11-1
2036年 7月16日 水曜日 06時18分
朝を知らせる、小鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。
眠気がまだあるものの、起きねばならない。
なぜならば今日から5日間にわたる、合同演習があるからだ。
もぞもぞベッドから這い出て、身支度を始める。
グラウンドへの集合時間は09時00分、それまでに朝食と荷物の再確認をすませないと。
身支度が終わりしだい、時計を見て学食へと足を運んだ。
さて、本日の朝ごはんは...っと。
このチキンサラダと野菜スープに糖質70%カットのプリンにしようか。
カウンターの人から品をもらったら窓際の席に向かい、いただきます。
うん、もはや語ることはないくらいには知った味だ。
チキンは柔らかいし、サラダのドレッシングは和風おろしでいい感じ、温かい野菜スープは朝のすきっ腹に優しく沁み入る。
低糖質プリンは2週間くらい前にメニューに登場したが食べるのは今回が初。
スプーンですくって舌の上へ運ぶ。
エリストールなどの人工甘味料を使っているわりには独特のにおいや、味は全くといっていいほどしない。
そこに後をひかない、すっきりとした甘さ。
食感も普通のプリンでは味わえないであろう、絶妙な硬さと柔らかさになっている。
一般的なプリンは糖質が20gほどだが、これは3.3gと非常に少ない量に抑えられているにもかかわらず、普通のプリンをはるかに上回る味と食感なのは凄いことだ。
糖質が少なくて美味しいだなんて、なんともまぁ素晴らしい食べものか。
うぅ...この美味しい食事を5日間も食べられなくなるなんて拷問だぁ....。
愛しの学食よ、しばしの間のお別れ。
はぁ、本日もごちそうさまでした。
ごはんを食べた後は自室に戻って、電子しおりを見ながら持っていく荷物の再確認を始める。
トラベル・歯磨きセット、訓練で使用する体操服にパジャマと腕章、お財布・スマホ・タブレット.....その他もろもろ。
それとガンロッカーに入っているM4とP365を忘れずにガンケースへ入れて...と。
よしよし、ちゃんと用意できている。
後は出発の時間までのんびりと待機かな。
制服の状態ではあるが、そんなことは気にせずベッドへダイブしてごろごろ。
ふぅ、このベッドとも離ればなれかぁ。
ふかふかしていて気に入っているが、演習先のはいかほどなのか。
できれば良い物であってほしい、質の良い睡眠には品質の高い寝具が必要だからね!
ついでに食堂のレベルも高いとなお嬉しい!
時間をつぶし、集合時間10分前になったので荷物を背負って校庭へ出て行くと、そこには迎えにきたバス群がずらりと並んでいた。
自分は3組だから、前から3番目の3号車の元へと向かう。
乗り口の前には渡先生が立っており、乗り込む生徒へ点呼を取っている。
バスに乗る前に、持ってきた荷物を収納口に立つバスガイドさんに手渡す。
それなりの重さのはずなのに、ヒョイヒョイと手際よく収納口にしまっていく姿は中々格好いい。
小学校と中学校の修学力のときにも思ったけど、バスガイドさんって見た目にそぐわない力持ちさんが多いみたいだ。
自分が収納役をやると、5つくらい収納した時点でバテててそう。
それから点呼の列に並んで数分、自分の番がきた。
「はい、次」
「渡先生、おはようございます。1-3 出席番号1番 愛星愛璃です」
「おはよう愛星さん。席は右列、1番前の窓側ね」
「右列の1番目ですね、わかりました」
席の場所を教えてもらったらバスの中に入って指定の席につき、発車までおとなしく待つ。
窓から見える隣の2号車に目を向けると、田町さんの姿を発見。
熱い視線を送りすぎたせいか、あちらもこちらの存在に気づいて手をふってきたので、自分も小さく手をふり返す。
ちょっと———こそばゆい気持ち。
彼女とは2ヶ月前に射撃部の門を叩いてきて以降、一応コミュニケーションを交わしている。
週に1〜3回、ふらっと部に訪れて銃を撃って楽しんでいるご様子。
たまに会話をして、夕食に誘い・誘ってもらったりと深すぎず浅すぎずの関係でいい感じ。
ちなみに射撃部は毎日参加する必要はないと私が定めたので、フリーダムな部となっている。
ガチガチの真面目な部よりは、ある程度個人の裁量で取り組める形のほうが気楽でいいだろうし。
田町さんに関してはこんなところかな?これからも良き部活動仲間として、存在してほしい。
……しかし、手を振ってくれる田町さん可愛いなあ。
そんなこんなで、お向かいの方へ思いを馳せているとバスの出立時間となった。
運転手とバスガイドさんの挨拶が終わったら学校の校庭を出て門をくぐり、長い坂を下へ下へと下りて行く。
そして大通りに到達したら、いざ合同演習地へ出発進行。
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