第17話
あの後……アーロが荷物を持って来てくれた後、ヘルガと二人で小屋に備え付けられているベッドを私が寝やすいように整えてくれた。
そして横になって、三人で話している間にいつの間に寝てしまっていたようで、気付いたら朝で……
「あっ!マリス様おはようございます!」
「……アーロ?」
ベッドから身体を起こすとそこには、起きた私に気付いて近づいてくるアーロと、武器を持って小屋の入り口を睨むようにして立っているヘルガの姿があった。
「ヘルガ、何をしてるの?」
「マリス様、おはようございます……、これは小屋の中に不審は人物が入って来ないように警戒しているだけなので、お気になさらないでください」
「警戒してるってまさか……、昨日はちゃんと寝たの?」
「えぇ、アーロと4時間毎に夜間の警戒を交代で行っていたので問題ありません……騎士はこういう事にも慣れなければいけませんので」
アーロも夜間の警戒をしてくれたというけれど、大丈夫なのか心配になる。
私と年齢は殆ど変わらないから、夜はしっかりと寝た方がいいと思う。
でも……こればっかりは、従騎士という立場があるから、ヘルガの言うように慣れなければいけない事なのかもしれないから、私があれこれと口を出すのは良くないのかもしれない。
「という事はアーロもあんまり寝れて無いんじゃない?」
「俺はまぁ……、最初の4時間起きた後はずっと寝てたから大丈夫かな、です」
「それならいいけど、あなたは私の専属使用人でもあるのだから、無理はしちゃダメよ?」
「そこは私がしっかりと王都に着いて学園に通うようになってから、しっかりとサポートするように致します」
「ヘルガ、よろしくね?」
ヘルガが学園について来てくれる事を、明確に意思表示してくれた事が嬉しくて、思わず笑みを浮かべてしまう。
その姿を見て、釣られたように笑う彼女の姿を見て、あぁこの人もアーロと同じように信頼がおける人なんだと実感する。
「えぇ……なので、私はリバスト護衛騎士隊長に王都に着いてもマリス様に同行したいう旨を伝えて来ようと思うので、しばし失礼してもよろしいでしょうか?」
「構わないけれど、リバストは帰って来ているの?」
「昨日のあの醜い豚の死体を処理するだけなら、昨晩中にはお戻りになられていると思います」
「……分かったわ、けどなるべく早く帰って来てね?」
「承知いたしました、アーロ、私がいない間しっかりとマリス様をお守りするように」
ヘルガの言葉を聞いたアーロが胸に手を当てるような仕草をすると
「了解致しました!マリス様の事はこの命を賭してでもお守りする、いえ、します!」
少しだけ言い直しながらも精一杯に、まだ従騎士だと言うのに騎士のように頑張って振る舞う姿を見て少しだけ微笑ましい気持ちになる。
ヘルガも同じ気持ちなのか、口元に小さな笑みを浮かべるとアーロに近づいてゆっくりと頭を撫でて
「えぇ、頑張りなさい……けど、あなたはまだ騎士ではなく従騎士よ、命を賭しての行動よりも生きてマリス様と共に生きる方法を考えなさい、護衛の役割は護衛対象の命を守る事だけれど、あなたが亡くなる事で悲しむ人もいるんだから」
「あ、は……はい」
「だからそうやって気負うよりも、気楽にお喋りでもしながら待ってなさい」
そう言葉にした後、ヘルガが小屋を出て行き二人きりになる。
それにしても命を賭してか……死に戻り前のアーロの行動を考えると、本当に自分の身を犠牲にしてでも守ろうとするだろうし、出来れば彼にはそんな事をして欲しくない。
ヘルガが言うように、アーロが亡くなったら彼の母親であるステラが悲しむし、それ以上に私が嫌だ。
我が儘かもしれないけれど、私の近くにいてくれて……死に戻りに関する事情を理解をしてくれる人には生きていて欲しいと思う。
「いやぁ……やっぱり、ヘルガさんってかっこいいよなぁ」
「……え?」
「ほら、俺と同じ平民の出なのに、立派な騎士としての立ち振る舞いや、従騎士に対する優しい態度、ほんっと憧れるって言うか……、あっ!憧れます!」
「そうね、それに、武器と魔法を合わせた戦い方も凄い上手かったわ」
「……ん?マリス様、何時ヘルガが戦ってるところを見たんだ……ですか?」
アーロが不思議な顔をして、私の方を見た後……暫くして納得したような表情を浮かべてゆっくりと頷く。
「死に戻り前に見たとか?」
「そうね、今日の朝は天気が良いし、外の新鮮な空気を吸いながら紅茶を楽しみたいわ」
「いきなり訳が分からない事を言う辺り、そうなんだな……です」
「分かってくれて嬉しいわ、アーロ……何があったのか詳しく話したいから、あなたが持って来てくれた私の荷物の中から魔導書を取って来てもらえる?」
「確か、これを持ってると死に戻りに関する話が聞けるんだったよな……」
私の指示に従い、アーロが荷物の中から魔導書を取り出して戻って来るまでの間に、小屋に備え付けられている硬い粗末な椅子に座る。
まずは何から話そうか、どう伝えればいいのか……色々と私なりに考えてから、対面に座った彼にあの時の事を伝えるのだった。
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