第4話 気持ち悪い

 妻の浮気がショックすぎて、今日食べた物を吐き出してしまった。

 食べた物全て吐き出し、ちょっとだけスッキリした。

 心はスッキリしてないけど……。


「浮気か……」


 今思うと、最近の咲希は怪しかった。


 話しかけても上の空だし、

 毎日家に帰ってくるのが遅いし、

 休日はオシャレして出かけるし。

 結婚一年目は家事してくれたけど、最近はサボってばっかりだし。


 アイツ、いつから浮気してるんだ?

 

 なんてこと考えているうちに、自宅に到着していた。

 俺は家の中に入り、玄関を確認する。


 もうあの男の靴はなかった。

 おそらく、家に帰ったんだろう。

 

 玄関で靴を脱いでいると、咲希がこちらに向かってきた。


「おかえり、あなた」

「……」


 俺の顔を見て、咲希は優しい表情を浮かべる。

 いつもの俺は、この優しい顔を見て癒やされていた。

 けど、今日は気持ち悪くて仕方なかった。


 今すぐこの女を殴りたいっ。

 あの綺麗な顔面を殴りまくって、スッキリしたい……。

 

「夜ご飯できてるよ、食べる?」

「いや、いい……もう寝る」


 俺がそう言うと、咲希は目を丸くする。


「え? ご飯いらないの? せっかく作ったのに……」

「ごめんな……また明日食べるよ」

「おっけ、じゃあ冷蔵庫に入れとくね」

「うん、ありがと……」


 俺は部屋着に着替えて、寝室に移動する。

 寝室の中に足を踏み入れた瞬間、強烈な吐き気が押し寄せてくる。

 ヤバいっ、また吐きそう……。


 今日、妻はこの寝室で俺以外の男とセックスしていた。

 妻からするとこの寝室は間男とのヤり部屋なのだ。

 そう思った途端、呼吸が荒くなる。

 パニック状態に陥り、まともに呼吸できない。

 

 このベッドで寝るのは無理だな。

 仕方ない、今日はリビングのソファで寝よう。


 俺はリビングのソファに寝転び、ゆっくりと目を瞑る。

 リビングで寝ている俺を見て、咲希が話しかけてきた。


「ん? なんでソファで寝てんの? ベッドで寝ればいいじゃん」

「ちっ、うっせぇなっ。黙れよっ」


 俺がそう言うと、咲希は目を見開く。

 驚いているようだった。


 やべぇ……。

 イライラしすぎて本音を漏らしてしまった。


「は? なんでキレてんの? 意味分かんないんだけどっ……」


 俺からすると、お前の方が意味わかんねぇよ。

 なんであんな奴と浮気したんだよ……。

 お前はもう俺のこと嫌いなのか?

 

 俺はまだお前のこと好きなのに……。

 

 ああ、そうだよ。

 俺はまだこの女のことが好きだ。

 

 大好きだから彼女の浮気にショックを受けてるんだよ。

 もし愛が冷めていたら、浮気されてもそこまでショックじゃなかっただろうな。

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