第8話 ひーろーめがみ

 今日の現場は理科準備室だ。

 生徒数の多い、梁団扇高校でこんなに人通りの少ない場所を探しだせるのはなかなかなものだ。


「毎回毎回、よくやりますな」

「ストレス発散のためなので」

「僕はそのための道具ですか、ハイハイ」


 こんな余裕ぶってそうな事を言ってはいるが、正直、ガクブル案件だ。


「じゃ!始めましょうか!」


 これがエロいことだったら万歳なのだが。勿論そんなことはない。

 くそう……。見た目はいいのだがなぁ……。


 そう、辻は容姿が良いため、クラス内では孤立しているように見えるが実は裏では男に結構人気があるという背景がある。


 だから、クラスの連中に「そんなに罵られて、うらやましい」と言われることが稀にあるのだが、僕にMの性癖はないため、全然彼らとは共感できない。

 ちなみに先ほどの『彼ら』に連も入っている。


 なら、こっちからお願いしてやる。代わってくれ!


 じきに彼女によって鞭が僕に向けて振り下ろされた。

 痛い。

 しかし、もう慣れたから、初回に比べたらまだマシだ。

 慣れって怖い。


 バシッ!バシッ!と僕の意思とは関係なく彼女は攻撃を加える。


 もう何発目か分からない……。そんな時、あの屋上の時と同じような感じで神々しい障壁が僕の前に登場して僕を守った。


 やっと来たか……。


「弱き下民がピンチな時に現れる!それが理想のヒーローなり!」

「遅かったな……」

「宗太さんがピンチと言える状況になるまで待機してました!」

「後で説教な」


 女神とはいえないような行動をした女神にそう告げると、辻から何やら黒い瘴気のようなものが現れた。


「貴様……。薄々勘づいていたが……。その神々しい気……。そして、さっきの障壁、やはり女神か……」

「そちらも……。やはり悪魔さんですか……。早く彼女から出なさい!」

「嫌だな……」

「別にこの男に憑りついてもいいから」


 ちょっ……。何言ってんのこの人!


「……いや、憑りつくなら美少女がいい」


 悪魔も結構失礼な奴だ。


「なるほど……。じゃあ……。強制的に出すしかないわね……」


*****


 それからはなんだかむごかった。


 やはり、腐っても神だけあって、悪魔との力の差は圧倒的であり、彼女はまず、辻の身体から悪魔の本体をなんかして引っ張り、そこからは完全に動かなくなるまで、殴る蹴るの暴力が続いた。


 一体、どちらが悪魔なんだろう。


 そして、じきに悪魔は消滅した。


「よし!終わった……!」


 彼女は何か、達成感を感じていそうな顔をしていた。


「僕……。もうお前と暮らしたくない」


 いや、それはもとからだったけど、よりいっそうその思いが強くなったというだけだ。


「で……。そこにいる彼女はどうなるの?」


 理科準備室の片隅に置かれている辻の身体について、女神に訊いた。


「その娘からはもう悪魔が身体から抜けたから正気度や凶暴性はもとに戻るはずよ」

「そいつは良かった。しかし、一体、悪魔アレって何だったんだ?」

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