第5話 最低な行為

 仕事が終わり、自宅に帰ってきた。

 「ただいま」と言っても返事がない。

 家の中は静寂に包まれていた。


 どうやら、家には誰もいないようだ。

 

 咲希の奴、どこに行ったんだ?

 まさか、またあの男と会ってるのか……?


 俺以外の男とセックスしている咲希を思い出し、ぎゅっと胸が締め付けられる。

 ヤバいっ、また吐きそう……。


 突然の吐き気に、俺は慌ててトイレに駆け込む。


「うえぇぇ……」


 今日食べた物を大便器に吐き出す。

 全て吐き出し、少しだけ気分が良くなった。


 最近、吐いてばっかりだな……。

 情けない。


 0時頃、やっと咲希が帰ってきた。

 俺は玄関に移動し、咲希に話しかける。

  

「おかえり」

「うん……ただいま」

「……」


 咲希の身体からタバコの臭いがした。

 咲希はタバコを吸わない。

 俺もタバコは吸わない。


 にも拘らず、彼女の身体からタバコの臭いが漂ってくる。


 よく観察すると、咲希の服が少しだけ乱れていた。 

 おそらく、今日も俺以外の男と肌を重ねたのだろう。


 殴りたいっ、今すぐ咲希を殴り殺したい。

 俺は深呼吸をして怒りを抑え込む。


 耐えろっ、今は耐えるんだっ……。


「咲希……今日、どこ行ってたんだ?」

「友達と居酒屋で飲んでた。はしゃぎすぎて疲れたよ。アタシ、もう寝るね」


 はしゃぎすぎて疲れた?

 違うだろ?

 本当はあの男とセックスしすぎて疲れただけだろ?


 咲希とあの男が愛し合っているところを想像して、身体の一部に血が昇る。

 

 クソっ、なんで俺は興奮してるんだっ……。


 この状況で興奮してる自分に絶望する。

 自分のことが嫌いになりそうだ。


 ダメだっ、興奮が収まらない……。

 徐々に理性の皮が剥がれ落ち、本能が剥き出しになる。


 理性を失った俺は、気づいたらとんでもないことを口にしていた。


「なぁ紗希……久しぶりにシないか?」

「……」


 俺の提案に紗希は目を丸くする。

 意外そうだった。


「珍しいね、あなたから誘ってくるなんて。溜まってるの?」

「まぁな……」

「ふーん、そうなんだ。けどごめん、今日は無理。また今度ね」

「……」


 なんでだよ、なんでセックスさせてくれないんだよ。

 他の男とはセックスしたくせに。

 なんで俺はダメなんだよっ。


 クソっ、クソっ、クソっ。


 強烈な怒りが湧き上がる。

 許さないっ、絶対許さないっ。


 怒り狂った俺は紗希に近づき、強引に唇を奪った。

 

「んっ!? んっんっ……」


 急にキスされて紗希は目を見開く。

 困惑と驚きを含んだ表情を浮かべていた。


「ちょ、ちょっと何してんの……? ねぇ聞いてる? んっんっ!? んっ……」


 俺とのキスを阻止するために抵抗してくる。

 その抵抗を無力化し、何度も紗希の唇を貪る。


「んっんっ……ちゅっ、ちゅっ」


 咲希の唇を楽しみながら胸に手を伸ばす。

 柔らかい感触が俺の手を受け止めてくれた。


 相変わらず、咲希の胸は柔らかいな。

 

 俺に胸を揉まれて咲希は悲痛な表情を浮かべる。

 なんでそんな顔するんだよっ。

 俺に胸揉まれるのそんなに嫌なのか?


 つか、俺は何してんだ?

 咲希が嫌がってんのに、どうして胸揉んでるんだよ?

 俺がやってることレイプと変わらないぞ……?


「んっんっ……ちゅっ」


 何度もキスしていた俺達は、そっと唇を離す。

 俺達の唇の間に唾液の糸が引いていた。


「ねぇ今日のあなたおかしいよ……?」

「……」

「何かあったの? 話ぐらい聞くよ?」


 強引にキスされたのに、咲希は俺に優しさを向けてくる。

 相変わらず、咲希は優しいな……。


 なぁ咲希、なんで浮気したんだよ?

 なんで俺のこと裏切ったんだよ?

 なんで浮気したのに、まだ俺に優しさを向けてくるんだよ?

 

 俺、お前の考えてることがわかんないよ……。


「ねぇ本当に何があったの……? アタシにでき――っ!? んっんっ……」


 紗希の言葉を遮るように唇を奪う。

 大人のキスをしながら紗希の服を脱がせる。

 紗希の下着が露わになった。


 大人の雰囲気を醸し出した黒いブラと、お尻が丸見えな黒いTバック。

 派手な下着を見て、チクチクと胸が痛む。


 たぶん、あの男を喜ばせるためにエロい下着を着てるんだろう。


 なんだよ、そのエロい下着は……。

 そのエロい下着着て、俺以外の男とセックスしたのか?


「ねぇお願いっ、お願いだからやめてよっ……んっんっ、きゃっ……」


 下着姿になった紗希を押し倒し、大事なところを攻める。

 俺が攻める度に、紗希は興奮と悲痛が混じった声を上げる。

 

 我慢できなくなった俺は、咲希の下着を横にズラす。

 そして、

 

「紗希、入れるぞ?」

「だ、ダメ……今日はダメだって」

「……」

「え? ちょっと待って。本当に何してんの!? いや、いやっ、嫌だっ……」

「……」


 紗希の言葉を無視して、俺は強引に彼女と一つになった。


 


 

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