スキルはデコピン—ゴミ認定されたスキルが弛まぬ努力で最強に—

脱兎

第1話

「スキルは..デコピンですね」


「デコピン? それってあのデコピン?」


「あのデコピンかは分かりませんがそう出てますね」


 探索者ギルドの担当者に軽く失笑されながらそう告げられる俺の名は、鈴木大晴たいせい


 ダンジョンがこの地球に突然出現するようになって20年。ダンジョンの出現と同時に人類は16歳以上になると不思議な力、『スキル』を覚醒するようになった。


 俺も晴れて昨日16歳になり、今日は俺の住んでいる街にある探索ギルド支部にどんなスキルを得たのか調べてもらいにきたのだ。


「ステータスボードで見れるようになってると思うので確認してみては?」


 なるほど。早速ステータスと念じて確認をしてみよう。ステータス!


————————————

名前:

鈴木大晴


スキル:

デコピン


称号:


————————————

 

 目の前にステータスボードが表示された。デコピンと書かれた部分に集中してみる。


————————————

デコピン:

親指を支えに中指で力を溜め、そのまま弾く。

ヒット時、クリティカルの場合は大幅な攻撃力補正。

————————————


 あのデコピンだった。クリティカルってなんだよ。


「そちらでスキルをお試し頂けますよ?」


 担当者さんは部屋の奥に置かれたサンドバックを指差す。


「ぜひ!」


 すげー威力なのかもしれないじゃん。デコピン。

 早速サンドバックの前に移動し、デコピンを構える俺。全力を込めて中指をサンドバックに打ち込んだ。


 ぺすッ


 普通のデコピンだった。


「・・・」


「・・ゴミ」


「..あんた今なんてった? 喰らってみますか? 俺のデコピン」


「す、すいません」


 頭を下げて謝ってくる担当者さん。でもね、下向いてるけど口角が上がってんのが見えてんだよ。


「しかしそのスキルでは探索者は難しいでしょう。厳しいことを言うようですが、別の進路を考えることをおすすめしますよ」


「それは初心者向けのダンジョンに行ってみて考えます」


 そんな簡単に諦め切れるか!

 とダンジョン行く前に、


「とりあえず、一発デコピン喰らっとけやぁぁぁ!」


「な!!?」


 俺は担当者に飛び掛かり、渾身のデコピンを放った。


 ぺすッ


 ですよねー。


 ダンジョン。

 中にはモンスターが跋扈し、人類の侵入を待ち構えている。モンスターを倒すと落とす魔石は電気よりも効率的なエネルギー源として、人類に富をもたらした。

 初心者ダンジョンとは弱いモンスターしか生息していないので気軽にチャレンジできるダンジョンだ。


 俺の住んでいる東京には複数のダンジョンが存在する。今も至る所でダンジョンは新しく誕生し続けている。

 ダンジョンにはダンジョンボスというやつが存在し、ボスを倒すと沈静化する。逆にボスを倒さずにいるとダンジョンは成長を続け、いずれモンスターがダンジョン外に溢れ出す。ダンジョンブレイクと呼ばれている現象だ。


 俺は住んでいる街の中にある、すでに沈静化されたダンジョンに向かうことにした。沈静化されたといってもボスがいないだけで中のモンスターは出現し続けるのだ。


 自宅から徒歩5分。住宅街の中にある公園に目的の初心者向けダンジョンはある。ダンジョンの入り口はゲートのような光の渦で誰でも簡単に入れてしまう。

 なのでゲートの前にはギルド職員が必ずおり、24時間体制で出入を管理している。ご苦労様です。


 目的の初心者ダンジョンのゲート前に来ると多くの人でごった返している。初心者向けということで16歳以上、22歳未満のスキルを覚醒した若者達の鍛錬の場になっている。22歳までなのは探索者登録が可能になる年齢が22歳になってからだからだ。


 ギルド職員にステータスボードを見せて早速ゲートを潜る。初ダンジョンである。


 辺り一面、草原、草原、草原である。ダンジョンの中はこうなってるのね。外にいるような錯覚に襲われるがここはダンジョン。油断せず進んでいこうじゃないか。


 少し歩いていると目の前にスライムが現れた。ぷるっとした透明ボディーに体の中心には核があることがわかる。こいつは攻撃してくるが特に消化されてしまうといったような危険もない最弱モンスターである。素手でも倒せるくらいらしい。


 よし! 早速デコピンをお見舞いしてやろうじゃないか。

 俺はしゃがみ込み、スライムに向かってデコピンを構える。親指を使って中指に力を溜め、打ち出す!


 ピチッ!


 親指を使って中指に力を溜め、打ち出す!


 ピチッ!


 親指を使って中指に力を溜め、スナップを効かせて打ち出す!

 

 ビチッ!


「ねぇねぇ。あの人何やってんの?やばくない?」


「やめろって。なんか辛いことでもあったんだろ? 普通じゃねえよ」


 さすが初心者ダンジョン。さっきから俺とスライムの横を通り過ぎる探索者見習いが多いこと多いこと。


 しゃがんでスライムにひたすらデコピンする少年。


 控え目にいっても怖い。でも俺にはこれしかないんだ。試し続けるしかないだろうが。無心でデコピンを繰り出し続ける。

 

 流石に心が苦しくなり始めた時だった。


 パァン!


 何十回目かの俺のデコピンが当たった瞬間、スライムは弾け飛んだ。













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ノリのみで書き始めた新作です。

ノンプロットで書いてるので不定期更新です。


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ブックマークや応援で指の力が溜まり、レビューの星を頂けましたらデコピンの攻撃力が上がります。


皆様のご支援、よろしくお願い致します!

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