第14話 苦戦
『魔法効果反転!!!!!』
干からびた人達が元に戻っていく。
こころなしかツヤツヤしている。
レベッタとカンナもツヤツヤしているから。
きっと俺もだろう。
『お前は死ね!!!』
上官を殺そうとしたが、死ななない。
レベッタが気を利かして、剣で殺した。
こいつ俺の天敵だな。
まあ良い、これで敵はいない。
さて、兵士がこの下らない企みをしていたということは、阻止した俺達は標的にされる。
だが、こういう時のための準備はある。
俺は黒ずくめ着替えて銀の仮面を被った。
本邦初公開、5番目の英雄バージョンだ。
俺が頷くとレベッタとカンナも頷いた。
「全く、黒い霧を見たらラウドは逃げちゃって。帰ったら許さないんだから」
「そうですねちょっと愛想が」
「彼のことは責めるな。こうして助かったのだから」
「はい、5番目の英雄様」
「素敵、鞍替えしようかな」
「私は誰も愛せない。愛せるとしたら死神だけだ」
うーん、臭い台詞。
キャラ作り過ぎか。
「レベッタ、さらわれた人達の鎖を切ってやれ」
「はい」
レベッタが鉄の鎖を大剣で断ち切っていく。
俺はその間に上官の懐を探る。
魔道具がひとつ出て来た。
起動すると念話が使えなくなった。
ああ、これで念話を防いだのだな。
念を遮断する魔道具か。
厄介な物を作りやがって。
「5番目の英雄様ですか。ありがとうございます」
「礼には及ばない。私は死神だったが、生を与える神に成りたいと誓った者だ」
助けた女の子の目がハートになっている。
モテる代償が殺し屋を送られるだったら嫌だ。
目立たないに限る。
「私達で外の様子を見てくる。ゆっくり出て来てくれたまえ」
外には残党がいる。
念話で確かめた。
だが、恐らく、念遮断の魔道具を持っている奴もいるだろう。
さて、どうするか。
「念遮断の魔道具の無効化……」
「師匠、こうなったら、爆発で切り抜けるのです。力を貸しますよ」
森を消し飛ばす訳にはいかない森で生計を立てている人もいる。
あー、カンナが土魔法だったらな。
「火を出してみろ」
「火炎魔法【プチファイヤー】」
『土に変わっちまえ!!!』
炎が土に変わった。
やればできるな。
「炎が土に変わったぁ!」
「うるさい、後ろの人達に聞こえたらどうするんだ」
「すいません」
これで、勝てるか。
前衛がレベッタ。
後衛が俺とカンナの合体土魔法。
外に出た。
大軍が待ち構えていた。
俺の念話で拾えるのは10人ほどだ。
あとの1000人ぐらいは魔道具を装備している。
勝てるか。
カンナの魔力が切れれば恐らく俺達は終りだ。
レベッタの体力もこの人数では。
「5番目の英雄とみた。投降して我が軍に加わるというのなら今までのことは水に流してやろう」
指揮官らしき奴が出て来て言った。
投降したら殺し屋として使われるに違いない。
悪人を殺すのなら良いが、こいつらのやっていることを見たら、答えは出てる。
ノーだ。
ここで死ぬ。
仕方ない。
家族に顔向けできないようなことはしない。
「断る」
「その人数で敵うと思っているのか」
「俺はかつて死神だった男。死神には戻らないし、殺し屋などという下劣な存在にはならない」
恰好つけてみた。
死ぬ時ぐらい恰好を付けたい。
敵の陣に石の盾が多数見えた。
前衛はあれで押しまくるつもりなのだろう。
後ろからは魔法がビュンビュン飛んで来るのだろうな。
うぉ、飛んで来る魔法は乗っ取れるが、どこまでやれるか。
「念話」
『石の盾よ。炎に変われ』
敵が全面立てている石の盾が炎に変わって、兵士を舐めるように焦がす。
「石の礫発射に切り換えて、魔法の制御をすぐに切れ!」
くっ、飛んで来る礫はもはや、ただの石を投げられているのと変わりない。
「カンナ、炎の壁」
「火炎魔法、【ファイヤーウォール】」
『炎よ石に変われ』
これで良いが、圧倒的に不利だ。
敵からはファイヤーボールも飛んで来る。
これも魔法を発動して同時に制御を切っている。
飛んで来るのはただの炎の玉だ。
相手の指揮官は頭が良さ過ぎだ。
こうも的確に弱点を突かれると。
レベッタは突撃したいみたいだが、許可は出せない。
ストーンウォールもやがて破られる。
スリングから発射された石が飛んでくるようになった。
山なりに来るのでストーンウォールの上を越えてくる。
俺達はストーンウォールにぴったりと身を寄せた。
魔法の接続の切ってないカンナと俺が作った壁は、魔力をつぎ込めば、大きな威力でなければ壊れない。
が、一刻一刻と魔力は削られて行く。
俺が指揮官でも消耗戦を強いるよな。
数で優位に立っているのだから。
ストーンキャノンの魔法が壁に当たり始めた。
魔力消費が増えていくのが感じられる。
俺はカンストしているけどカンナはそうじゃない。
限界が近い。
くっ、せめて一矢報いたい。
何かないか。
何かあるだろう。
回転しろよ、俺の頭。
前世の知識もフル動員してさ。
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