後―――。

 デパートで聖香がペア購入権を抽選で当ててから1ヶ月がたった。

 聖香が自分から進み出て家事の手伝いをしたいと言ってきたので今は聖香に食器洗いとお風呂場の掃除を頼んでいる。

 1ヶ月の間に母さんが一度帰ってきたが聖香が俺にべったりと懐いているのを見て安心していたのと共に驚いていた。

 ちなみに聖香がペア購入権を引き当てたのを言うとめっちゃ驚いて腰を抜かしかけていた。母さんが帰って来た時に聖香の分のベッドを買わなきゃねっと言っていたが聖香が『やだ!絶対に……今の、ままでいい』

 と反対したため結局今でも一緒のベッドで寝ている。もっというとお風呂も結局一緒に入っている。

 母さんが帰る時に母さんが俺に聖香もきっと悠慈に自分の過去を話すと思うからあなたが支えになってあげてね、と言って帰ってしまった。

 もちろん俺は『おう』と答えた。




『ピンポーン』

 家のインターホンが鳴る。

 これは!

「はーい、今行きます」

 時刻は12時。

 お昼ご飯を作ろうとしていた所に郵便が届く。

「佐倉 悠慈様で間違いないですか?」

「はい」

「こちらに印鑑の方をお願いします」

 俺はすっかり玄関の棚が定位置となってしまっている印鑑を取り、押す。

「はい、ありがとうございます」

「いえいえ、ありがとうございましたご苦労さまです」

 荷物を受取り俺はリビングに戻る。

「聖香〜」

 今は俺のベッドで昼寝をしている聖香を起こしに行く。

「届い、た?」

「届いたぞ」

「や、った!」

 家に来た時と比べて聖香は感情を外に出すことが多くなったように感じる。

 良い兆しだな。

「もう、やるか?」

「うん!やり、たい」

 どうやら聖香はオリエント・アリア・ファンタジーをプレイするのが待ち遠しかったようだ。

 俺はダンボールの箱を開封し衝撃吸収材で守られいるVRゴーグルを取り出す。

 白を基調としたそのデザインにはどこか神秘性を感じる。

 隣に視線を向けると聖香はすでに装着していた。

「早っ!」

 というかこんなリビングで始めたら体痛めるぞ……。

 俺は聖香をベッドまで運び自分もベッドに寝てから急いで装着する。



―――virtual reality loading―――



『仮想現実へようこそ

 オリエント・アリア・ファンタジーのプレイを始めますか?


   YES    NO

                   』

 何も無い空間で突如現れたウィンドウ。

 俺は迷いなくYESを選択する。

『チュートリアルを開始します』

 すると、当たりによくわからない文字の羅列が浮かび光ったかと思うと世界が創られていった。

『ようこそオリエントへ―――

 チュートリアルを開始します、《ウィンドウ》と唱えてみてください』

「ウィンドウ」

 俺は言われた通り案内に従って言う。

『水色のタブが見えますか?』

 ヴォンと某SF映画のセーバーの様な音を立ててタブが現れる。

『メニューのクエストを押してください』

 赤いビックリマークがピコピコと出ている所を押すとクエスト画面と出た。


・チュートリアルのクリア

報酬:初心者装備 王国金貨3枚


 と表記が出る。

『《ウィンドウ》には他にも様々な効果がありますのでぜひ試してみて下さい、では次に―――』


…………………………


 その後は戦い方を学んだ。

 とは言ってもいきなり剣が降ってきてスライムのような液体の生物をぶっ倒しただけだけど。

『これでチュートリアルを終わります プレイヤー設定に移ります』

 すると視界が消える。

 プレイヤー設定と出たウィンドウに俺は情報を書いていく。

 プレイヤー名は……『アステール』いつも俺がゲームで使ってる名前だ。確か外国の言葉で星っていう意味だったはず……詳しく覚えてないけど。

 種族って欄があったからタップしてみたがこれはランダム固定らしい。

 見た目はゴーグルでスキャンされた現実の体が元となって作られる。

 身バレなどが怖いところだが見た目の変更をしてしまうとフルダイブの特徴上あまり体自体の方はいじれないらしい。

 これで良いかな。

 他にも生年月日など細かい設定を終えて俺は

 プレイヤー設定を終わる。


『オリエントへようこそ 異界の民に神々の加護があらんことを』


 脳に声が響いて次に気がつくと緑が綺麗な森に立っていた。




――――――――――

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