第20話 読めねぇ

 いろいろあったが、ともあれ書庫に到着した。


「おお……」


 書庫の中には……当然だが書物がたくさんあった。建物の中すべてに書物が所狭しと並べられていた。


「地震が起きたら本に潰されそう……」


 それはそれで幸せな最後かもしれない。もちろん死にたくはないけれど。


 ……


 そういえば異世界転生って前の自分は死んでしまうのが定番な気がするけれど、前の世界の私はどうなったのだろう? 死んでしまったのだろうか? まったく記憶にない。


 ……


 まぁ考えてもわからないことは考えないようにしよう。


 今はとにかく書物だ。活字を読んで気分を持ち直そう。今までいろんな騒動に巻き込まれたが、本さえ読めれば落ち着くことができる。


 いつだって本は私の精神安定剤だ。大量の書物を前にして、ちょっとテンションが上ってきた。


 というわけで適当な書物を引っ張り出して、


「どんな内容なのかなぁ……」ワクワクしながらページを捲った。「……」


 そして、フリーズ。しばらく目の前の光景が受け入れられずに、動きが止まってしまった。


 ……


 そっか。そりゃそうか。考えてみれば当然か。


「……読めねぇ……」


 なんか複雑な記号が羅列してあった。これがおそらくこの世界の文字なのだろう。私から見れば暗号にしか見えないが、おそらく意味がある文字なのだ。


 他の書物を開いてみる。しかし当然のことながら日本語は見えない。謎の複雑記号があるだけだ。もちろん読めるはずもない。


「……しまった……言葉が通じたから、文字も読めるものだとばかり……」


 そこはご都合主義で読めてよ。なんで会話だけ通じるんだよ。何語を喋ってるんだよ私は。


 ……


 しかししょうがない。読めないものはしょうがない。


 とはいえ……


「諦めるという選択肢は、ないかな……」


 目の前に大量の書物、未知の書物があるのだ。それを目の前にして諦めてやるものか。


 読めないなら解読すれば良いじゃない。

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