第3話 学校

 私、藤原美月が通い始めたこの学校は伝統ある女子校であった。


小学校、中学校は校区分けされた、いわゆる普通の公立高校に通っていた私がなぜこんな清らかな女の園に入ることになったかといえば、それは母親に原因する。


父の転勤先がたまたま母の故郷であり、そこで生まれ育った母の母校がこの学校だったのだ。


伝統ある女子校とはいえ、通っている生徒はお嬢様というよりかは、教育方針や学生時代を過ごすべき環境を選べる財力をもつ親の子どもがほとんどであった。


伝統を重んじる、良き淑女を目指すための集団生活にはもってこいの校風で、言うなれば少しだけ育ちの良い一般的な少女たちの集まりであった。この時代に、家柄や財力による身分社会なんて経験したくない。そんなのドラマや漫画の世界だろうけど。


その点では安心して勉学を謳歌できる場所であることがなによりの救いであった。世間で言われる「青春」は謳歌できないかもしれないけれど。幸い、私にとってそれは無関心の領域で、それこそ創作の世界だと思っていた。実際に、人を好きになったこともないし、恋愛なんて全く分からない。それで良いと思っていた。妙に「青春」について語ってしまったが、それは気にしないでおこう。


 この学校のもう一つの特徴は制服だ。これから毎日身に纏う服は、みんなが憧れるような紺色のブレザーに赤ネクタイ、シンプルなボックスプリーツスカート。問題ない。


むしろそれを着こなす皆はキラキラ眩しすぎるくらいだ。わたしは毎回鏡でちゃんと自分が上手く着れているのかチェックしたいくらいには自信がなかった。


これまでネクタイも結んだことがなかったし、着こなすにはまだまだ時間がかかりそうだ。

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私の太陽 三島佑(みしまゆう) @kamkamlemon

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