第8話 チキン野郎 婿にされる

慌てて外へ飛び出した東海林達。


「何事だ!?」


「魔物です!魔物が屋敷の庭から現れました!」


「な、何だと!?」


侯爵は声を上げた。

東海林達は庭へ回ると底にいたのは巨大な象みたいな魔物が庭で暴れ回り使用人達を追い回していた。


「な、何だありゃ!?」


おいおい本物のモンスターまで居るのかよ!?流石異世界。


「侯爵様、アレは南方に生息しているジャイアントエレファントです!」


「ジャイアントエレファントだと!?何故南方の魔物がこんな所におるのだ!?」


「恐らく誰かが召喚しこの屋敷に放ったとしたか…」


「くっ、新手の嫌がらせか!!急ぎ兵を出せ王都へ絶対に奴を逃すなよ!」


「ですが、侯爵様。あんな巨体では流石に!」


「とにかく止めるんだ!アンよ。君も魔法で加勢を頼む!」


「それには及びません侯爵様。」


「何だと?」


「はい、こちらの東海林様が見事に魔物を倒すと意気込んでおられます」


「はっ!?」


「そうですわ!お父様。東海林様があの魔物を倒して見せますわ!」


おいおいおい!?


「何とあの魔物を倒せると?」


「はい!東海林様はそれはもう強いので!」


だから勘違いだって!それはチキンスーツで俺じゃない。


「東海林殿」


「は、はい」


「見事倒した暁には、娘との此方からお願いすると約束しよう」


「いっ!?」


ちょい待て…この流れは…


「では、頼んだぞ!」


ひいぃぃっ!もういい加減にしてくれ!

このお決まりパターンループわよ!!!


「いや、俺はモンスターなんか…」


「東海林様ファイト!」


そのキラキラ眼差しはやめてくれ。


「くそ!こうなりゃもうヤケクソだ!」


東海林はそう言うとチキンスーツを身に纏う。


「鶏?」


「アレが東海林様の勝負服です!」


東海林はヤケクソに巨大なジャイアントエレファントに突っ込んで行く。

ジャイアントエレファントは声を上げながら東海林に突っ込んでくる。


「誰だか知らんが…もういい加減にしろっ!!」


東海林は叫びながらジャイアントエレファントの懐に飛び込みそのまま蹴り上げる。


「チキンキーック!」


鶏の足のエネルギーがジャイアントエレファントの腹に直撃した。

ジャイアントエレファントは空の彼方へ蹴っ飛ばされ何処かへと吹っ飛ばされて行った。


周りの者達は皆唖然とした。

ただの人間が凶暴なジャイアントエレファントを飛び蹴りで空の彼方へ蹴っ飛ばしてしまったんだからそりゃ唖然とするわ。


東海林は着地に失敗し尻餅をつく。


「い、痛い…」


ゾウを蹴り上げた足は痛くも痒くもないのに。マジで何なんだこの鶏スーツ。

東海林は鶏の被り物だけ外す。


「東海林様!」


「え?」


エミは東海林に抱きつくと倒れた。


「エミリアさん?」


「エミですわ!東海林様!」


「あの離れてくれない?」


「私決めましたわ!東海林様、私と正式に結婚し侯爵家に入って下さいませ!」


「いっ!?」


「おめでとうございます東海林殿。いえ、次期当主様!」


「ちょ!!」


話が勝手に進んでるし。


「東海林殿」


「あの侯爵様、これには色々ありまして!?」


「私の事は、お義父さんと呼びなさい!」


何でだよっ!!!


「婿入りおめでとう。我が息子よ!」


「い、嫌だ…」


「東海林様。さぁ、婚約の儀を執り行い、早速…」


このキーワードはまさかな…


「ザ・〇〇ですわ!」


「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」


東海林は叫びながら逃げ出した。


「東海林様!」


「嫌だ嫌だ嫌だ!後が怖いから絶対に嫌だ!!」


こうして異世界でいきなり侯爵家の婿?に迎え入れられ、結局強引に交わされてしまい…


「東海林様、愛してますわ!」


「だから嫌だ!誤解だぁ!その恋は絶対勘違いなんだってばぁーー!」


今に至るのだ。



家に帰りたい…


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