第7話 残虐で異常なリンチ
日産にも警察にも非協力的な態度をとられながらも、何者かに連れ去られて借金をさせられているとみられる息子・正和の行方を必死で探す父親の須藤光男だったが、実は監禁中の息子の姿を一度目にしていた。
それは10月27日の晩のことである。
父親はこれ以上借金が重ならないよう、この日は息子の同級生たちの実家や本人にかたっぱしから連絡して借金の頼みがあったら突っぱねるように呼びかけていたが、しばらくして宇都宮で一人暮らしをする岡田という同級生の父親から折り返し連絡をもらった。
その父親によると息子から聞いた話では、どうやらすでに正和に金を貸していて、今晩一部を返しに来るらしい。
岡田の父親は今晩様子を見てくると言うので、光男も同行を願い出た。
父親二人が岡田のアパートに行くと、岡田はかなり慌てたそぶりを見せる。
なんでも、金を貸した際に一緒にいたガラの悪い三人に「親に言ったらただでは済まない」と脅されていたのだ。
父親の光男が現れたら親に言ったことがバレて、自分がどんな報復をされるか分からないとビビッていたのである。
だから、その場で連れ帰るのだけはやめて欲しいと懇願されてしまう。
仕方なく岡田の父親と離れた場所で張り込んでいたところ、やがて一台の車がやってきて停まり、誰かが降りたのが分かった。
最初それが誰なのか分からなかったが、光男はしばらくして車に戻ってくるその人物を目撃する。
アパートの防犯灯に照らされたその人物はまさしく正和であった。
なるほど、日産で言われたとおり丸坊主であるのが分かったが、そのまま乗って来た車に乗りこんで去っていった。
これが息子を見た最後となることを光男はまだ知るわけがないのだが、この後に岡田の口から正和の状態について気になることを耳にする。
右手にグルグル包帯を巻いており、それについて聞くと「ラーメンで火傷した」と言っていたのである。
父親は正和が金を返しに現れた際、腰抜けの岡田との約束など破って現場に突入するべきであった。
監禁初日から乱暴されていた正和はその前々日にひどい暴行を受けており、暴行はそれからさらにエスカレートしていくことになるからだ。
そのひどい暴行とは前々日の10月25日午前3時、正和を連れた一行があるビジネスホテルに投宿にした際に行われた。
萩原が部屋に備え付けのキンチョールの噴霧にライターを近づけてできた火炎放射を正和に向けて楽しんでいた時のことで、それを見ていた「熱湯コマーシャル」の考案者である梅沢に悪質なひらめきがあった。
「萩原君、それ、”ヒロヒト”に浴びせるってどう?殴るとか熱湯コマーシャルよりおもしろそうじゃね?」
「おお、そらおもしろそうだぜ」
「いやです!そんなのやめてください!!」
萩原たちが中学時代にいじめていた同級生の名前である「ヒロヒト」と呼ばれるようになっていた正和は半泣きになって懇願したが、この人でなしのお調子者がやめるわけがない。
おら「マッパになれよ」とかどつかれながら全裸にされ、キンチョールを手にした梅沢に火炎を浴びせられた。
「あづい!あづい!あづいいいい~!!!やめてくださいいい~!!!」
正和は泣きわめいて逃げ回るが、梅沢はしつこく追い回し火炎を吹きかける。
そして正和を部屋の一角に追い詰めると、こちらに向けている背中に火炎放射を浴びせた。
「ああああああ~~!!!あついいいい!!!!」
「だははは!こりゃウケる!!おもしれええ!」
萩原しかり、この梅沢も人として必要不可欠な感情がいくつか欠けていた。
正和は体のあちこちに火を浴びせられ、右手、背中、両太もも、下腹部などに深刻なやけどを負ったのだが、逮捕後に梅沢は体をよじって逃げ回る正和に火炎を浴びせた時の気持ちを「面白かった」と悪びれもせずに供述しているのだ。
しかもより信じられないことに、三人はこの日の晩に皮膚がむけるほどの火傷を負った正和に対して熱湯コマーシャルを行っているのである。
岡田のアパートに来た時右手に包帯を巻いていたのはこの火炎放射で負った火傷によるものだが、包帯を巻いたのは医者であった。
実は27日、さすがの萩原も火傷がひどいと思ったのか病院に連れて行っていたのだ。
また、どういうわけか萩原は診断室にも入り込んで同席、正和が余計なことを言わないように目を光らせていたという。
正和は他の部分も火傷していたが、萩原は右手以外医者に診断させなかった。
医者もおかしいと思わなかったのだろうか?
そして火傷の程度は最重度の第三度であったから重傷だったが、病院に連れて行ったのはこの一回だけであった。
ちなみにこの27日の晩も熱湯コマーシャルは行われ、正和は密室
に狂ったような泣き声を響かせたのだ。
萩原たちはこの上なく残忍であると同時に変態でもあり、正和は陰毛を剃られ、オナニーをさせられ、フェラチオさせられ、精液を飲まされるなど屈辱的な暴行も受けていた。
そして一か月以上にわたり顔がパンパンに腫れるほど殴られ、火炎や熱湯で体中にやけどを負わされた正和をさすがに友人知人たちの前に曝すわけにはいかなくなり、それからの萩原たちの要求は正和の両親に集中することになる。
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