第6話

 俺は階段を駆け下り、爆音の聞こえた先に向かって地下通路を走る。

 すると通路に白目を剥いて、ボロボロになった男が仰向けに倒れていた。


「おおう。死んでは? ないな」


 念の為、様子を確認すると息はある。気を失っているだけで致命傷を受けては無さそうだ。俺は切り替えて前方を確認すると今まさに探索者の二人がデーモンにやられそうになってるじゃないか。


「どーもー」


 咄嗟に注意を引こうと思って変な話しかけになってしまったぞ。


「にあだ? 貴様ひ」


 え? このデーモン喋ったんだけど。何言ってるかはわからんが。まあ、注意は引けたしいっか。

 レッサーデーモンよりも強そうだ。こいつが上位種のグレーターデーモンってやつかな?


「ビッケバア」


 グレーターデーモン(?)がこっちに手を向けてまたよくわからない言葉を喋ってきた。次の瞬間、ゾワっとした感覚を太ももの周りに感じたため、即座にバックステップで移動する。


 ドン!! という爆音と共にさっきまでいた場所が爆ぜる。


「あぶな! 爆発魔法ってやつか!?」


「避こちだな?」


 表情はよくわかんないが、意外そうな様子でグレーターデーモン(?)が囁いてる。


「お返し」


 ボッ!


 俺は『デコピンショット』をグレーターデーモン(?)にお見舞いする。


「ごへい!」


 グレーターデーモン(?)の腹に『デコピン』の衝撃弾が炸裂し、そのまま後方に吹き飛んでいった。


「よし! 絶好調」


 デーモンの上位種にも通用するね。俺は二人の探索者のもとに駆け寄る。


「大丈夫でした?」


 茶髪イケメンの男性探索者と、おおお、かなりかあいい。綺麗な黒髪セミロングがチャーミングな女性探索者の二人に話しかけた。なんでこの人たち、呆然としてるんですかね?


「い、いや。助かったよ。ありがとう。かなり危ないところだった」


「・・・」


 美女探索者にめっちゃ見られてる。照れちゃうからやめてください。お願いします。あと、後ろになんかドローン飛んでますけど。


「そ、それはよかったで——」


「くしみぁ!!!!」


 おっと、まだ生きてたか。『デコピン』一発で倒せなかったのはスキルが覚醒してから初めてじゃなかろうか。


「しぶとい奴だな」


 グレーターデーモン(?)が飛びかかってきたので拳を躱して顔面に『デコピン』を直接叩き込む。


パアンッ!


 指が炸裂し、グレーターデーモン(?)の顔が弾け飛ぶ。うん、やはり直接『デコピン』の一撃のほうが断然強いな。


「な、なな」

「うそでしょ..」


 俺は倒したあとに落ちた魔石を拾い上げる。おお、レッサーよりもかなり大きい。二回りくらい大きいか?魔石をリュックに入れながら再度探索者達のほうに振り返る。よく見ると壁のほうにもう一人ガタイのよい男性探索者が倒れてる。


「じゃあ、お二人も大丈夫そうだし、そこに倒れてる人も任せてしまっていいですよね? 俺は先に進むんで」


 よし。探索を再開しようじゃないか。俺は歩き出したのだが、後ろから急に手首を掴まれ、止められてしまう。何かと思って振り向くと、


「私も着いていく」


「お、おい『重姫』ちゃん!?」


「・・・」


 チャーミング探索者のどアップフェイス。あまりの衝撃と疑問で言葉が出なかった。美人とこの至近距離はよくない。よくないですよ。


 その時、チャーミング探索者の後ろに飛ぶドローンが視界に入る。モニターに文字が表示されているな。


‘’姫が!!!‘’

‘’食指が動いた‘’

‘’実は肉食系女子‘’

‘’あいつの手になりたい‘’


 あれ? あれはもしや? 少し距離を取らせていただきつつ、問いかけてみよう。


「あれ? 配信してる?」


「うん。ここの攻略の様子を配信してるんだよ」


「そうなんですね」


「そうなの」


 ・・・会話が終わった!!! どうすれば、どうすればいいんだ。


「そ、そろそろ手を離してくれると嬉しいなーって」


「え? やだけど。連れてってくれるなら離すよ」


「・・・」


‘’はぁ、童貞か?‘’

‘’あいつ、顔赤くなってんぞ‘’

‘’爆ぜろ‘’


 外野うるせーよ! 弾くぞ、こら。


「わ、わかったんでとりあえず手を」


「決まりね。じゃあ行こう」


 ニコリと微笑むチャーミング探索者。すごい破壊力だ。


「私は佐伯凪さえきなぎ。あなたは?」


「俺は鈴木大晴たいせい、です」


「大晴君ね。あ、大晴って呼んでいい?」


「も、もちろん。さ、佐伯さん」


「私も凪でいいよ」


「お、おお。じゃあ、な、凪さんと」


 突然だが、チャーミング探索者改め、凪さんが同行することになった。

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