始まりの1話、そして終わりの1話
『えっと…皆さん。これから皆さんには、えー…えっと。私、Sによりこの世界に現れる魔物達を倒してもらいます。え?えっと…倒して貰う為に皆さんに力を授け…あ、ランダムにですが力を授けさせてもらいました!なので、えっと。えっと。ステータスと思ったらみれますので、はい!』
私がいつものように一人で朝食を食べている時、突然頭の中にそんな声が響いた。
私は驚き、持っていたお箸を落としてしまった程だ。
「え?ええっ?」
今のは幻聴なのか、なんなのかわからないまま私は慌てふためく。
「え?魔物?倒す?ステータス?」
今さっき頭の中で聞いた話を口に出しながら、落ちていた箸を拾う。
すると私の視界の目の前に突然ゲームのステータス画面の様なものが現れた。
「実々崎 鏡花(ミミザキ キョウカ)
種族 人間
レベル 1
HP 15
MP 15
スキル 調べる
▷」
「何…これ?」
私はしばしの間、その画面を見ながら呆然としてしまっていた。
一体何が起こっているのかもわからないままに私はその場から立ち上がり、ぐるぐると食卓机の周りを歩く。
これは私が考える時の癖の様なものだ。
これをすると、いつも『視界がうるさいからやめろ』と怒られるのだ。
(視界がうるさいとはどう言うことだ…?)
私はいつもそう思いつつ◯◯に言い返すのだ。
(…?あれ?誰に言い返してたんだっけ?)
私が意味不明な記憶を思い出した事により歩くことをやめた瞬間、廊下へと続くドアが
キィイ…
と、音を立てて開いた。
「え?だれ?」
私しかこの家の中に居ないはずなのに開いたドア、それに気がついて見てみるとそこには 緑色をした私の半分ほどしかない低身長の変な化け物が立っていた。
その化け物は口が大きく耳まで裂けており、その口の端からはダラダラと涎が垂れている。
『キシシ…』と、不気味に笑うその化け物の左手には棍棒の様なものを持っており、その棍棒には赤黒い血の様なものが付着していてポタポタと垂れていた。
「ヒッ…」
私の口からは恐怖のためか、無意識に弱々しい声が出ていた。
ガタガタと震える私を見た化け物はとても嬉しそうに近づいてくる。
じわじわと近づいてくるその化け物はなんなんだとパニックになった頭で考えれば、私の目の前にまたあのボードが現れた。
そのボードには
「ゴブリン」
と、一言書いてあるだけだった。
私は別に化け物の名前が知りたかったわけじゃない。どうして家の中にこんな化け物が…と、そこまで考えた私はハッとした。
(そういえばさっき頭の中で響いた声は言っていた。『魔物を倒せ』って。)
私は目の前にいるゴブリンを見た。
(無理だよ!いきなりこんな化け物を倒せって言われても!)
そう思った私はこの場から逃げる算段を立てる事にした。
けれど、部屋から出る扉はゴブリンの真後ろにあるし、通り抜ける前にあの棍棒でめったうちにされるだろう。
(どうすれば、どうすれば…)
今まで生きてきた中で一番頭を回転させるが、頭は働かない。
そんなことをしているうちに、私は部屋のはじまでゴブリンに追い込まれていた。
(あ、もう無理だ)
私がそう考えた私は、目の前に振り下ろされようとする棍棒をぼうっと見つめた。
そして頭に強い衝撃が襲った瞬間、世界は暗転した。
「ガ…ガガガ…キン…失敗。
ジ…ジジ…リ…ト。再接続します。
er…残…不能 」
☆
「もう、残機がなくなりましたがどういたしますか?」
「はぁ…えっと。やっぱり美徳だとダメなのかしらね」
「えー…やはり大罪の方が生存時間は長い傾向にあります」
「うーん。美徳で生存時間が多くてどのくらいなの?」
「えー…美徳ですと…大罪に支えられていましたが6時間ですね」
「はぁ。えっと、じゃぁ私の実験はこれで終わりにします。これ以上は無理よ」
「えー…では、今までのデータは消去の方向で動きますね」
「えっと、そうしてちょうだい。あー、わざわざ私財で小さな村を買い取ったのに…やっぱりダメね。次からは都心で実験しましょう」
「えー…はい、そうですね、若い人が四人しか居ないで後の8人は老人でしたからね」
「えっと、若いんだからもっと頑張ってほしかったわ、まぁ…身内がいたのはこの二人だけだったから小さい方を残機とできたのは良かったのかもしれないわね」
「あー…僕たちの説明の仕方も悪かったかもしれませんね」
「えー?えっと、最初の身内を助けたければって方はまぁ良かったんじゃない?」
「えー…生存時間は確かに長かったですが、スキルの種類に問題があったんじゃないですか?」
「備蓄と召喚よ?えっと、夢があるんじゃないかしら?」
「えー…食料を集めることに必死そうでしたよ。守るべき美徳を放置しちゃってましたが」
「えっと、そうね。あの大罪は強欲すぎたかもしれないわね」
「美徳も召喚に対して気になりすぎたみたいですしね、さすがにあの状況で二手に別れるとか…えー…召喚に関して勤勉すぎたのかと」
「えっと、そうね、次はもう少し考えましょう」
「そうですね、えー…では、はい。」
ある日突然魔物が家の中に現れたが、回し蹴りして倒したぞ? 猫崎ルナ @honohono07
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます