第15話 無限魔力

 魔法の性質は変えられた。

 これは、魔力が思念によって色々な現象を起こすからだ。


 じゃあ、自然の中にある無色の魔力はどうなんだ。

 これを変えられれば。


『自然の魔力よ、土魔法に変われ!!!』


 やったできたぞ。

 自然界の魔力を自分の戦力に変えられた。

 だよな。

 魔力は思念で魔法に変わる。

 自然界の魔力を摂り込んで自分の魔力にするのも、無意識に念でやっているのだろう。


「凄い、遂に魔法使いになったのね」


 呆れたようなベレッタの口調と顔。


「師匠、凄いです。これでこそ師匠です」


 ということは俺って念話で魔力回復も出来る?


『自然の魔力よ、俺の魔力に変われ!!!』


 できたっぽい。

 うそんというレベルのチートだ。

 魔力無限の魔法無限。

 こんなのに勝てる奴いないだろう。

 でも毒は勘弁な。

 即死でなければ、治癒魔法でなんとかなるけど。


『自然の魔力よ、カンナの魔力に変われ!!!』


「魔力が溢れた感じがします」


 うん、補充しておいた。

 さて、反撃開始だ。


『自然の魔力よ、礫の魔法に変われ!!!!!!』


 雷が落ちたような音を立てて礫の集団が大軍を切り裂いた。

 指揮官が死んだのだろう。

 兵士は逃げ始めた。


 5番目の英雄の話に尾ひれが付くな。

 だがそれも良いだろう。

 さてお着換えタイム。


「あー、5番目の英雄様が行ってしまわれた」

「見て下さい。ヒモのラウドが戻って来ましたよ」

「悪い。見棄てて逃げた訳じゃない。5番目の英雄が来ただろう。大声で助けを呼んだんだ。5番目の英雄の雄姿は見てた」


「しっしっ」

「あっち行って下さい」


「邪険にするなよ。可愛い顔が台無しだ。5番目は死を抱いているような男だ。女は抱けないさ。俺みたいに可愛がってやることもな」

「誤魔化されないわよ」

「そうです」


 いいぞ、さらわれてた人達が呆気に取られている。

 ここらで幕引きを計ろうか。


「たっぷりサービスしてやるよ。ケツの穴の中に舌を差し込んで舐めてヒーヒー言わせてやる」


 レベッタとカンナが真っ赤になった。

 耳年増だな。


 でも良い演技だ。


「みんな帰るぞ。ヒモのラウドをよろしく」


 何にもしてないのにあれ何って声が聞こえる。

 念話じゃないよ。


 ヒモの説明をしている人もいる。

 そして、真っ赤になった女の子も。


 ギルドに帰ると、ざわめきが広がった。


「くそっ、ヒモのラウドにやられた」

「マッチポンプじゃないのか」

「5番目の英雄が現れたらしい」

「詳しく話せ」

「さらわれた犠牲者から聞くんだな」


 色々な声が聞こえる。

 念話で聞くまでもない。


「依頼料はもーらいっと。俺がフローラだっけを、連れ帰ったのだから、文句ないよな」

「功績の横取りは規約違反です」


「それは冒険者ギルドに加入してない奴の功績も含まれるのか」

「くっ、含まれません」


 悔しそうな受付嬢の顔。

 うん、何となく楽しい。


「ダーリン、さっきのこと許してあげる♡」


 そう言ってレベッタにつねられた。

 痛い。

 レベッタの顔は笑っているが、目は笑ってない。


「そうそう♡」


 そう言ってカンナも俺の脇腹をつねった。

 ケツの穴発言は不味かったか。

 いやだって、インパクトのある発言としてあれしかないと思った。

 でないと、俺が5番目だと疑われる。


 まさか英雄があんな発言しないだろう。


『いちゃいちゃしやがって』

『なんであんな奴が金持ちになる』

『世の中不公平だ』

『5番目の魔法は凄かったらしいな。地形が変わったというぞ』

『万の大軍が潰走したってな』

『ヒモ野郎許さん』

『漁夫の利しやがって』

『5番目は魔法スキルも持っているらしい。それと魔法の増幅系のスキルだ』

『いったいいくつスキルを持っている』

『ヒモの女、ケツの穴まで舐めて貰っているらしいぞ』

『俺にはできん』


 うん、順調だ。

「金は貰ったし、今日はパーッとやるか」

「許してあげる」

「高い物食べましょう」


 ギルドの酒場で、ミノタウルスのワイン煮を頼んだ。

 一番高い料理だったからな。

 フォークを肉に入れると崩れそうなほど柔らかい。

 口に含むと僅かなワインの香りがして、濃厚な肉汁と旨味が口の中で暴れた。


 敵国はこのまま黙って引っ込むことはないだろうな。

 いや、今日はやめておこう。


「あーん」


 俺はフォークに肉を突き刺して、レベッタの突き出した。

 レベッタは肉を食うと満足げにほほ笑んだ。

 カンナにもアーンしてやる。

 まるで恋人だな。

 偽装だが。


『イチャイチャしてやがる。俺は飯が不味いい』

『喧嘩売ると、レベッタが出てくるよな』

『闇討ちしようぜ』

『隙がないんだよ』


 闇討ちの奴の思念は覚えた。


『俺もいちゃつくぞ』


 女がいる奴はいちゃつき始めた。

 親の仇を睨むようにそいつらを見るモテない奴らが可哀想。


「みんな、俺は愛されるヒモだ。さらわれていた可愛い女の子の名前と住所を聞き出した。これをどう使えば良いか分かるだろう」


『怖くて外出もままならない。護衛すればお近づきになれるかも』

『いまの精神状態なら告白すればワンチャンある』


 ないよ。

 いかつい男が迫っても怖がられるだけだ。


『まずは手紙のやりとりから』

『悩みを聞くポジションに収まるぞ』


 諸君、頑張れ。

 応援しているぞ。

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