第2話
あれ? 今、スライムが俺のデコピンで弾け飛んだ? スライムが弾けた跡を確認してみると、小さな魔石が落ちている。
俺はスライムの魔石を拾い上げ、背中のリュックに入れておく。これが探索者の主な収入源なのだ。スライムの極小魔石など殆んど価値は無いが。
しかし、さっきのデコピンは何だったのか。ふと思い、再度ステータスボードを表示してデコピンの詳細を確認する。
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デコピン:
親指を支えに中指で力を溜め、そのまま弾く。
ヒット時、クリティカルの場合は大幅な攻撃力補正。
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これか。クリティカルの場合ってやつ。さっきのは恐らくクリティカルヒットだったんだろう。すごい威力なんじゃないか? クリティカルデコピン。
ちょっとやる気が漲ってきたんですけど。よし! もう一回。
俺は周囲を見渡し、スライムを探す。少し離れたところにプルプルした物体を発見した。
早速近くに移動し、座り込んでデコピントライ。さっきは無心の一撃だった。再現できるかもしれないと思い、無心のデコピンをお見舞いする。
パァン!
スライムが一発で弾け飛んだ。
「おおおおおおお!」
俺は立ち上がり、ガッツポーズを決める。無心の一撃でクリティカルヒットが出るってことか!
「え!? 急に何なのあの人?」
「ほっとけよ、スライム倒してガッツポーズしてるんだぜ? 絶対やばいやつだよ」
確かにな! 急に叫ぶのは迷惑だ。俺は申し訳ないと思い、お辞儀をして次のスライムを探すためにその場を離れる。
第三スライム発見。無我の境地でデコピンを放つ。
ピチッ!
..何故だぁぁぁ! いや、ちょっと慢心が混ざっていたに違いなし。気を鎮めてもう一回。
ピチッ!
「・・」
ピチッ!
「・・・」
ピチッ!
「!!!!!!!!!」
ピチッ! ピチッ! ピチッ! ピチッ! ピチッ! ビチッ!!
クリティカルって何なんだよ! なぁ、デコピンよ、頼むから教えてくれ。
俺は再度スライムにデコピンを繰り出す。
パァン!!
スライムは弾け飛んだ。クリティカルゥゥゥ!
『ユニーク称号を獲得しました』
俺が心の中でクリティカルの謎に唸っていると機械的な声が頭の中に響いた。覚醒すると謎の声が聞こえるようになると聞いたことがある。俺は称号なるものが気になり、ステータスボードを確認することにした。
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名前:
鈴木大晴
スキル:
デコピン
称号:
デコピンマニア
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好きでデコピンなんかしてねぇよ? 称号部分に集中してみる。
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デコピンマニア:
異常なほどにデコピンに拘り、モンスターに繰り出し続けた者が得られる称号。
常時、デコピンのクリティカル率を上方補正する。
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ほう。クリティカル率と。薄っすらそんな気はしてたけど確率ときましたか。ということはこの称号のおかげでクリティカルが出やすくなったってことだろう?可能性を感じ始めたんだが。
これは本腰を入れてデコピンを使い続けてみようじゃないか。ということでここら辺だと他の探索者の目が集まり、集中出来ないのでちょっといい場所を探してみよう。
俺は、ルートを外れて適した場所を探す。ちょうどよく大きな岩があったので上に登り、周囲を見渡す。
ちょうどいい場所に草がぽっかりなくなっているスペースを見つけた。ルートから外れているし、しかもスライムの溜まり場になっているようだ。
早速、その場所を目指して岩を降り、歩いていく。
俺がそのスペースに入ってくると、スライム達が一斉に近づいてきて、体当たりを仕掛けてくる。が、スライムの体当たりはまったく痛くない。放置して1匹に集中しても何の問題も無さそうだ。なぜこんな無害なモンスターが存在するのか。スライムの謎である。
早速、デコピンを使っていこう。
ピチッ! ピチッ! ピチッ! ピチッ! パァン!!
ピチッ! ピチッ! ピチッ! ピチッ! ピチッ! ピチッ! パァン!!
やはり、クリティカルが発生しやすくなってるな。ちょっと爽快感を感じる。しかもここ、スライムが自然と集まってくるぞ。スライムスポットと名付けようじゃないか。
ピチッ! ピチッ! パァン!!・・・・・・・・・
そして俺はデコピンの可能性を信じてスライムを倒し続けた。
スライムスポットに通い始めて1年が過ぎた。
『ユニーク称号を獲得しました』
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デコピンマイスター:
デコピンでモンスターを屠り続け、異常者の領域に足を踏み入れた者の称号。
常時、デコピンのクリティカル率を大幅に上方補正する。
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..2年が過ぎる。俺はひたすらにスポットに通い続けている。
『ユニーク称号を獲得しました』
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デコピンデストロイヤー:
デコピンでどれだけの屍の山を築いたのか。その指は全てを破壊する。
常時、デコピンのクリティカル率が80%になる。
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そして、5年が過ぎた。
『ユニーク称号を獲得しました』
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デコピンレジェンド:
デコピンで伝説となる者。その指から繰り出されるデコピンは至高の一撃である。
常時、デコピンの一撃がクリティカル判定となる。
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俺は跳ねて飛び掛かってくるスライムにむけて、デコピンを構え、指を弾く。
パァン!
スライムが一発で弾け飛ぶ。
スキル、デコピンはデコピンの域を超えた。
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