第10話 チキン野郎 冒険者登録する

宿屋で朝食を食べる東海林勇気。

侯爵から謝礼でもらった金貨のおかげでしばらくは宿屋を拠点に出来ている。

金貨は1枚が約銅貨100枚分で10万相当、銀貨は1枚1万円相当、銅貨は10枚で約1000円ってところか。

東海林は銀貨を200枚も貰った。

しかし、金貨なんてじゃらじゃら持ってりゃ悪党に狙われてしまう上に大金だから落ち着きゃしない。

おまけにこれじゃ完全にニートだからだ。


「東海林様。私と婚約したのに何故働き口を探すんですか?」


「男としてカッコ悪い以外の何者でもないからな…かといって手に職がある訳じゃないしな」


「東海林殿、でしたら冒険者をやられてみたら?」


「冒険者?」


異世界もののお決まりパターンだなまた…


「確かに冒険者なら日払いでクエストをこなせば大金も稼げますからね!」


「東海林殿は強いですしピッタリかと!」


アンは強く勧める。


「そうだな。帰り方も探したいし旅費を稼ぐ為にその冒険者をやってみるか」


東海林は食事を済ませるとエミとアンの案内で王都にある冒険者ギルドへやって来た。

ここで冒険者登録が出来るのだ。


ますますゲームみたいな上にお決まりのパターンだな。もう慣れたけど。


「ここが冒険者ギルド権酒場の3頭獣です」


「3頭獣?」


この看板の頭が3つの犬の事か?これケルベロスだよな多分…


「とにかく中へ入りましょう。このギルドは我が家は顔が効きますから」


「マジかよ」


流石侯爵令嬢だな。


東海林達は冒険者ギルド入る。


中は昔の西部劇の酒場みたいな感じで木のジョッキで皆酒盛りをしていた。


「こうして見るとマジで異世界だな」


「こんにちはイチカさん」


「これはエミリア様。いつもありがとうございます。」


「いえいえ」


「今日はどんなご用ですか?」


「はい、こちらの東海林様が冒険者に登録したいと」


エミは東海林を紹介する。

とりあえず頷く東海林。


「東海林勇気です」


「受付のイチカ・ベルリンです。冒険者登録でよろしいですか?」


「はい」


「では、此方に名前と職業を書いて此方の四角い枠に血ではんを押してください。その前に登録料銀貨1枚です」


「イチカさん、この人は私の婚約者です。ですからサービスして下さい」


「え、エミリア様の婚約者ですかっ!?」


受付のイチカが声を上げた。

すると周りの視線が東海林に一気に注がれた。


げ、注目されてる…エミの奴余計な事を…こういうのめんどくさい上に決まって誰か絡んでくるだろ。


「おい貴様!」


ホラ来た…


振り向くといかにもキザそうな金髪の男とゴツい男と舎弟みたいな小者みたいな奴が案の定絡んできた。


「僕のエミリアと婚約だと?どういう事だ」


「マルス!」


「これはグリンゴル卿のご子息マルス様、何故この様な場所に?」


「メイドの貴様が問う権利があると思うか?失せろ!」


「失礼しました」


うわ、嫌な奴…後ろのゴツい奴怖いな…関わりたく無い。


「あの誰ですか?」


「グリンゴル伯爵のご子息、マルス様です。エミ様の見合いの1人でしたの」


「あぁ、振られたのか…」


「貴様、エミリアに馴れ馴れしいぞ、どこの出身だ?」


「アンタ風に言えば平民だよ」


こう言う場合は控えめに言うべきだな。


「平民だと!?貴様どんな卑怯な手でエミリアを騙くらかした!」


「は?」


「エミリアは侯爵令嬢だ。貴様の様な何処の馬の骨が釣り合う相手ではない!早々に消え失せろ!」


「いや、別に俺はエミの婚約者になりたくてなった訳では…」


「エミだぁっ!!貴様馴れ馴れしいにも程があるぞ!」


うわぁ…面倒くさい…


「やめて下さいマルス!」


「エミリア、君は騙されているんだ。こんな馬鹿面の何処がいいんだ!」


馬鹿面とは失礼だな。お前の顔だって真っ先にやられそうな残念イケメン面だろう。


「東海林様は私の命の恩人です!私が処女を捧げると誓った運命の人ですわ!」


空気が凍りついた。


「貴様っ!」


馬鹿野郎!このお花畑お嬢様!!


マルスは手袋を脱ぎ東海林の顔に当てた。


「いて、何だよ?」


「決闘だっ!貴様と私の!」


「はぁっ!?」


決闘!?何回お決まりのパターンが始まるんだよ。






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