第7話 燃えるめがみ

 女神に少し心当たりがあるようだ。


「心当たりとな?」

「はい!彼女からは少し不穏な感じがします!」

「なんだそれ?」


 彼女の言うからには辻から邪気というものがあるような気がするということらしい。


「邪気ってなんだよ……?」

「あれです!私たち天界人と敵対するいわゆる『悪魔』とか言うやつです!」

「それはテンプレラブコメなのか?」

「まぁ、そうですよぉ!参考元で言うと、『神のみぞ知るセカイ』とか『這いよれニャル子さん』とか」

「その作品群はテンプレラブコメなのか?」


───てかこいつ、結構オタクだな。


ラブコメのテンプレメモ⑨

非科学的な何か。


 これは「?」をつけるべきでは?


「悪魔は私たちの絶対的な敵!おそらく彼女の中に悪魔が憑いているに違いありません!」

「で?どうすんの?」

「彼女から悪魔を取り出し、悪魔をぶっ殺します!そして、彼女を悪魔の魔の手から救い出します!」


 女神は過去一番燃えていた。


「それで、辻はなんか変わるのか?」

「悪魔に憑かれた人間ていうのは正気度(SAN値)が下がり凶暴性が上がることが特徴なんですよ」

「SAN値いうなクトゥルフ神話じゃ、あるまいし」


 これ以上こんな話題を出すのは……。なんかくどいのでこれまでだな。


*****


 凶暴性が増加するということは、全体的な戦闘能力も増加していると考えるのが妥当であろう。そう考えなければ、何故あんなに拷問の時に強くて痛いのか説明がつかない。単純に彼女が僕より強いのであれば、男として結構ショックである。


 その時、嫌な予感がした。悪寒である。


「来る……。辻が……」

「そんな危機察知能力が備わるまでに成長したのね……」

「なんか……。なんか対策はないのか女神!」

「とりあえず、まず、あなたはやられてください」

「え、嫌なんだけど」


 当たり前じゃん。


「まぁ、この際我慢してよ」


 そんな無責任な女神に苛立ちを覚えるも、あの声が聞こえてきて、苛立ちからすぐに恐怖の感情へと変化した。


「宗太さーん」


 来た。


「ほんとに来た。すごいですねー。宗太さん」

「それ、言うとる場合か?」


 辻によって教室の扉が開かれ、辻の身体より先に縄のような長い鞭が教室に入室してきた。

 その縄はまっすぐ僕のもとへと伸びていき、確実に僕の身体を拘束した。

 そして、当然僕は抵抗できずに、連れていかれた。


───頼むぞ……。助けてくれ、女神!


 そのわずかな希望を残し、僕は教室から去った。


*****


 それから彼女はもう慣れた手つきでいつもの『現場』へと向かった。彼女はできるだけ人通りの少ないところを毎日毎日見計らって、そしてそこを現場にする。そのため、尾行しなければ、食い止めることはできないはずだ。女神はしっかりつけてきているだろうか。現在そんな様子は見られないが、本当に大丈夫だろうか。


 あんな女神……。本当に信じてもよいのだろうか。

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