11-4

17時30分になったらまた皆で食堂へ行き、夕ご飯を選ぶ。

お昼はトンカツとサラダを頼んだし、夜は違うものを選ぼう。



うーん、糖質の多いものは選べないから悩むところ。

この魚介スープと鶏胸肉のからあげが美味しそうだ、これに決定。

カウンターで注文を済ませたらコール機器を受け取って、先に席を確保してくれていた明星さんのところへ行く。



「席、ありがとうございます」



「お礼を言われるほどのことはしてないよ〜。気にしない気にしない」



「まぁ、それでもお礼を伝えることは悪いことではないので」



しかし、お礼を言われるのはなんだかくすぐったいから程々にしてほしいと言われてしまったため、それ以上は何も言わなかった。

少しするとコール機器が音を出して震えたのでトレーを受け取りに行く。

皆の品が手元にそろったら、食事の開始。



手を合わせて、感謝の言葉を告げる。

———いただきます。



まずはスープ、具材はイカ・貝類・小えびとキャベツなどの野菜。

ふと思ったのだが魚介スープを飲むのはかなり久しぶりな気がする。

記憶があいまいだけど中学校2年生のときに外食で口にして以来かも?

家ではスープといえば基本は野菜スープだった、魚介類が高いから気軽に作れないって言ってたなぁ。



スープをすくったスプーンを、揺らさないようにそっと口へと運ぶ。

ふむふむ、しっかり魚介の風味が表れていて美味しい。

中でも特にえびの味が他より目立っているのが人によって好き嫌いが出そう、自分は大丈夫だけども。

魚介スープがどういうものなのか、すっかり忘れていたからこれは嬉しい体験だ。



お次は鶏胸肉のからあげ、胸肉だから硬いかなと思っていたけど予想に反して柔らかい身でジューシーだった。

ほんのりスパイスが効いており、食欲をさらにそそる。



自分の頼んだ料理には満足したので今度は皆の料理を見てみよう。

右横にいる田町さんはカルボナーラ、その隣にいる初瀬部さんは親子丼、向かいの明星さんはグラタン、識火さんはさばの味噌煮定食。

視線と手が止まっているのが皆にバレて、一口食べる?と言われので表向きは遠慮しつつも、しっかりいただいた。



カルボナーラは定番という感じの味、親子丼は出汁の甘さがほどよく鶏もも肉はぷにぷに。

グラタンもクリームソースがなめらかなのに脂っぽくなくて好きだ。

さばの味噌煮のほうは、味噌があまり好きではない自分でも問題なく食べられるものだった。



こちらの魚介スープとからあげも各人に味わってもらって、夕食の時間も終わり。



ご飯の後は部屋に戻り、使うベッドの割り振りをしてそれぞれ本を読んだり、スマホでゲームや動画を楽しむなどのんびりタイムに突入。

自分もなにかしようと思ったが、パッと思いつかなかったのでベッドに転がって天井を眺める。



他人と同じ部屋で寝泊まりすると合宿前に聞かされたときはどうなることかと思ったけど、大丈夫そうでよかった。

まだ緊張しているが、たぶん問題はなさそう。

はぁ....人つき合いは難しいなぁ、未だにクラスに友達とかはいないし。

友達については、元々作る気がなかったんだけどね!



今何時かスマホの画面をつけると、ホームに19時18分と表示されている。

ちょっと外のグラウンドに出て宇宙でも見てこようかな。



皆がくつろいでいる空間を後にして1人グラウンドに向かい、置かれているベンチに座って上を見上げる。



とても静かで、落ち着く。

スマホを出して自然を意識した音楽を流す。

心地よい感じ、星は....周囲が暗めだから学校よりは見えるほうかも。

夜空に浮かぶ月は半月より少し欠けていて、2〜4日の内に三日月になるかな?



雰囲気もあいまってか、すごく気持ちいい。

うーむ、音楽をかけながらの天体観賞は学校に帰ったらぜひとも取り入れよう。



30分ほどのロマンチックを堪能したら、部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。

4人はまだ夜の時間を楽しんでいるみたい。

少し早いかもしれないが、今日は疲れたから一足先に休ませてもらおう。



毛布を首元まで被って、目を閉じる。



少しすると、ふっと意識が灰色の世界へと旅立った。

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