第3話 色々突っ込んでみた

 初めて知る事が多すぎる……!

 

 改めてもう一度文字を確認してみると……


 『ステータスを表示します。


  タクト・ハザキ 22 男性 人間(標準)

 保有体力(HP) : 1,000/1,000

 保有魔力(MP) : 100,000/100,000

 保有スキル : エア・ポート 

 保有ギフト : 万物の樹(仮契約状態)

 称号・加護 : 万物の樹の守り人・万物の樹の加護

 保有従魔 : リーフ(リードミアキャット/希少種)

 スイッチパスワード : 《ギア》声紋認証済み

 マスターパスワード : 《メイン》声紋認証済み 』

 

 一応ゲームもやった事あるから、HPとMPは分かる。わからないのはこれが一般より多いのか、少ないのかって事だ。


 (んー……まあ、コレに関してはいずれ使っていけば分かるだろ。それより……)


 気になったのはスキルとギフトだ。まずはスキルをタップしてみると、詳細が出て来た。


 『【スキル : エア・ポート】万物の樹のエキスを取り込んだ事により、付加された能力。

 

 ー現在使用可能スキルー


 【エア】レベル1 発動は音声対応。


 ・クリエイトエア  MP10 (空気作成 : どんな場所でもタクトのみ呼吸可能。但し、時間制限あり。現在一時間作成可能)

         

 ・エアパウチ  MP10(真空空間作成: 範囲指定有り。効果時間: 無限。解除(デリート)可能)


 【ポート】レベル1 発動は音声対応。スイッチワードで発現。


 ・ギア・メインポート  MP0 (万物の樹の秘密基地へ戻る扉召喚。現在入室可能 : タクト/リーフ ) 』


 (使い道があるような、ないような……)


 色々疑問は残るが先に進んでみよう。えーと次は……


 『【万物の樹】(仮契約状態) ¥#€£$&%〆※&£€$%%==………

 タクトを守り人として召喚した樹。現在は仮契約状態のため、力は半減。毎日6胡桃マーケットの実を落とす。胡桃の中は時間停止になっている為、保管は胡桃のままが便利。使用済みの胡桃は木の近くに置くと吸収される』


 (始めの方の詳細が文字化けしていてわからない、か……)


 わからない事は、今は何か理由があるんだろうと思い続く部分を見る。


 興味深いのは、《胡桃マーケット》だ。食料調達が出来てありがたいし、もし食材多くなってきたら売るのもいいかもしれない、と思いを巡らす。


 なんにしてもコレに関しても様子見だ、と結論し、次をタップすると、称号はそのままだったが、加護は詳細が出た。


 『【万物の樹の加護】

  魔力増強、スキル成長促進、回復力アップ 』


 (おお、結構すごいな、コレ。あ、でも通りで、頭ぶつけた時治り早かったんだな。助かるぜ)


 次は、リーフについて。


 「おい、リーフ。お前、俺の従魔になっているぞ?」


 俺の膝で腹丸出しで寝ているリーフ。


 始めは俺の膝にちょこんと座ってたのが、そのまま眠気に負けて、後ろに倒れた状態で器用に寝ているんだ、コイツ。


 ウリウリと腹を手で触っていると、「……グーゥ?……」と少し起きたのか前足でお腹を掻いて、また眠ったみたいだ。


 (コイツ、コレで希少種かよ。防衛能力ゼロだな)


 それでもリーフの存在に、俺は結構助けられている。


 異世界に転移してきたけれど、リーフのおかげで余り寂しいと感じない。


 それにこの秘密基地も万物の樹の内部という事もあって、この場所にいると気持ちが安らぐんだ。


 「むしろ、ここからどうやって外に出るんだ?というかここの空間って何なんだ?」


 ぐっすり眠っているリーフを撫でつつ、ぼやく俺。


 結局、わからない事は全部万物の樹に聞きにいく事にした。


 リーフを抱いてロフトに上がって来た俺は、リーフ専用のベッドにリーフを置いて、寝室横の階段を登り外に出る。


 《胡桃マーケット》の胡桃が足元に落ちていないのを確認して、俺は万物の樹の前に立つ。


 「なあ、教えてくれよ。ここって何処なんだ?ここから出れるのか?もし出れたとしたら、どんな世界なんだ?俺に頼み事って何なんだ?」


 とりあえず疑問を列挙して万物の樹にぶつけた俺は、どれかでも答えてくれたらラッキーと考え、手を樹に触れた。


 すると……頭の中に映像が浮かび上がる。


 雲の中から地上を見るように、段々と開けていく視界。


 深い森、大きな湖、聳え立つ山脈、草原の中の優大な川、明らかに野生動物ではあり得ない生き物。


 その生き物と戦っている人間達。人間と戦う獣人達。森の中で暮らすエルフや鉱山の麓でモノ作りをするドワーフ達。


 次々と頭の中に情景が映し出されていく。 


 (これは前も見たな。多分これが外の世界なんだろう)


 俺がそう思った途端に映像は切り替わる。


 (あれは俺?俺が秘密基地の中で何かを呟いている?)


 映像の中の俺が呟いた後、また映像が切り替わり、秘密基地の外に移動したらしい。ジッと見ていると、万物の樹の根本に新たな西洋風の門が出てきた。


 映像では俺がその門を潜り抜けると、森の中に門がスッと現れ、俺がその門から出て来ていた。


 (これは……外に出る方法?俺のスキルで出れるって事か?)


 どうやら俺が思っている事が正解だと、映像が切り替わるらしい。


 そう思っていたらまた映像が切り替わる。


 今度の映像は、大きな丸の中に外の世界があり、隣には大きな丸の中に万物の樹が映っている。


 その二つの丸の縁側に門が出来ると、俺が二つの丸を行き来する様子が流れている。


 (これは、外の世界とここは別次元って事だろうか?俺のスキルだけ行き来出来るって事か?)


 これもどうやら正解だったらしい。


 画面が切り替わり、今度現れたのは荒れ果てた砂漠地帯。


 そこに今にも枯れそうな細い木が映っている。今度は映像の中にリーフが出て来て、その木とリーフ自身を交互に指差している。


 (これは……この木の場所までリーフを連れて行けって事か……?)

 

 俺がそう勘づくと頭の中の映像が消え、視点が万物の樹の立派な幹の部分に戻っていた。


 「……流石に、情報を整理しないとなぁ……」


 樹の幹を背にして屈み込み、幹に寄りかからせてもらう。

 

 目を上に向けると葉と葉の間から光が差し込み、ここが異世界とは思えない長閑な雰囲気。


 でも上は光が満ちているのに、樹から数m離れている周りの景色は真っ白なもやがかかっている。


 このもやは、俺がここに来てからずっと晴れないままだ。


 (この空間もまた別の次元って事なんだろうけど、まだまだ秘密はありそうだし。この樹自体、守り人の俺でさえ全容わかってないんだよなぁ……)


 獣人と人間が戦う映像や、動物とは思えない生き物と戦う映像もあった事から、危険が身近にある世界だと言う事もわかった。


 (どうすんだよ……俺、戦えねえし。インドアの現代日本人のか弱さ舐めんなよ!)


 とは言え、筋トレでもすっかと考えていると、「グーウグ?」とリーフがヒョコッと扉から顔を出す。


 「ん?リーフ、起きたか?」


 来い来いと手招きする俺の下に、「グー!」といい返事でトテトテと二足歩行で歩いて来るリーフ。


 「お前、そういえば余り前足地面につけねえな?俺の真似でもしてんのか?」


 「グー♪」


 近くまで歩いて来たリーフを抱き寄せ、膝に乗せると俺の身体にスリスリと顔を押し付けて来るリーフ。


 (コイツは従魔より、ペット枠だよなぁ)


 リーフのふわふわな毛並みを俺も撫でていると、俺の胸元にあるコンパスガイドをペシペシとリーフが叩いてきた。


 「ん?何だ?コンパスガイドを開けって言ってんのか?」


 「グーウ!」


 俺の問いに頷くリーフに和みながらもコンパスを開くと……


 「アレ?青い光が出ない……?」


 さっきまで出ていた光の画面が出てこない代わりに、方位磁針の先が赤ではなく青に変わっていたのに気付く。


 グルグル回しても動かない磁針に、おそらく俺が向かう場所を示しているのだと理解し、思わずため息を吐いてしまった。


 「リーフ。外、結構危険そうなんだぞ?やっぱいかなきゃ駄目か?」


 「グウ!」


 「そっかぁ……まあ、やってみるしかないよなぁ。俺、その為に居るんだし、この空間に世話になるんだしなぁ……」


 「グーウ、グーウグッ!」


 「お前のほっそい前足で力こぶなんてないだろうに……」


 「グウ‼︎グーッ!」


 「イテって!わかったから、顔叩くなって!」


 「グーウグーウ」


 「前足組んで頷くって……お前の仕草って人間臭いなぁ。何処で覚えたんだか」


 リーフに愚痴を溢しつつ、気持ちを前向きに持っていく俺。


 (まあ、おかげで少しやる気出てきたけどさ)


 リーフの頭を撫でながら立ち上がり、俺は一度外の世界を見てみる決意をした。


 (多分、あの言葉言えば門が出て来るんだろうな……)


 「ギア・メインポート(ボソッ)」


 この年で言うのは、なんとなく気恥ずかしい感じがして小声で言ったけど、どうやら無事門が出て来たのだろう。


 「わかってるって、見に行くよ」


 さっきから必死に俺のズボンの裾を引っ張るリーフをヒョイっと抱き抱え、樹に向かって一応声をかける。


 「じゃ、ちょっと外の世界をみてくるよ」


 そんな俺達の後ろ姿に、サワサワと葉を揺らす万物の樹。


 いってらっしゃいと言われている様で、俺は片手をあげて門へと向かった。

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