第1話 にゅーがくしき

「……朝か」


 僕は西村宗太にしむらそうた三大欲求の中でも性欲が桁違いに強いだけのただの男子高校生だ。今日から!の男子高校生だ。


 すがすがしく、朝を迎え、時計を確認すると、思いのほか余裕がなかった。


「あ、やべ」


 思わず、そう呟いてしまった。

 さっさと朝の支度を済ませなければ、遅刻してしまう。初日から遅刻では、流石に顔が立たない。


 まだ、朝勃ちしてるのに……。一回抜いておきたかった……。


 僕は朝の慰めを我慢し、学校へと向かった。


*****


 今日から僕が通う高校、私立梁団扇はりうちわ高等学校は生徒が5,000人を超える超マンモス高校である。一学年の人数はおよそ2,000人。校舎もそれに相応しい広さを有しているし、数年前に校舎が立て直されており、綺麗だ。進学実績も申し分ない。


 僕はそんな学校に、今、走って向かっていた。


「テンプレラブコメと言ったな」


 僕は夢で見た女神の言っていたことを思い出した。

 しかし、テンプレラブコメとは一体何なのだ?よくわからない。

 僕はそう思いながら、走ってると曲がり角に突っかかった。


 そこ曲がり角の先には制服を着た少女がいたのだ。


 ───なるほど、テンプレとはそういうことか。


 ラブコメのテンプレメモ①

 登校時にヒロインと衝突。


 しかし、あのおっぱい女神はしくじった。


 彼女が選択したヒロインは自転車通学だったのだ。

 危険を察知した僕は停止を試みるが、走っていては急には止まれない……。


 そして、僕は逢えなく……。


*****


「まさか、入学初日でこんなケガするとは思わなかった……」


 僕は保健室で手当てを受けていた。問題の彼女も来ている。


「でも、自転車ではねられたわりにはそこまでケガしていないように見えるけど……」


 保健の先生がそう言った。


「それは多分、ギャグ補正ですわ」

「ああ……。そうなの……?とにかく、両者とも気を付けてくださいね?」

「「はい……」」


 僕たちはお互いに、そして保健の先生に頭を下げた。


*****


「あの……。そういえば、なんて名前なんですか?」


 彼女は頬を赤らめながら言った。何、その表情、エッチじゃん。


「宗太だよ。西村宗太」

「なるほど……。覚えておきます、またじきに会うかもしれませんし」

「まぁ……。確かに、同じ学校に居たら、三年間に数回は会うかも」


 しかし、この学校は広いから、そうそう会わないだろう、と思った……。

 だが、あの夢の中の女神の言ったことが本当なのだとすれば……。こういう場合……。


『もうすぐ入学式が始まります。新入生は教室に入って待機してください』


 そういえば、まだクラスの確認してなかったな。


「ほんじゃ、また今度!」


 僕はダッシュでその場を離れた。


*****


 学校の玄関には巨大な紙が貼られていた。そこには大量の日本人の名前が書かれていた。

 まぁ、簡単に言うと、ただのクラス表だ。


 この学校のクラスは一クラス40人制であり、約50クラスといったところか。あくまで「約」である。


 僕は6組であった。


「へー6組ですか!結構全体的では前のほうですね」

「うん、そうだねぇ」


………………。


 確か、この学校の入学者で僕にこんな風に女声で話しかける奴はいない。


「誰だ?!」

「私だよ」


 そこには、あの時、夢でみた、おっぱい女神が立っていた。


「な、なんでお前がここに!」

「あ、聞いちゃいます?それ、聞いちゃいます?」


 彼女はいたずらっぽく僕を見つめ、そう言った。


「いや、そんな別に、無理に教えなくても」

「なんですかそれ!ツンデレさんですね!」


 また、彼女は僕をからかった。


「でも、なんで女神さん。うちの高校の制服着てんの?」

「いや、こういう状況なら察してよ」


*****


 何故、こうなった。


 僕はとりあえず、教室に入ったわけだが、


 右隣にはおっぱい女神、左隣にはあの自転車事故少女のいる席になってしまった。


ラブコメのテンプレメモ②

ヒロインと同じクラス&隣の席


 てか、こういうのって、大概ヒロインってのは転校生なんじゃ。ほら、ニセ●イみたいな感じで。


「てか、なんで女神はこの学校入れたの?」

「そんなの、ちゃんと高校受験したからに決まってるからに決まっているじゃないですか!」

「受験の日、来てたんだ」

「はい!願書とかは偽造して、色々やって、できました!」

「ダメだろ、それ」


『もうすぐ入学式が始まります。新入生の皆さんは準備をお願いします』


 というアナウンスが校内にて響き渡った。


*****


 その後、入学式は何事もなく円滑に進んだ。僕にとってはとある一つの事を除いて。


「新入生代表、神目川添付かみめがわてんぷ


 変わった名前だなぁ……。とそう思った。


「はい!」


 体育館中に響き渡る女声。その声は僕がついさっき聞いたものだった。


———あの女神ッ!!!


 基本、この代表は入試での成績で一番の者が務めることになる。

 腐っても神か。


*****


「入試受けたってのは本当だったんだな」

「いえーす」


 彼女はピースをした。


「いや、僕の心臓返してよ」

「なに?キュンってした?」

「違う、ビックリしたんだよ」

「まぁ、そうだよねえ」


 こいつ、いちいちムカつく奴だ。まあ、でもいいか、このおっぱいのおかげでその感情は相殺できている。


「宗太、目がエロい」

「今に始まった事ではないだろう?」


「二人……。仲いいな」


 そんな様子の僕たちに話しかけてきた男は僕の前に座っていた何とも、普通の男子高校生だった。


ラブコメのテンプレメモ③

主人公の恋愛を応援する男友達。


「で、君の名前は?」

「僕の名前は宗太だ。西村宗太」

「ちなみに、俺の名前は飯野連はんのれん。イチャイチャする男女が嫌いだ。恋愛の応援など言語道断!言うなれば、お前らのような奴らが嫌いだぁー!」


………………。


 これ、絶対人選ミスってるだろ。


「思想が極端だったようね……」


 彼女はやっちまったなとでも言いそうなまずい顔をした。


*****


 帰り道


 僕は何故か女神、僕、連のメンツで帰路についていた。


「何で連はついてきてんの?」

「なんか主人公そうなお前と仲良くしていると俺におこぼれが来るかもしれないだろ?」

「僕、そんな奴と友達になりたくないんだけど」


 いわゆる、こいつは嫌な奴か。


「てか、そこの女神も、さっさと帰らないとそろそろ襲うぞ」

「少しくらい理性をおさえなさい!」


 彼女はまた頬を赤らめ、照れた。


───こいつ、もしかしてメインヒロインか?


「おい、宗太、神目川さんは女神なのか?」

「うん、そうだけど、おっぱいでかいよね」

「そこなの?」


 何故、女神がここにいるのか。という疑問に関しては僕も今から聞こうとしていたので、彼からは絶対に言わせない。


「はい、というわけで、なんで、ここにいるの?」

「それ、聞いちゃいますか」


 その話す様子は一番最初の「それ聞いちゃいます」よりテンションが低めである。


「そんなの、あなたがしっかりラブコメのテンプレを踏めているかの確認です」

「何?ラブコメのテンプレだと?」


 女神の言葉に過剰に反応したのは連だった。


「もしかして、その女神にテンプレラブコメを踏むように呪いでもかけられているのか?!」


 なんで、そんな的中できるの?


「そんなんじゃ……。俺、彼女できねーじゃねーか!!」


ラブコメのテンプレメモ④

主人公の男友達、恋愛に関しては蚊帳の外になる。


「そういうもんか?」


 僕は思わず突っ込みをいれた。

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