第39話 青の王宮 ー継承の間ー 2
『僕の名前はユウヤ・タザキと申します。突然ですが、お願いがあります。どうか湖に緑の色が蔓延した時、湖の近くにきているリードミアキャット様を迎えに行って下さい。
でも…… きっとリードミアキャット様は此処にくるのを躊躇われるでしょう。だから無理にでも連れて来て欲しいのです。
そして、『葉っぱ頭君』に伝えて欲しいのです。
君が君を許さなくても、僕が君を許します。君が僕に会いたくなくても、僕が君に会いに行きましょう。君は僕の大切な宝物。かけがえのない唯一の親友なんですから。
だからこそ僕は残します。次に呼ばれる守り人のために、僕の大切なみんなの為に。
僕が見た全ての事をーーーー』
映像の中のユウヤ君は穏やかに表情で動いていた。そう、ルネード王がコンパスガイドに触れた時に。
「……リードミアキャット様を連れてくると、今代の守り人がついてくる事も彼は知っていたのだろう。コンパスガイドは守り人の証。そしてこのコンパスガイドによって街は存続出来ている。先程の映像は、王族が一度触ると話される言葉。そして二度触ると……」
説明しながらルネード王は実際にコンパスガイドを2回指で押すと、先程とは違う服を着たユウヤ君が映し出される。
『ブルーメイルの王族の皆さん。勝手なお願いをお許し下さい。僕が作った街ですが次代の守り人が来た時に、この街のドームは消えるでしょう。僕の力を次代の守り人のコンパスガイドに継承させるからです。
でも、街の心配はしなくて大丈夫です。次代の守り人が対策を持っているはずです。万さんがそう行ってましたから。だけど、なんらかの変化はある事だけはご理解下さい。
そしてどうか、僕のコンパスガイドを次代の守り人が触れるのを許して下さい。
僕が敬愛するアクア族の皆さん。皆さんが僕を受け入れてくれたように、次代の守り人をも受け入れて下さる事を願います』
そして、またユウヤ君は静かに微笑む表情へと戻る。
「……我ら王族が触れて見れるのはここまで。この先はわからない。それでも、アクア族の王となる者にはこの言葉も引き継がれている。
『我ら[守り人の盾]として今度こそ次代を支えよ』……と」
ルネード王がその言葉を俺に伝えると、周りのアクア族の者達も一斉にザッと俺に対して跪く。そして王もまた俺の前に跪く。
「タクト様、どうか我らアクア族の願いを叶えて頂けないでしょうか?我ら守り人様の目となり耳にとなり、貴方に力になりましょう。それはきっと貴方様を守る盾になるはずです」
ルネード王をはじめジョシュ王太子、バッカスまで自主的に跪いている。誰も命令はしていないのに……
不意に目線を後ろの映像のユウヤ君に向けると、更に笑ったような気がしたんだ。
まるでこうなる事を予想していたかのようにーー
「だー!わかった、わかりました!協力お願いしますって!だから立って下さい!俺、ほんとーにこういう雰囲気苦手なんですって!」
まあ、俺といえばそんな雰囲気を見事にぶった斬ったわけで。
(だから、俺はそんな頭を下げられる人間じゃないんだって!)
あわあわしながら対応する俺を、微笑ましくみているガロ爺といつの間にかガロ爺の肩に移動していたエランが笑いながら「タクトらしい」と言っていたみたいだけどさ。
ラスタとチェックは「ああ、この光景をリポート出来ないなんて‼︎」「くっそー、名場面!」と言いながら必死にメモをとっていたのには、後で聞いて笑った。
後で聞いたってのには理由がある。
リーフが俺に近づいて来て「グーグゥ」と俺のコンパスガイドをパシパシ叩いたからだ。
通訳のエランによると、コンパスガイドを開いて台座にあるコンパスガイドを触るようにと言っているらしい。
とにかくリーフが引っ張るから、みんなを立たせる前に俺はコンパスガイドを開いたまま台座に近づき、ユウヤ君のコンパスガイドを触ったんだ。
すると、俺のコンパスガイドから『緑の種』が現れて、ユウヤ君のコンパスガイドにスッと取り込まれていったんだ。
その後、リーフに促されて「【グロウアップ】」と俺が唱えると、ユウヤ君の映像が消えて、ユウヤ君のコンパスガイドが強力な光を放ちーーー
ーーーここからは街の住民やガロ爺達の話を後から聞いてまとめた事を伝えるよ。
王座の奥の部屋から溢れ出した光は、そのままブルーメイル一帯を包み込み、ユウヤ君が張ったドームを取り込むと、湖に蔓延していた緑の水の成分を吸収しはじめたらしい。
全てを吸収し終えると、都市を囲うように数多くの蔓が湖底から一斉に生え出し湖面に向かって蔓を伸ばしはじめたんだ。
それは水面に出ても勢いが止まらず、蔓が中心で集まりはじめ幹となり、枝を伸ばして、葉を広げ、湖の中心に大きな木を作り上げたらしい。
この木の根に囲まれたエリアは、水中にも関わらず柔らかな光が満遍なく届き、水の侵入はなく、爽やかな空気が育成されるスポットとなった。
更に水面上の木の周りには根でしっかり作られた土台が作られ、その根の間からも木が生えて実を生み出していたらしい。
この『緑の種』の発芽条件は、先代のコンパスガイドとユウヤ君が張ったエアドーム。
そして、この水中でも育ち水面で食物を生み出すの木の名は、『ルチェレーヴェン』。先代の万物の樹の周りに生えていた『生命の木』の一つだそうだ。
これは後でガロ爺に教えてもらったかな。
え?俺は何でその様子を知らなかったのかって?
仕方ないだろ?その時、気がついたら俺とリーフは白い空間に飛ばされていたんだ。
「ちょ、ちょっとリーフ!ここどこだよ?」
「グ〜ゥ?」
「え?リーフもわからねえの?一体どうなったんだ⁉︎」
「グ!グーグゥグ!」
焦っている俺に、リーフが前足で前方を指差して何かを伝えようとしてきた。
リーフが指差す先には出口のように光る穴があって、とりあえず俺とリーフは歩いてそこに向かう事にしたんだ。
そして、俺が試しに穴に手を伸ばすと……
今度はサアッと白い空間がなくなって、俺とリーフは砂漠の中の枯れた大木の側に立っていた。
辺りでは人と獣人が戦い合い、ガロ爺に似たドワーフが何か種族を守りながら戦っている。
そんな俺たちの近くで、ドサッと音がしたんだ。その方向を見るとユウヤ君が血を口から流して四つん這いになって倒れそうになっている。
『え!ユウヤ君?』
思わず近づき支えようとすると、俺の手はユウヤ君の身体を擦り抜けた。
そう、よくよく見れば俺とリーフの身体が透けているんだ。そんなリーフといえば、さっきから震えて動こうとしない。
『リーフ、どうした?』
俺が近づき震えるリーフを抱き上げると、リーフは俺の胸に顔を埋めて抱きついてくる。
(……どう言う事だ?)
リーフの普段とは違う様子に、俺はこれが本当に今起こっている事なのか……?と疑問を抱く。
その時、ユウヤ君の声が俺に語りかけてきたんだ。
『ーーーここは僕の記憶の中です。まずは当初に何があって今があるのか理解してもらう為に、僕の残した記憶の中に君達の思念体を呼ばせて貰いました』
『って事はここはユウヤ君の頭の中って事か……』
『……正確には違います。でも、タクトさんには、真相を知っておいてもらいたかったのです。本当の僕が何故こうなったのか……』
『ちょっと待て!本当のってどう言う事だ⁉︎』
『僕は、ユウヤであってユウヤではありません。……僕の本当の名は[ベース・プレート]。初代守り人ユウヤのスキルです』
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