第6話 チキン野郎 王都へ飛ぶ
「何故…こうなった…」
東海林勇気は心臓バクバクで恐怖でおかしくなりそうだ。
だって目の前に居るのは…侯爵だからだ。
「お父様。こちら東海林勇気様。私の恋人で結婚相手ですわ」
「結婚相手だと?」
凄い威圧感で睨まれてるよ!!怖い怖い凄い怖い!今すぐ逃げ出したい。
何故こうなったかと言うとだ、盗賊達を避けた後の話だ。
「結婚相手のフリをしろと?」
「はい、不躾なお願いなのは分かっています。でも、馬車はこんな上に今から王都の知り合いの元へは尋ねられません。お願い致します東海林さん」
頭を下げるエミ。
「急にそんな事を言われてもな…訳は聞かせてくれるんですか?」
「はい、それは私から。エミリア様は近々婚約者候補の方々とお見合いがあるのです。」
あぁ〜お決まりのパターンか…
「どれも好みのタイプでない上にまだ14歳のエミリア様には歳が離れすぎてまして」
14歳かよ!?思いっきりまだ子供じゃないか。確かに昔は速いウチに嫁に出されるって言うのが貴族じゃ当たり前だって本で読んだ事はあるけど、この異世界も時系列的にはどの辺りに該当するんだ?
「つまり、知らないおっさん達の嫁にはなりたくないから、勢い余って嘘をついた上にその婚約者を親に見せる日が今日で頼める人に当たろうとして盗賊に襲われたと…」
「大当たりです」
「東海林様は聡明ですね」
うわぁ…嫌だな、お決まりのパターンかよまた…
「そこまで察しがついたのならお願い致します東海林殿。エミリア様のお力になって下さい!それなりのお礼は約束致しますから!」
「お願い致します。東海林様!」
必死に頭を下げられる。
うーん…正直、凄い嫌だ…相手は侯爵だろ。
侯爵って爵位で2.3番目の位で王様の子供と結婚すら許されてる程の貴族だろ。
このエミとか言う子はその令嬢…絶対後で面倒ごとになりかねん。
「あの、俺は…う…」
うるうると涙を溜めながら必死に訴えるエミ。
駄目だ…絶対これは断れない…
「分かりました。やりますよ」
「本当ですか!ありがとうございます東海林様!」
「良かったですねエミリア様!」
「うん!」
まあ、かなり可愛い子だし悪い気はしないか。
「では、そうと決まれば服を着替えないといけませんね」
「そうね。アンお願い!」
「畏まりました」
アンはそう言うと空間に穴を作り手を入れた。中から高そうなドレスとタキシードと変えのメイド服が出て来た。
「えぇ…着替えあったの!?ていうかそれ何!?」
「え、アイテムボックスと言う初歩の魔法ですが。東海林様は使えないんですか?」
「知らない」
マジかよ…そんな魔法があるのかよ…ていうかそんな項目はなかったよな。
東海林はステータス画面を出そうと手を下げるが何も現れない。
「あれ?何も出ない??」
「東海林様。鶏さんをお返ししますわ」
「東海林殿もタキシードへ着替えて下さい」
「は、はあ?」
アレ?もしかして!?
東海林はスーツを着て再びステータス画面を開くと今度はしっかりと見える。
やっぱり。このチキンスーツを着てないと見れないんだな。
東海林勇気
レベル5
レベル上がってるし!?
新スキルアイテムボックスが追加されました。
「あ、あったアイテムボックス」
「何だ使えるんですね!」
ドレスに着替え終えたエミはくすくす笑う。
「お嬢様急がないと旦那様との約束までもう時間がありません」
「でも王様までまだ少し距離があるわよ」
「急いでるんですか?」
「はい、約束までもうそんなには…」
「間に合わないかもしれません」
マジかよ…ん?待てよ…このチキンスーツは飛べるんだよな。もしかしたら…
「あの、もしかしたら間に合うかもしれないよ」
「え、本当ですか!?」
「しかし、どうやって?」
「説明は後。で、王都ってどっち?」
「このまま東へ5キロの方です」
「5キロか、10分位かな」
東海林はそう言うとスーツを着ると頭まですっぽりと被り物を被る。
切れていた両翼の袖は復活していた。どうやら再生機能があるらしいな。
おっとそんな事よりも。
「2人共ちょっと御免なさい」
東海林はそう言うと2人を両肩へ担ぎ立ち上がる。重さは全く感じない。羽みたいに軽いな。
「ちょ、東海林様!?」
「何を?」
「こうするんだよ!!」
東海林はそう言うと大ジャンプし東へ真っ直ぐ物凄い速さで飛んで行く。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「は、速すぎるぞっ!東海林殿!!」
「喋らないで舌噛むから!」
東海林はさらに加速する。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
チキンスーツのチートスキルで無事に約束の10分前に王都へ着き、で、今に至るのだ。
本番はこの後だ…めっちゃ睨まれるよ俺!?
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