13-1

2036年 7月 20日 日曜日 07時08分



眠い....ただただ、ひたすらに眠い。

ご飯の味も楽しめないくらいには余裕がない。

気を抜くと顔とお皿が、こんにちはしそう。



昨日は意味不明な内容の日記を見てる最中、睡魔に抗えず寝てしまった。

しかし不幸なことにも、早く寝てしまったということは早く起きてしまうのもまた必然であり、やむない。



04時ごろに目が覚めてから今まで眠れずにいた。

理由は答えなくてもわかるはず、もちろん日記のせい。

起きたてで眠いなか頑張って、目を通せていなかった他の日記を読んだがこれがまた、とんでもない内容が書かれていた。

それゆえかアドレナリンが出てしまい、一気に眠気が飛んでしまったのだ。



そして寝られず、みんなで食事をしている今の時間まで起きていましたとさ。

内容については簡単にまとめると、大規模な地震が起きたとか、枯渇した現燃料に変わる新燃料の開発計画とか、戦争が勃発したとか、物騒なことしか書かれていなかった。



仮にこの内容が本当なら2042年に至るまでの6年間に、これら全ての事件が起きることになる。

地震とかは2000年代に入って以降、地学研究者が今後大きな地震が発生すると言っているから、これに関しては現実味があると思う。

燃料問題も同様の考えだけど戦争についてだけは、にわかには信じがたい。



とはいっても自分は既に小さな戦争を経験しているため、完全に否定しきれないのがまたなんとも。

1つ気になるのは戦争相手が未知の存在ではなく、ロシアだったこと。

現在の日本の状況と照らし合わせれば、相手が未知の存在でないと変な感じがする。

まぁ...これが未来の出来事を書いた、本当のものならだけど。



日記のことはひとまず置いておこう、考えても真偽はわからないし。

考えごとのおかげか寝ぼけた舌に意識が戻ったようだ、この朝食のフルーツサンドイッチ美味しいなあ。

白桃・黄桃・いちご・キウイと4種のフルーツがふんだんに使われていて食感が楽しい。

ただ、ちょっとボリューミーかも?



「今日って、昨日と同じで模擬戦だったよね?またドローン飛ばせるの楽しみかも」



「ふふ。確かに初瀬部さん、昨日は楽しそうだったわね」



「識火さんもやってみる?多分ハマるよ」



「余裕があるなら少し触らせてもらおうかな?」



「はいはい!わたしも触ってみたいかも!」



「思ったんだけど、人のガジェットを他の人が扱えるの??」



「あー、そう言われると知らないや。どのみちこの後に訓練があるし、そのときに試してみればいっか」



模擬戦かぁ...VRで実戦ぽいことができるのはいいと思ったけど、あれは首と肩が疲れる。

できれば長時間の戦闘にならないことを祈りたい。

それとドローンは気になっていたから、時間があれば自分も触らせてもらおう。



そして朝食を済ませ、09時になったため前日と同じように体育館へ行き、訓練の用意を始める。



「おはよう愛星さん」



「渡先生、おはようございます」



なんだか、久しぶりに先生と挨拶をしたような。

そういえば…思い返してみると合同訓練中は渡先生の姿を見かけなかった気がする。



「あの、今日の模擬戦相手はどこの高校ですか?」



「えっと....あー、どこだったかしら?ごめんなさい、ど忘れしちゃった☆」



「先生、もうお年なのですね....色々大変だと思いますがこれからも頑張ってください」



「まだ若いからね!?」



「そ、そ、そんなことよりも昨日の模擬戦は何か収穫があった?」



「ありました。そうですね....簡単にまとめるなら"戦闘は難しいもの"というのがよく実感できました。下手に実戦経験があるので余計にそう思います」



「私は愛星さんみたいに、実戦を経験したことはないから同じような心境には至れないけど、そうね....たぶん難しいものだと思うわ」



「まあ、経験なんてないほうが絶対に幸せです。あ、それよりもここの食堂のご飯はかなり美味しいですよね。学校のと甲乙つけがたいです」



「確かに!カレーとかの定番はもちろん、それ以外もハイレベルな味だったわね!」



「先生は何か気に入ったものはありましたか」



「先生はそうねぇ....決めるのが悩ましいけれど、うどんかしら」



「うどんですか?糖質制限をしていなければが食べたかったですが....ちなみ悩んでいたもう片方は何ですか?」



「定食なのだけど、季節の魚定食。今はアジとアユが出ててね、これがもう脂が乗っていて美味しいのよ!気になったら食べてみて!」



「魚は骨を取るのが下手なので、あまり食べていませんでしたが…先生が美味しいとおっしゃるなら夕食に食べてみようと思います」



「まあねぇ、骨については面倒だけど食べ慣れるしかないわよね〜。じゃあ先生は用事があるからまた後で」



「はい。すみません、引き留めてしまって」



「気にしないで。訓練頑張って!」



アジとアユかあ....想像したら、さっき食事をしたばかりなのにお腹に隙間ができた気がする。

高校に入るまではこんなに食いしん坊な人間ではなかったけど.....美味しい食事を出してしまう学食や食堂が悪いのだ!



「愛星さんって渡先生と仲がいいのね?」



不思議そうな目でそう言う田町さん。



「そうですか?田町さんも、先生が射撃場に来ているときはたまに話してますよね」



「んー、それとはちょっと違うというか…別に悪いことじゃないんだけどね。珍しいというか、なんというか」



うーん、教師と生徒の仲が良いことは珍しいのかなあ?

言われてみると、小学校や中学校ではそういう子を見なかったかも。

綾乃高校に来てからも見ていない…かな?



あ、各班で集合するように2組の先生が呼びかけをしている。

皆に急いで並ぶよう促して指定の場所にて準備をして待機。



「みなさん、訓練の準備はできましたか?今日は前日に模擬戦をした高校同士でチームを組んで、プロのかたに相手をしてもらいます」



プロの...?自衛隊とか、海外の軍の人のとかな?

いたいけな少年少女たちがトラウマ負ってしまわないか心配だ、特に明星さんとか識火さんとかが。



「今回、相手のかたはプロなので素人とは違い容赦は一切してくれません、全力であなたたちを殺しに来ます。なので恐怖を感じるかもしれませんが各々、これは本物の戦闘なのだと覚悟して模擬戦に臨んでください」



全力で殺しに来るって....その一言だけで嫌な予感しかしない。

そもそも、模擬戦を昨日初めてしたばかりの生徒にプロをぶつけるのはいかがなものかと。

明星さんが怖がっていないか様子を伺うと案の定、顔色が青くなっている。



「明星さん、あくまで仮想空間での訓練ですから本当に死ぬことはないですよ。ただ、触覚スーツを着てるので被弾するとちょっと痛いかもですが」



「死ななくても怖いよー!!それに痛いのはいーやーだぁ〜!」



「ま…まぁ、頑張りましょう。お互い生き残れるかは分かりませんが」



「ひいぃぃっ!わたしは今日ここで死ぬんだぁ!?助けてぇ!!」



「愛星さんって意外と....S?」



「たぶんSだね」



「えっ?どの辺がですか?」



「おふざけはそれくらいにして、開始準備を終わらせないと怒られるわよ」



田町さんの言葉を聞いて皆、急いで準備を整える。

ロールは前回と同じものを各人選んだ、後は開始されるまで待つだけ。

総戦闘参加人数は....昨日よりもさらに多い500人。

チームを組む華子宮高校180人、綾乃高校120人で足すと300人だから相手の数は200人。

100人の戦力差はいくらプロでも大きなハンデになるはず。



カウントが10秒を切ったから、そろそろ模擬戦が始まる。

5・4・3・2・1・0———開始だ。

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