第30話 正体明かしたな

 登校し、自分の靴箱を開けると、そこには僕の靴以外の物も入っていた。それは誰かん手紙であった。ここにあるのであるから、恐らく僕宛だろう。


 その手紙には女の子が書いたような可愛らしい文字で……

『話したいことがあるので、放課後に例の部屋に来てくれませんか?』

 と書いてあった。


 その日の授業は全く耳に入らなかった。


*****


 そして、放課後。


「あれ?宗太。帰らないんですか?」

「ああ、ちょっと用事があって」

「ふぅーん……」


 女神は何か僕を疑うかのような目をしていた 

 何故、そんな目をするのだ。女神。


「図書室だよ!勉強するんだ!」

「私、何も言ってないですけど」


 その目は何かを言っているに等しいだろ……。


*****


 この厳重なセキュリュティを難なく通り抜け、たくさんの薄い本がある「例の部屋」に着いた。

 そして、薄い本以外に……とある一人の人がいた

 そう、僕をここに呼ぶ女など一人しかいない。明日香である。


「実は話が合って……」

「それは知ってる」

「あ、そう……」


 明日香は少し不満そうな顔をした。自分が話しているところを遮られたのが気に食わなかったのであろうか。


「で、話って?」


 僕は緊張しながらもそう訊ねると、明日香は言った。


「突然だけど、くれないかしら……」

「な……何を……」


「あなたの生気をよ……!」


 明日香は僕を襲おうとしていた。

 その瞬間、僕は危機感を覚えた。殺気だ。しかし、それを感じたところで回避行動は間に合わない。殺される!!


「宗太ッ!!!」


 女神が障壁を展開。いつか見たひーろーめがみだ。


「やっぱりか……。明日香」

「くそ……。やはり貴様、女神であったか」

「宗太、逃げるよ!!」


 敬語にする暇もなかったのであろう。女神はそんな風に言って、僕の手を引いて走り出した。


「女神!!一体何なんだ!」

「宗太さん!さっき、アイツの正体が判明しました!アイツは悪魔の中でも名高い『サキュバス』という種です!!」

「サキュバスだと……」


 確かに、よく聞く名前だ。


「しかも、アイツは相当危険なタイプで一度憑かれたら、死ぬまで生気をお搾り取られます」

「まじかよ……」


 そう話しているうちに例の部屋を出た。


「おい、女神。何かおかしいぞ」

「どうしたんですか?」


「普通に人が利用している図書館に人が誰もいないじゃないか。司書さえもいないじゃないか……」


「確かに、なんか変だな……」


 そんな、異変に気がついた頃であった。


「もう、この図書館は私の聖域よ」


 現在、一階にいる僕たちであるが、明日香は三階辺りで浮いていた。(この図書館は吹き抜け式)


「もう、ここは私の聖域になっていて、あなた達はここから出れないし、他の人たちもここには入れない。完全に閉鎖空間というわけよ。そして……さっきからここに者は……」


 すると、大量の足音が聞こえてきた。

 その足音の主は彼女がさっき言っていた。「さっきからこの図書館にいた者」だった。

 その人たちは歩いてこそいるが、その歩きはおぼつかなく、自我は持っていない様子であった。

 その動きを例えるのであれば、ゾンビのような動きである。


「精神を乗っ取ったな……。明日香!!」


 そうだ、前に辻がされたような事を大量の人間に施したのだ。その数は見た感じ100人くらい。


「結構、図書館の利用者って多いんだな」

「母数が多いしね、他にも漫画とかもあるからじゃない?」


 今はそいつらが全員敵対している状況だ。


「いけるか……?女神」

「保障は出来ないけど……」


 そう言いながら、女神は戦闘態勢を取った。

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