第14話

「ぎゃーーー! 凪さん、来た! わらわら出て来た!」


「わ、私が動き止めるから吹き飛ばして!!」


 重圧により、地面に這いつく張るグール、いやハイグールというらしい。正直どっちもでもいい。動く死体、ゾンビ。とにかくコワい、キモい、クサい。


 ここは富士の樹海。富士山を目指して樹海を進んでいるんだが、ここはどうもアンデットモンスターがメインのダンジョンのようだ。富士山を中心にダンジョン化が進み、樹海にまで広がっている。

 進めば進むほど強力なアンデットモンスターが出現するらしいが、俺との相性は最悪だ。


 ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!


 『マルチショット』で動けなくなったハイグール共を蹴散らしていく。のだが、体が欠損しても動いてくるやつがいるのだ。


「大晴! 足! 足を狙って!」


「ぎゃー! キモすぎる! 物理攻撃の相性悪すぎ!」


「私だって魔法だけど物理寄りだから!」


「凪さん、ここは俺たちとの相性最悪だよ!?」


「大晴なら何とかするって思ったの!」

 

 く!! 応えてあげたい、その期待。 


 ボッ! ボッ! 


 ひとまず、動いているハイグールの足を吹き飛ばして、動きを封じる。


「こいつら、何が効きやすの?」


「うん。グールはレイス系モンスターが死体を動かしてるじゃないかって言われてて、物理以外の魔法で攻撃するのが一般的。一番は聖属性系の魔法だけど」


 霊的モンスターってやつですか。魔法は効くと。俺の『デコピン』は魔法も弾ける。意識して直接叩き込めば効きそうだけど。霊的な部分? に当てないと意味がない気がする。


「凪さん、物理的でない魔法攻撃ってどんなのがあるの?」


「そうねぇ。火とか雷とか光、闇なんてのもあるわね」


 ぴーんときた。電気なんてどうだろうか。俺は親指と人差し指を高速で擦り合わせてみる。そして、指同士を離す。


 バチ!


 静電気というやつだ。これをショットの要領で弾いてみる。


 バチッ!


 電撃が地面を穿つ。


「ね、ねぇ。大晴、今何したの?」


「ちょっと思いついてね」


 再度摩擦を起こしながら今度は倒れているハイグールの1対に向けて指を弾く。


 バチチッ!


 ハイグールに電撃が着弾した瞬間、電撃により体が海老反り、そのまま煙を出しながら動かなくなった。

 

「おお、効いた効いた!」


「え? 今の電撃? なんで? デコピンだよね?」


 あれ? なんで凪さん困惑してんの? 希望にお応えして何とかしましたぜ?


「いや、静電気だよ。それをデコピンで強化して弾いた感じ? とりあえず全部倒しちゃうね」


 ひとまず残りのハイグールも片付けてしまおう。指摩擦からの『デコピンショット』を繰り出していく。


 バチチッ! バチチッ! バチチッ! バチチッ!


『派生スキルを習得しました』


 うん。覚えたぜ。これで霊的なやつらにも対応出来る。ただ、ちょっと繰り出すのに摩擦のワンテンポを加えるから少し遅くなるのがネックかな。


「凪さん、ちょっとスキル覚えたみたいだからちょっと待って」


「そ、そんな簡単にスキルって覚えれるもんなんだ..」


————————————

名前:

鈴木大晴


スキル:

デコピン

├デコピンショット

├マルチショット

└サンダーショット

直感


称号:

デコピンレジェンド

サタンを討ちし者

————————————


 『サンダーショット』! ちょっとカックイイ。


————————————

サンダーショット:

超速摩擦により発生しさせた静電気をデコピンで繰り出す。

繰り出された静電気は電撃の如し。

ショットより威力は劣るが、魔法的ダメージが伴うようになる。

————————————


「うん。『デコピン』の派生だな」


「やっぱり『デコピン』なんだ」


「うん? そりゃ俺のスキルは『デコピン』だからね」


「さすが『デコピン』ね」


 うん。凪さんの期待に応えられて俺も満足だよ。


「さーて。とはいえキモクサいのは変わらずだから早く攻略しよう」


「そうね。じゃあ進みましょう」


「ぐぅーーーーん」


「「ん?」」


 変な声が聞こえたため、俺たちは向かう先、樹海の奥を見やるとそこには巨人のゾンビがこちらに向かって来ているところだった。

 

「うぁあ、デカくて腐ってるわ」

「トロルゾンビだね」


 まじかぁ。このダンジョンはゾンビしか出ないのか? アンデット系ってゾンビだけじゃないでしょうが。ちょっともう帰りたくなってきた..

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