第27話 チキン野郎と脳筋虎

クエストを受注して森までやって来た東海林達…しかし、その討伐魔物は既に小柄でウサ耳頭巾の斧を構えた少女に駆逐されていた。


「あ、貴女がウルフを討伐したんですの!?」


「討伐?…あ、うん…倒した…」


何だこいつ?天然か??


「あのさ、俺たち依頼を受けて此処に来たんだぞ。なのに横取りか?」


「横取り?」


「師匠のクエストですよ!ウルフ達を駆除するって依頼を貴女が横取りしたから!」


「…?」


キョトンとするウサ耳少女。


「あの…話通じてます?」


「ウルフ達邪魔だった…それだけ」


え…まさかたまたま居合わせて邪魔だから倒しただけなのか?

ていうか、ざっくり200匹は居るぞ。この数を1人で倒したのか!?


「貴女がウルフの群れを倒したんですのよね?」


「うん…」


「邪魔だから?」



「うん…」


「依頼の横取りはない?」


「うん…」


「お前何者?」


「うん…アン…ティ…ティナ…」


「ティナさん?」


「うん…私はティナ。ただの旅人」


いや嘘だろこれ。


「嘘だろ。それ…」


ティナはそっぽむいた。


「つか依頼どうするよ?」


「こうなると…」


「依頼失敗ですね」


レベル上げどころか報酬も無しかよ。


「悪い事した…これあげる」


ティナは懐から皮袋を取り出すと東海林に投げた。


「おっと!何だこれ?」


皮袋を開ける中には金貨がぎっしりと入っていた。


「オイ!何だよこの金は!?」


「足りない?」


「じゃなくて、受け取れるか!こんな大金!」


賄賂よりタチが悪いぞ。見た感じ金貨5000枚くらいは入ってるぞ!?

何でこんな馬鹿みたいな金額をこんな子供が。


「私…食べ物がいい…硬い…いらない」


「いやそう言う問題じゃない!」


「て言うかどうしたんですか!この大金!?」


「髭の人達がくれた」


「髭の人達って…おい…まさかそいつら武器構えたか?」


「うん…人探しを手伝ってくれるって言うのに…お尻触ったから半殺しにしたらくれた」


盗賊からの身代金かよ!?どんだけ強いんだこの子供。


「お前一体何しにこんな所にいるんだ?」


「人探し」


「人探し?」


「うん、臭いするから来たけど…消えちゃった…」


「消えちゃって。貴女花の臭いでも辿って来たんですの?この花畑の?」


「ううん。友達の臭いが消えた…仲良しの友達だったからずっと探してた…」


急に潮らしくなるティナ。

その友達を探してこんな辺境まで来たのか?


「その友達ってどんな奴だ?」


「鶏…」


鶏だぁ!?


「使い魔ですか?」


「友達…レグ…を探してる」


「レグ?それが貴女の使い魔の名前ですの?」


「うん…」


鶏の使い魔?コカトリスとかバジリスクみたいな魔物か?そんなヤバそうなのを使い魔にする物好きが他にいたなんてな。


「なあ、その友達って…」


ドッカーンと凄い音が鳴り響き木が薙ぎ払われ巨大な虎の魔物が飛び出した。


「ひい!」


東海林達は慌てて避けた。


「たく、街はこっちじゃ無いのか?まーた方向間違えたか…我は…」


また変なの来た!?

デカい虎の魔物って事は…こいつまさか…!?


「お前…干支か?」


「ん?我を干支と呼ぶか?貴様何奴だ?」


「こっちのセリフですわ!」


「貴方様はまさかミヒラの!?」


「如何にも。我はデーヴァ・十二神が寅の刻、剛を司る神にしてミヒラ国の守護獣神。剛力の虎!ミヒラ・神・タイガーだ!!」

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