第27話 羨望

 しばらく時間をかけて写真を選んだ後は、パソコンの中でアルバム作りが始まった。専用のソフトで写真を取り込み、レイアウトを決めていく。一ページに複数枚の写真が入る時もあれば、見開きで一枚の写真が大きく使われることもあるようだ。



「今回は印刷するからね。今あるデータの編集が終わったら紙も決めるよ」

「今時印刷ですか」

「うん。データより予算がかさむけど、頼む人も多い」



 いい印刷屋さんと知り合いなんだ、と口元を緩めて得意げに笑うジュンである。マウスやキーボードが発する軽い音BGMに、マナカはベッドに寝転がってサーベントでメモアプリを起動した。毎日ではないが、何か思うところがあった時はコツコツと日記を書いている。



 すれ違いざまに見た、カルラの潤んだ瞳を思い出した。「仕方がないんだ」というセブの言葉と、彼の劣等感について。それに対して自分がじんわりと湧き上がる怒りを感じたこと。ジュンの優しい声。目元を乾かした穏やかな地中海の風と、目に焼きついた眩しい青に、違法所持されていた大量の銃。



 ソルブランコでの生活はマナカにとって自分の未熟さを突きつけられるような日々だった。それは自分を正しく認識し直すことであり、そのたびに恥ずかしさからジタバタと手足を動かしたくなってしまうような痛みを伴った。



 つまりは、マナカはセブが羨ましかったのだ。他人の反応など我関せずといった振る舞いをするくせに、自分を頼ってくれる幼馴染がいて、人から認められるような特技と才能がある彼のことが。



 世界は知らないことばかりだった。そんな当たり前の事実が、ただ茫洋とマナカの目の前に広がっていた。



 カルラが帰ってきたのは正午少し前だった。玄関の方で物音がすると、ジュンはマナカに「行ってこい」と目配せをした。



「帰ってきたばっかりで疲れてるかも」

「それでも声くらいかけとくもんだよ。こういう時は」



 そうだろうか。



 マナカは半信半疑で首を傾げながらも、漫画を読んでいたタブレット端末の電源を落として部屋を後にした。階段を下りきったところで、ちょうど居間に入ってきたカルラと鉢合わせた。

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