第5話
前話での主人公の持ち物の描写について、ポーションの描写が漏れてしまっておりましたので加筆させていただきました。
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——1時間ほど前の東京駅ダンジョン、地下への階段前。
「おーし。みんな心の準備はOKか?」
俺の名は、
俺は「東京駅ダンジョン攻略」と題して、攻略メンバーを募集した。
結果は上手くいき、素晴らしいメンバーが集まった。『剛腕』、『死神』、そしていま注目株の『重姫』。全員、
ここに日本の中でも10本の指に入る実力者が集まったのではないだろうか。
ここまでの道中は余裕の一言。
しかし、ここからが本番だ。俺は正直、攻略が本当の目的ではなく、あくまでも『東京駅ダンジョン』の攻略の様子を配信することにある。
中位探索者以上になってくるとダンジョン攻略の際にその様子を動画で配信する者が増えてくる。副収入という側面もあるが、単純に承認欲求によるところが大きい。俺も後者だ。
ここ『東京駅ダンジョン』の攻略配信はその難易度からあまり配信されないこともあり、かなりの注目を集めることが出来る。現にいま配信している動画は同接100万人を維持している。狙い通りである。
俺は改めてダンジョン探索用の配信ドローンを確認した。このドローンはかなりの高性能で専用のモニターを使ってリアルタイムに視聴者のコメントを確認することが出来る。
‘’いよいよダンジョンアタックか‘’
‘’ここはデーモン中心のダンジョンなんだよな‘’
‘’グレーターデーモン、みたい‘’
‘’岳様、頑張って‘’
「『重姫』ちゃん、君がこの中では一番若手だ。あまり無理はするなよ?」
『重姫』。本名は
「..余計な気遣いはいらないよ。早く行こう」
反応は全然かわいくない。というよりさっきからアピールしてるのに反応が無さ過ぎる。
‘’姫に気安く声かけてんじゃねえぞ‘’
‘’姫は食指が動かない男にはこうなんだよ、ざまぁ‘’
‘’俺らの姫にエロ目向けてんのがバレバレだぞ‘’
そしてこの『重姫』のファン共。エッジが効き過ぎてんだよ。
「よ、よし! じゃあ行こうか!」
こうして俺たちは『東京駅ダンジョン』に足を踏み入れた。
『東京駅ダンジョン』は地下に発生している。正確には地下そのものが取り込まれ、すでにダンジョン化している。
俺たちは協力して、レッサーデーモンと見た目はそこまで変わらないが、体は一回り大きく、爪による格闘戦も仕掛けてくるグレーターデーモン共を斃していった。
「『死神』! そっちいったぞ!」
前衛役として、10本の魔法剣を空中に浮かせて操り、グレーターデーモン共を相手取っていた俺の横をすり抜けて、後方に待機していた『死神』に向かうグレーターデーモンの1匹。
「風の鎌」
『死神』がそう呟くと、グレーターデーモンの首を風の刃が切り落とす。死角からの見事な一撃だった。
そのまま、グレーターデーモン共を一掃することに成功した。
「よし。十分にやれているな。もう少し苦労すると思ったが——」
意外にいけそうだとメンバーに話しかけようとした時、隣にいた『剛腕』の腕がドン!! という爆音と共に弾け飛んだ。
「がぁぁぁ!?」
片腕を失い、負傷した腕を抱えて声を上げる『剛腕』。俺はなんとなく進行方向の先を確認した。そこには、
「ちきだきグローチー共ん斃すちだこで何ん調子ぬ乗っとれ?」
デーモンの最上位種、アークデーモンが手を構えて立っていた。グレーターデーモンと体格の差はないが、黒い体には紫の刺青のようなものが浮かんでおり、視認することが出来るほどの黒い魔力を全身から迸らせている。そして何を言っているかはわからないが言語を操る。
「『剛腕』! 一旦引け!」
「ク、クソが!!」
「逃せをこにうだわえ?」
『剛腕』が後方に跳躍するとアークデーモンがまた何かを喋り、次の瞬間には姿を消した。すぐさま後方に出現する気配を察知する。
「な、『剛腕』! 後ろだ!」
アークデーモンは『剛腕』が逃げた先に瞬間移動していた。後ろを取られた『剛腕』は唖然とした表情を浮かべるも次の瞬間には顔面にアークデーモンの拳の一撃を受けて通路の壁に向かって殴り飛ばされる。
「ぐほぁ!!」
壁に叩きつけられた『剛腕』はそのままズルズルを壁を伝うようにその場に倒れ込んでしまった。
一息つく暇もなく、アークデーモンはそのまま、『死神』に向かって掌をむける。
「ビッケバア」
何かの魔法を詠唱したと思った時には、『死神』の腹部を中心に爆発が発生する。
「っっ!!!!」
爆発の勢いそのままに後方に吹き飛び、仰向けに倒れる『死神』。
「そ、そんな..こんな簡単に..俺たちは金級探索者だぞ..」
「つ、強過ぎる..」
あまりに一瞬の出来事に俺はそんなことを口にすることしか出来なかった。『重姫』も動くことが出来ず、呆然としている。
‘’姫!逃げて‘’
‘’これはやばい‘’
‘’いやだーー!‘’
「いなひか前りだこだ」
また理解出来ない言葉を発して、俺たちに掌を向けるアークデーモン。終わったと諦めが口に出そうになった時、
「どーもー」
俺たちがやってきた通路の後方から間の抜けた声が聞こえた。
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