第17話 ゴブリンの大軍

 念話にモンスターの影がないと多数声が聞こえた。

 オークもホーンラビットもゴブリンもウルフ系もいないらしい。

 ほとんどのモンスターが姿を消したと言っていい。


 残ったのはオーガ。

 ボア系統もそう言えばいない。

 ええと時系列を整理する。


 まず最初にいなくなったのはホーンラビット。

 で、ボアとウルフ系がいなくなる。


 そして残ったオークが急速に数を減らした。


 あれっ、ゴブリンは何時からいないんだ。

 念話で関連の話を聞いて調べる。

 ゴブリンは最初からか。


 餌となるホーンラビットがいなくなったので姿を消した。

 そうなるとウルフ系がいなくなったのは分かるよ。

 ボア系はどちらかと言えば木の実とか食う。

 ボア系にホーンラビットは関係ないだろう。


 ウルフ系とボア系が相打ちで数を減らした。

 なさそうな展開だ。


 そもそも、ホーンラビットはどうしていなくなった。

 草の植生に異変があったという声はない。


 オーガの領域はみんな警戒して近づかない。

 そこに何かあるのか。


「オーガ退治をしよう」

「依頼、出てないよ」

「依頼金が入らないのでは実入りは少ないですね」


「嫌な予感がするんだ」

「勘は馬鹿に出来ないよな」

「そうですね。調べましょう」


 オーガの領域に近づいたので念話を使う。

 もの凄く大勢の声。

 この声はゴブリンだ。

 オーガの領域をゴブリンが乗っ取ったのか。

 そんな馬鹿な。


「くんくん。この匂いはゴブリン寄せの香」


 香ということは人間が絡んでる。

 ゴブリンの数は10万を超えそうな感じがする。


 とにかく、防衛線を張らないと。

 ゴブリンの数が多過ぎて、黒幕の人間の念話が特定できなくて聞けない。


 こんな弱点があったとは。

 ギルドに報告しないと。


「ゴブリンが大集団を形成している。防衛線を張るのだ」


 困った時の5番目英雄。

 その姿でギルドに行った。


「あなた誰ですか」

「5番目の英雄だ」


 だが、銀の仮面を被っているので信じたふうがない。


「騙りですか、守備兵に突き出しますよ」


『自然の魔力よ、大火球になれ!!!!!!』


「大変だ。外に街がすっぽり入る太陽みたいな魔法が」


 青い顔して冒険者が入ってきた。


「分かってくれるよな」

「失礼しました」


『消えろ!!!』


「安心しろ魔法は今消した」

「ゴブリンの数はどれぐらいですか」

「10万は超えるだろう。ホーンラビット、ウルフ系、ボア系のモンスターはゴブリンの胃袋に消えた。オークも急激に数を減らしたところから見るに半分以上はゴブリンに食われたはず」

「防衛線を作ろうにも、中堅も駆け出しもこの街からいなくなってます」


「俺が大魔法で城壁を作る。迎撃も任せてくれ。ただ城壁を越えてきたゴブリンを退治してほしい」

「分かりました。それぐらいなら手配できそうです」


 さあ、防御を固めるぞ。


『自然魔力よ、城壁となって、そびえ立て!!!!!!』

「おおっ、5番目の英雄の大魔法だ」

「すごい。街の城壁が一瞬でもうひとつ外にできた」

「勝ったな」

「所詮ゴブリンだろう」


「慢心はいけない。黒幕は人間だ。ゴブリンに人間の知恵が加わるのだ」

「すいません。英雄様」

「謝ることはない。厳しい戦いになる。油断してたら死ぬ」


「あれっ、ヒモの姿が見えないな」


「ラウドなら宿屋で震えているわ」

「女には強気に出れるのに」


 レベッタ、カンナ、ナイスフォロー。


「最低だな」

「Fランクの子守じゃ仕方ない」

「だが、ああいう奴が案外美味しい所を持っていって、生き残るんだよな」

「そうだな」


『自然の魔力よ、魔道具の中に入れ!!!』


 自然界の魔力を魔道具に入れて充填する。

 これで、魔道具は問題ない。


 お次は。


「治療にきた」

「金がないんですが」

「代金はゴブリンを倒す事で払って貰おう」


『自然の魔力よ、治癒魔法になれ!!!』


 骨折ぐらいわけなく治る。

 こいつらは駆け出しなのにオークに挑んで怪我を負った奴らだ。

 勇敢さは折り紙つきだ。

 きっと活躍してくれるに違いない。


 魔力無限は良いな。

 自然界の魔力のなんて偉大なことだ。


 使っても使っても減る気配がない。

 怪我人を治したら、次は矢の生産だな。


『自然の魔力よ、ウッドアローを作れ!』


 木と鉄と羽と糸と膠を材料に矢ができる。

 田舎育ちだ。

 矢の構造ぐらい熟知している。

 魔力があって材料さえあればお安い御用だ。


「鉄が足りません」

「問題ない」


『アイアンインゴット!!!』


 地中の鉄が集められインゴットになる。

 質の悪い鉄だが、繰り返し使うでもなし。

 どうせ矢を打ったら回収などできない。


 何万本もの矢を作った。


『ストーンボール!』


 握り拳ほどの石ができる。

 これは投げて良し、城壁から落として良しだ。


 ばんばん作るぞ。

 あとは、当日だな。

 他人の魔力も充填できるし、遠距離攻撃は十分だろう。


 ラウドの姿を見せないと。


「やあやあ、諸君。頑張っているかい」


「くそっ、レベッタのヒモじゃなきゃ殴ってた」

「何の用だ? 子守冒険者」


「陣中見舞いだ。ポーションの差し入れだ」


「おお、気が利くな」

「薬師と仲が良いからな。格安で買ったとは分かっているがまあ貰っておこう」


 実はこのポーション、最下級の奴に強引に魔力をぶち込んで等級を上げてある。

 薬師の経営を圧迫するから普段はやらないが、緊急時なら良いだろう。

 こういう子狡い立ち回りこそヒモに相応しい。

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