第32話 チキン野郎と戦線布告

ミヒラを退けた東海林達は王都へ帰還した。

十二神獣の一体である兎のアンティラを連れてだ。エミの屋敷でお茶を啜る4人。


「つまり貴女は東海林様の敵ではないんですね?」


「うん…別に戦う気ない…面倒だし…」


お茶を啜るアンティラ。


「あ、美味しい…紅茶…」


また啜る。


「アンティラだっけ?」


「今はティナ…アンティラって嫌いなの…可愛いくない…」


可愛いで判断するんだな。


「じゃあティナ。お前達十二神獣の目的はなんだ?」


「私達十二神獣は…四獣神様に使える十二の獣の化身…」


「それって四聖獣か?」


「当たり」


「四聖獣って何ですの?」


「干支達が使えるそれ以上の強い神獣だよ」


四聖獣っていや俺の世界でも有名だ。

東西南北を守る神の獣でそれぞれ、青龍、朱雀、玄武、白虎だ。干支はその獣達に使える言わば僕だ。


「干支の宝珠を取り返して秩序を取り戻す…それが四聖獣様達の願い…特に朱雀様は強く願っている…でも朱雀様は過激で乱暴な頑固者…」


「随分勝手な奴だな」


「仕方ない…500年も神が決まらず国もいつまでも支持者が決まらず…ずっと争っていたから…人間は愚かってずっと思ってる」


確か、この世界はその年の干支の国が方針を決めて秩序を守って来たんだよな。

しかし、ある日酉年の神が理由を告げず逃げてしまい以来年が変わっても干支は変わらずずっと酉年の国が言わばリーダーを明け渡さず居座っておりそれで戦争をずっとしていたってあの鼠はそう言っていたんだよ。


「でもレグは…理由も無くそんな事は絶対にしない…その何かが干支の宝珠を狙っていたから身を隠したと私は思ってる…」


「貴女は神・ドゥーラ様が大好きだったんですね」


「うん…でもライクでね…私は兎だから…」


だろうな。鶏と兎なんて普通に無理だわ。


「エミリア様!」


血相を変えて飛び込んでくるメイドのアンジュ。


「どうしたのアンジュ?」


「大変です!これを見て下さい!」


アンジュは水晶玉を持ち出して机に置いた。

やがて、水晶玉に何かが浮かんできた。


浮かんできたのは巨大な赤い火の鳥だ。


「朱雀…さま…」


「こいつが!?」


水晶玉に映っているのは四聖獣の朱雀だった。


「この水晶玉だけではありません!宝珠放送用の水晶玉全てに発信されています!」


「何ですって!?」


「何を言ってんだ?」


「音出します」


トモエは水晶玉の音量を上げる。


「下界の人間達よ、我はデーヴァ十二神の頂点に立つ四聖獣が一体、朱雀である」


朱雀が水晶玉から飛び出した。


これは映像だ!


「我らが下僕、神・ドゥーラ・レグホンが愚かにも帰還した。だが、神・ドゥーラは姿を表さず奪った干支の宝珠を変換すらしない。このままでは、500年前の愚かな覇権争いを再び繰り返してしまう。そこで、我らに提案がある」


朱雀は喋り続ける。


「報告では神・ドゥーラは滑稽な着ぐるみに姿を変えシンドゥーラ国に潜伏している様だ、そこで今年の神並びに星の親権は神・ドゥーラから宝珠を奪いその国を降伏させた国に与える事を約束しよう!」


「「「「「!?」」」」」」


東海林達は息を呑む。


それって…戦争を仕掛けるって事だよな…


「我が配下達も諸君らの国に見限し力を貸そう。戦え!そして干支の宝珠を取り戻し、自らの国こそが覇権を勝ち取とりたくば神・ドゥーラを纏いし異世界の小僧を倒すのだ!」


朱雀はそう言うと映像を切ると姿を消した。


「そ、そんな…」


「これって…」


「戦争宣言だよな…」


おいおい…どうなっちまうんだよ!?

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