第9話

「凪さーん、階段あったよ!」


 4階の探索では多くのグレーターデーモン、稀にアークデーモンが襲いかかってきたが、難なく撃退した。そして、最下層と思われる地下5階への階段を見つけた。


「やっぱりあったね」


「よし、ガンガンいきましょう」


 俺と凪さんは意気揚々と地下5階に通じる階段を降りていく。


 階段を下りた先に広がっていたのはTHE玉座の間。

 どこの城の中に迷い込んだのか、いきなりの世界観の変化に戸惑うんだけど。

 中央にレッドカーペットが走り、カーペットの終着を見据えると金ぴかの玉座。そして全身真っ黒な人物が鎮座している。 


「なんでしょうね、これ」


「なんだろうね、これ」


「よくここまで辿り着いた。勇者共よ」


 全身真っ黒な人物が突然、流暢に語りかけてくる。おもむろに玉座から立ち上がるとその容姿がはっきりとしてくる。

 全身は真っ黒、顔はツルッとしていて眼と思われる部分が赤く不気味に光っている。気味の悪いマネキン、うーん。あれもデーモンなのか?


「我はサタン。の王である」


「凪さん、いきなりちゃんと喋れる奴が出てきましたよ。あいつがボスですかね」


「うん。王とか言ってるからボスなんだと思う」


「この世界とか随分小さな世界の王ですよね」


「そうね。勇者とか言ってるし、ちょっと痛い奴かもしれないよ」


‘’やめたげて‘’

‘’緊張感が台無しだよ‘’


「貴様ら、何をコソコソ喋っている? 我の前で随分な余裕であるな?」


 そういうと自称世界の王、改めサタンの全身に赤い刺青が浮き出し、背中から鳥のような羽が左右3対出現する。


「おお! 堕天使っぽい!」


「すごい圧力..」


 俺はサタンの姿を見て、少しテンションが上がってしまったが、凪さんは奴から伝わる圧に少し気圧されているようだ。


「勇者よ。貴様は油断し過ぎだ」


 サタンがそう言うと瞬間、姿を消す。


「消え——だはっ!」


 俺は横に突然現れたサタンに頬を殴り飛ばされた。

 そのまま壁まで吹き飛ばされるが、うまく空中で反転しそのまま壁に足で着地、屈伸で衝撃を逃して、そのまま壁を蹴ってサタンに向かって跳躍する。


「お返しな」


ボッボッ!!


 空中から2発の『マルチショット』を放つ。

 サタンに着弾するが、


「お?」


 何か魔法の障壁のようなものを身体に纏っているようで、着弾はしているがサタンは無傷だった。


「ほう。なかなかの威力ではないか。それは魔法か?」


「いいや。これはただの『デコピン』だ」


「『デコピン』か。何なのかわからんが」


 俺はサタンの近くに着地し、口から出た血を拭う。なかなかのナイスパンチだ。というか痛かった。


「その変なぼ——うだっ!!」


 言いかけたところでまたサタンの姿が瞬時に消え、気配を感じた時には俺の目の前に、そして振り上げられた拳に顎を打ち抜かれた。

 続けて爆音と同時に腹に凄まじい衝撃を受けてまた吹き飛ばされる。アークデーモンの使う爆発魔法を腹に喰らったようだ。


 俺は衝撃でかなり吹き飛ばされるが立った状態で踏ん張る。

 爆発魔法を喰らっても身体は大丈夫みたいだが結構ダメージ受けたぞ。しかし今のはイラッときたね。


「お前さ、自分だけ質問してきてこっちは答えたのに、俺には質問すらさせないとか器が小さ過ぎない?」


「貴様は何を言っている?貴様が勝手に答えただけで我は貴様の質問など聞く気もないし、答える義理もない」


 確かにな! かっこつけてただの『デコピン』だ。とかドヤってしまった自分が恥ずかしい。

 とはいえ、頭にきた。あの防御が邪魔だがそれなら破壊してしまえばいい。単純なことだ。

 俺は右手の親指に3本の指を引っ掛け、全力を込める。


 ググ。俺は全力の踏み込みから一気に加速し、消える間を与えないようにサタンに急接近する。

 グググ。更に指に力を込める。間髪入れずに左手で牽制の『デコピン』を繰り出す。思った通り、サタンの体表より1cmくらいの空間をあけて障壁のようなものに阻まれる。


 続けて、渾身の右手による『デコピン』を繰り出した。


「アァン!」


 ドン!っと薬指の一撃で障壁にヒビが入る。


「ドゥゥ!!」


 バキャ!!っと中指の一撃で障壁が弾け飛ぶ。サタンの顔が一瞬で唖然となる。


「・・スリィィィ!!!」

 

バカァァン!!!



‘’え?最後、え?‘’

‘’ああああああ‘’

‘’アン、ドゥ、スリー‘’

‘’アン・ドゥ・スリー‘’

‘’なんで?ねぇ、なんで?‘’


「大晴..」


 ・・・トドメの人差し指がサタンの眉間を捉え、轟音と共にサタンの頭が弾け飛んだ。

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