第6話

 ……国が簡単に滅びるのは良くないと思います。

大人しくして引きこもっていれば前回とは違う結果になるかもって思いましたけど、実際にはそんな事何て無くて、他国からの侵略を受けた際に何を思ったのか。


『話し合えば彼らは侵略を止めてくれる筈、武器を持たずに彼らの前に出てまずは友好関係を築こう』


 相手は侵略しに来てるのに何でそんな発想に至れたのか。

唯一それに対して危機感を覚えたのは、以前の人生で婚約関係になった王子だけで……そんな彼も頭を冷やす為に自室に監禁されてしまい。

更に話し合いに行った国の重鎮達は、一方的に殺され首だけが敵国の使いの兵達により送り返されその際に王族達が殺害される。

後は混乱した国内を攻め落とすだけの簡単な作業です。

そして今は三週目の人生で……ぼんやりしていた意識が戻って来たら目の前にはお父様がいて……


「君は今……何週目だい?何回やり直した?そして私はこれを何回君に聞いたのか答えてくれるかい?」

「……は、え?私戻って来たんですの?」

「ん……?戻って来た?マリス、君はもしかして未来の何処かで死んでここに戻って来たのかい?」


 お父様が驚いたような顔をして私を見る。

二週目では落ち着いて話してくれたのにどうしたのかしら……


「えぇ、たった今ここに戻って来ましたわ……、お父様?」

「え、あぁ、すまないね……実際に戻って来たのを見たのはこれが初めてだから、何て言えばいいのか」

「……あれ?でもお父様も同じ経験をした事があるのでしょう?」

「私が経験したのは……、妻を殺された時と娘であるダートを探して森の奥地に入り魔物に喰い殺された際の二回だからね、そこまで多くは無いんだよ」

「……お母様が殺されたってどういう事ですの?それにやり直しに関しては余り人に言わない方がいいってお父様言いましたわよね?」


 お父様が経験したやり直しは2回……そして私は3回、つまり何時の間にかお父様よりも年上の娘になってしまったみたい。

それは何だか複雑で、両親が私よりも年下っていう事実を自覚するとどう接すればいいのか分からなくなりそう。


「前の私はそこまで話したのか……、これに関してはマリスの事を信用しているからね、その顔は少なからず私よりも人生をやり直しているのだろう?」

「いえ……まだ三週目ですわお父様」

「三週目でその落ち着き……マリスのお婆様も人生を二桁以上やり直したらしいけど私にはそんな事出来なかったよ」

「そんな事ってどういう事ですの?」

「なるほど、マリスはまだその考えに至ってないみたいで安心したよ、出来れば私のように臆病であって欲しい」


 臆病であって欲しいと言われても何を伝えたいのか分からなくて、頭の中に疑問符しか浮かばない。

私のお婆様は今はもう亡くなってしまって会う事は出来ないけど、人生を二桁以上やり直したという事は、もしかして自発的にやり直しをしていたという事なのかも。

もしそうならどうやって?死なないとやり直せないの……に?


「お婆様はもしかして、自ら命を絶ってやり直しをしてらしたの?」

「……」

「お父様?」

「……そうだ、あの人は自分の意にそぐわない状況になる度に自ら命を絶ち、様々な面で私達の未来を守ってくれていたんだよ」

「何でお父様はそれを知っていてやろうとしなかったのですか?」


 お婆様のその行動は凄い理に適っていると思う。

何度もやり直せば自分の望む未来を創る事が出来るし、何よりもそれが一族の為なら必要な犠牲だ。

私も多分、お婆様と同じ立場なら間違いなく同じ手段を選ぶ。

だって……そうする事で愛する人達を守れて、更には私が魔王になって世界の敵になるような事も無い。

それに……二度とあんな辛い思いをしたくないもの。


「……私には自分を傷つける何て怖い事が出来なかったんだよ、そうする事でやり直せると分かっていても、私が去った後の時間軸はどうなる?残された妻は?、もしかしたら今の人生で娘が、ダートが帰って来るかもしれないしそうしたら、妻とダート、そしてマリスの四人で幸せな時間を過ごせるのかも、そう考えたら命を絶つ事が恐ろしくてね」

「お父様……」

「マリスもそんな私を、ピュガトワール家の当主として相応しくないと君のお婆様のように軽蔑の眼差しを向けるかい?」

「私はそんな事をしませんわ、だってそのおかげで今私が産まれてここにいるのですもの、感謝はすれど蔑むような事は決して致しませんわ」

「……ありがとうマリス、君のおかげで少しだけ気持ちが楽になったような気がするよ」


 そう言って穏やかに笑うお父様を見て安心する。

魔王になってしまった時は不幸にしてしまったし、前回も私の行動のせいで滅びの運命になってしまった。

出来れば今回はお父様を安心させてあげたいし、やり直しの事を知らないお母様の事も大事にしたい。

なら今の私に出来る事はなんだろう、そう思うと出る答えは一つで二人を安心させる為に大きくなったら学園に行って格式にあった婿養子を家に迎え入れよう。

……本当は王子と一緒になりたいけど、私と関わるとまた魔王の頃と同じ運命になる筈。

再び彼を殺してしまう位なら、違う方面で支えればいいのだから。

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