猫が集まる喫茶店

関ケ原 しらす

第1話 いつもの朝

『にゃ〜』『みゃ〜』色んな猫の声が今日も起こしに来た。

毎朝決まった時間に起こしてくるのだ。癒される目覚ましになっている。

「よくねた...」猫山綾乃ねこやまあやのは欠伸混じりに呟き、起き上がった。

布団を畳み、窓側にかけている制服を取るとサッと腕を通し、ドアの前の姿見で服装を整えた。一通り確認すると、そばにある通学かばんを持ち部屋を後にした。


◇◇◇◇


廊下にでると、コンスープの甘い香りが漂っていた。綾乃は頬を緩めると、洗面所に行き、顔を洗い、歯を磨き、肩より少し長く黒い髪を解いた。

身支度が終わると、居間に顔を出した。

「おはよう。綾斗兄ちゃん」と兄の猫山 綾人ねこやま あやとに挨拶をした。

台所で朝食の準備をしていた綾人は「おはよう。」と振り返り綾乃に優しく微笑んだ。

綾乃は冷蔵庫からドレッシングとオレンジジュースを出した。

「今日は、私が神社の掃除だね。」綾乃は手帳を確認した。「そうだね。学校帰ってからでもいいよ。それか、俺が代わりにするよ」綾人は優しく綾乃に微笑んだ。 「いや、私がするよ。いつも朝にしてるし」「ありがとう。」綾人がお礼を言うと綾乃は可笑しそうに笑った。

笑い始めた綾乃を綾人は不思議そうに見つめた。

「なんか、綾人兄ちゃん東京行ってから変わったよね」「そうかな?」綾人は首を傾げた。

綾乃は一息入れると「綾人兄ちゃんは本当に良かったの?東京へ出たのに…」綾乃が目を伏せると綾人は少し笑い綾乃の頭を撫でた。「いいんだよ。調理師免許だって取ったし、東京で修行してから島に戻ろうと思ったから」


ーー相変わらず優しい


綾乃は涙ぐんだ。「朝から泣くのはナシ。俺は自分の意思でここ、猫島に帰って来たかったんだ。それは本当」綾人の優しい言葉に綾乃は少し頷いた。

「暗い話はナシ。今日から祭りの企画があるんだろ?」綾人はサラリと話題を変えた。

「うん。神社の宴会場で話し合い」「そっか。差し入れにサンドウィッチ持っていく。甘いヤツの方がいいよな?」「うん。ちょうどおやつの時間の頃に話し合い」「楽しみに待ってて。」綾人は明るく綾乃に微笑んだ。


◇◇◇◇


「今日もいい天気だね」綾乃は外に出て背伸びをした。

ちなみに、綾乃の綾人が住んでいる家の隣に喫茶店があるのだ。

綾乃と綾人の亡き祖父母と両親が経営していたのを今は2人で守っている。

この島では猫を目当てと海水浴、夏に開催される祭りで観光客が沢山来るのだ。

なので、この喫茶店も混みやすい。

もう1つの理由が猫が1番集まるところでもあるからだ。

少しすると、綾乃の足に「みゃー」と猫が擦り寄ってきた。「餌かな?ちゃんとあるよ」綾乃は物置から餌を取り出すと5つほど並んでいるお皿に餌を入れた。

すると、続々と猫がやってきた。

その時「綾乃、行ってらっしゃい。帰りに喫茶店寄ってサンドウィッチだけ取り来い」と綾人が遅れて家から出た。「わかった。行ってきます」綾乃は綾人に手を振った。


◇◇◇◇


少しし、猫島の守り神の神社。

あるお話により、この神社では神と妖が祀られていた。

綾乃は神社の前まで来ると手を合わせ


ーーおはようございます。今日は私がお掃除させてもらいます


と心の中で言い、神社の中へ入っていった。


◇◇◇◇


しばらくして綾乃は小走りで教室の中へ入った。

「セーフ。危なかった」綾乃は汗を拭いながら笑った。「本当に、良かったね間に合って」ショートカットの女の子、真礼まあやが笑った。

真礼は島の和菓子店の娘だ。

「朝から神社の掃除って大変だよな」そう言った黒髪の爽やか男子は幼なじみの海斗かいとだ。

海斗は島の酒屋の息子だ。

このクラス全員幼なじみだ。

小中高とクラス替えが無く、ずっと一緒だ。

クラスは10人ほどだ。

ショートカット和菓子店の娘の真礼。

黒髪の爽やか男子。酒屋の息子の海斗。

セミロングの背が高く、果物屋の娘、杏奈あんな

茶髪チャラ系男子で漁業の息子の和真かずま

同じく漁業の息子のメガネ男子陸玖りく

ハーフアップの蕎麦屋の娘、咲良さくら

ノーセットの明るくコンビニと同じくらいか小さなスーパーの息子、春斗はると

タレ目で優しげで、美容室の息子の、りつ

ポニーテールの運動系の農家の娘の優衣ゆい

全員小さい頃からずっと仲良しだ。

そして、祭りを盛り上げてきた仲だ。

「いつもの、宴会場でいいんだよね?」優衣が聞き綾乃は「そうだよ。あ、みんな〜学校終わったらすぐにね!!」と声をかけた。

全員「わかった」と返事した。




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猫が集まる喫茶店 関ケ原 しらす @sirasu915

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