第6話 憎悪

 行為中、咲希が「お願いだから中に出さないで……」と懇願してきた。

 俺は咲希の言葉を聞き流しながら、怒りのままに身体を動かす。


 俺が怒りをぶつける度に、咲希は悲痛な声を漏らす。

 辛そうだった。

 けど徐々に悲痛な声から甘い声に変わる。


「いやっ……こんなの嫌だっ……お願いだからもうやめてっ!!」

「……」

「……んっんっ、ねぇお願いっ、お願いだからっ……」

 

 いつも咲希とするときはゴムを着用していた。

 けど今日は生で彼女と一つになった。

 全身に咲希の熱を感じる。

 どんどん俺達の熱が混ざり、一つになる。


「咲希っ、咲希っ」


 本能のままに咲希を貪り、最後は彼女の中で果てた。

 俺の一方的な愛を咲希の中に注いでいく。

 あぁぁっ、最高だっ。


 行為が終わり、咲希が睨んでくる。


「なんで……なんで中に出したの!?」


 リビングに咲希の声が響く。 

 彼女の声には怒りの感情が含まれていた。


「アタシ、中に出さないでって言ったよね?」

「すまんっ……」


 俺の謝罪に咲希は「ちっ……」と舌打ちする。

 怒りを含んだ眸を、俺に向けてきた。


「あなたがしたことレイプだよ、分かってる?」

「……」

「ねぇ聞いてる? 返事ぐらいしてよ」

「……」


 黙り込んでいる俺を見て、再び咲希は「ちっ」と舌打ちする。


「今日のアンタ、まじでうざいっ。もう2度と話しかけないで」

「……」


 咲希は「死ねっ……」と暴言を吐いてから、お風呂場に向かった。

 家全体が静かになる。


「……」


 何やってんだ、俺は……。

 咲希の言う通り、あんなのレイプと変わらないぞっ。

 自分の行動に嫌悪感を覚える。

 けど、心はスッキリしていた。


 行為中、咲希は泣いていた。

 苦しそうだった。


 苦しんでいる咲希を見るのが楽しくて仕方なかった。

 俺は無意識のうちに、復讐してたのかもしれない。


 もっと咲希の苦しんだ姿が見たい。

 あの女を地獄に送りたい。


 どんどん膨張する憎悪。


 どうする?

 今から咲希を殺すか?

 いや、けどそんなことしたら俺が社会的に終わる……。

 それは困るな。

 

 クソっ、どうすればいいんだっ。

 どうすれば咲希を地獄に落とせるっ……。


「咲希っ……咲希っ……咲希っ……」

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