第13話 アジト

「違法奴隷商人を退治して報奨金でウハウハだぜ」

「私、一杯触られちゃった。あとで上書きして♡」


 ああ、パンチや蹴りで一杯触ったな。

 戦い足りないから、俺と模擬戦希望か。

 仕方ない付き合うよ。

 念話で攻撃の先読みができるから、たぶんできるだろう。


「嫌らしい目で見られちゃった。私の秘密のあんな所やこんな所を見てほしいな」


 はいはい、魔法を見てやればいいのね。


『くそう、違法奴隷商人を罠に掛けたのか』

『やっぱり伝手があったんだな。きっと何人か売られている』

『クズめ。いつか証拠を押さえてやる』

『くっ、報せないと』


 こいつが怪しい。

 どこに報せるんだ。

 後を付けよう。

 俺が後を付けるんじゃなくて冒険者を雇った。

 俺が目配せすると、ギルドの酒場から出て行った冒険者のあとを、俺が雇った奴がつけ始めた。


 半日ぐらいすると雇った奴が帰ってきた。


「どうだった?」

「街の外のゴブリンが掘った巣穴に入っていきました」

「ご苦労様」


 場所を聞いて、依頼終了のサインをした。

 現場に行き、念話発動。


『私達死ぬの』

『誰か』

『おい、うるさいぞ。口を閉じてろ』


『神様』

『家に帰して』

『腹減った』


『あと少しで儀式魔法の魔力が溜まります』


 それだけ聞ければ十分だ。


『死ねっ!!!』


 たぶん、人さらいの奴らは全て殺せただろう。

 俺は突入の合図を出した。


 踏み込んだ途端トラップだ。

 矢が飛んできた。

 レベッタは飛んできた矢を物ともしない。

 全て叩き落とした。


 おっと、魔法陣のトラップだ。

 念話に魔法陣からの念が飛んできた。

 隠してあっても分かる。


『壊れろ!!!』


 魔法陣を念話で壊した。


「私の活躍の場がありません」

「めんどくさい奴だな。炎で地形を把握しろ」


「ええと、ファイヤーウォールじゃなくて、ファイヤーフィールド。炎魔法、【ファイヤーフィールド】」


 床から炎が一瞬だけ上がった。


「地形を把握できたか」

「ばっちりです。そこの分岐は右です」


「よし、ナビを頼むぞ」


 カンナのナビで順調に進む。


 下からミシミシいう音が聞こえた。

 そして落ちた。


「痛た。みんな大丈夫か」

「足から着地したに決まってる」

「お尻、打っちゃいました」


 あー、落とし穴に剣ではどうにもならない。

 レベッタもお手上げだな。

 このパーティの今後の課題だ。

 レベッタのアイテム鞄にはロープが入っていた。

 ご丁寧に先にかぎが付いている。

 引っ掛けてよじ登った。


 カンナが登れなくて四苦八苦している。

 魔法使いに筋肉は必要ないからな。

 仕方ないのでレベッタと俺で引き上げる。


 次のトラップは、鎖につながれたモンスター達だった。


『死ね!!!』


 こんなのは容易い。

 モンスターをあっけなく殺した。


 次のトラップは粘着の床と壁だった。

 ええ、これはくっ付かないようにする薬品がないと。

 嫌がらせみたいなトラップだが、俺達には効果的だ。


「カンナ、出番だ。ファイヤートルネードを作れかなり絞るんだぞ」

「はい、炎魔法、【プチファイヤートルネード】」


 炎のつむじ風が粘着の床に道を作る。

 焼けば大抵はくっ付かない。

 目論見は成功したようだ。


 さて、あと困るトラップと言ったら毒だな。

 レベッタとカンナでもこれは回避できないだろう。

 準備が足りなかった。


「トラップを回避できる自信がない」

「そのなの爆発で切り抜けましょうよ」

「それしかないか」


「炎魔法、【プチボム】」


 小規模な爆発が起きる。

 これぐらいなら洞窟は崩れない。


「どんどん行きますよ。炎魔法、【プチボム】」


 トラップが巻き込まれたらしい。

 残骸が壁から出て来た。


 どうやら上手く行っているようだ。

 力技にもほどがあるがな。


 そして、大広間が見えた。

 入口から覗くと鎖につながれた人が見えた。

 特大の魔法陣がある。


 そして、生き残りがいた。

 そいつからは何の念も伝わって来ない。

 生き物じゃないのか。

 いいや、スキルか何かで思念が漏れないんだ。


 そういうスキルがあってもおかしくない。

 俺の天敵のスキルだな。


 とりあえず、さらわれた人が、すぐにどうこうということは、なさそうだ。

 死んでいる奴は兵士に見える。

 5人か少ないな。


 もっと仲間がいるはずだ。

 生き残った奴は軍服だが、飾りが付いている。

 きっと兵士の上官だな。

 武器は剣だが、魔法も使うかも知れない。

 魔法陣があるから。


 広間の壁に多数の魔法陣が仕掛けられているのが分かった。

 これは自爆用か。

 それとも後始末用か。


『壊れろ!!!』


 いくつもあるので壊すのに時間が掛かる。


「くはははっ、襲撃者よいるのだろう。もう終わりだ。俺を殺しても止まらん」


 大規模な魔法陣が光り始めた。


『壊れろ!!!』


 くそっ、間に合わなかったようだ。

 魔法陣から黒い霧が出た。


 それに触れたさらわれた人達が干からびていく。

 負けてたまるか。

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