第4話
東京駅が前方に見えてきた。ここまでゴブリンから始まり、オークやオーガといった人型のモンスターが襲ってきた。とにかく一度に襲ってくるモンスターの数、頻度が尋常ではない。さすが人外魔境。俺は【デコピン】一発で撃退出来るので今のところは苦戦という苦戦はしていないが。
そんな油断を見せていると火の塊が俺目掛けて飛んでくる。
俺は咄嗟に横に跳んで火の塊を避ける。先ほどまで俺がいた場所に着弾した火の塊はドンという轟音を上げながら爆ぜた。
これが魔法ってやつか。爆炎魔法みたいな感じ?
俺は火の塊が向かってきた方向を見やる。
人型で全身が黒く、背中には蝙蝠のようなツバサが生えているモンスターが空中を浮遊していた。情報とおり、東京駅から出現するモンスター、デーモン。あれはレッサーデーモンて奴だな。駅前のビルからもわらわらと出てきやがった。ここからが本番ですか、そうですか。
身構えると、数匹のレッサーデーモンが一斉に先ほどの爆炎魔法を放ってきた。
「ちょ、ちょっと! 数が多い! 遠距離から一方的過ぎでしょ!?」
迫る炎弾。いくつかの炎弾は回避したが、一発だけ回避が間に合わず。俺に着弾する瞬間、咄嗟に【デコピン】で炎弾を弾いた。
パン!
弾かれた炎弾は近くのビルへ飛んでいき、壁に着弾して爆発した。
なんだ、これ【デコピン】で弾けるじゃないか。【デコピン】は魔法も弾けると。さすが俺の【デコピン】。
しかし、レッサーデーモンは相変わらず炎弾を絶え間なく放ち続けてくる。俺は【デコピン】で弾きながら、少しづつ前進しているが、キリがない。そもそも空中にいる敵への攻撃手段がない!
くそが!俺は【デコピン】で飛んできた炎弾を弾く。
なんとはなく、俺は何もない空に向かってデコピンの指を弾く。
ブン!
なんかこう、親指と中指が擦れる間に力の塊を意識してそれを弾いて飛ばせないだろうか。衝撃をそのまま飛ばす、みたいなイメージだ。
ブン!
再度、【デコピン】を空中に向かって弾く。イメージが足りないか?親指に引っ掛けた中指の爪、そこに溜まる力、それが弾かれたと同時に打ち出されるイメージ。
ボン!
お?なんかいま飛んだ?俺は空中でこちらに向けて炎弾を放ち続けてくるレッサーデーモンの1匹に向けて、【デコピン】を構える。そして、指を弾いた。
ボン!
空気が歪み、レッサーデーモンに向かって衝撃弾が飛んでいく。そのままレッサーデーモンに着弾。
ドン!「ギャッ!!」
レッサーデーモンは胴体に衝撃弾を受け、そのまま体をくの字に曲げて吹き飛んでいった。
『派生スキルを習得しました』
「なんかきた..」
俺はデコピンを空中に向かって連射する。
ボン! ボン! ボン! ボン! ボン!
デコピンから放たれる衝撃弾が次々とレッサーデーモンに着弾し、吹き飛ばしていく。
「ふおおお!」
こ、これは爽快である。俺の【デコピン】は逆境により更なる進化を遂げてしまったようだ。空中にいるレッサーデーモン達に【デコピン】を連射しながら駆け抜ける。
レッサーデーモン共を一掃し、一息つけるタイミングでステータスボードを確認することにした。
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名前:
鈴木大晴
スキル:
デコピン
└デコピンショット
称号:
デコピンレジェンド
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デコピンショット。そのまんまだな。【デコピン】から派生したスキルってことか。俺はデコピンショットの表示に集中する。
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デコピンショット:
デコピンによる一撃を衝撃弾として打ち出す。
通常のデコピンよりも威力は半減する。
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有能である。半減しててもあの威力、十分すぎる。これで遠距離の敵への対策もバッチリだ。【デコピン】の進化がとどまることを知らない。
俺はレッサーデーモンが落とした魔石を拾い上げる。スライムとは比べ物にならないくらい大きい。野球の球くらいはあるんじゃなかろうか。ちなみにスライムの魔石は小指の先よりも小さい大きさだ。
俺は落ちている魔石を背負っているリュックに回収し、駅へと向かう。
さて、眼前には東京駅。ダンジョンは地下に発生しているんだよな。水分、携帯食料や傷を治癒するポーション等はしっかりとリュックの中に準備してある。
俺のダンジョン攻略の軌跡がここから始まると思うとワクワクするな。
意気揚々と東京駅に足を踏み入れた瞬間、下の方から爆音が轟いた。
「ん? 先客がいる?」
連続で轟く爆音に首を傾げながら、俺は地下に続く階段を降りていく。
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